私はお前らの兄貴ではないので兄貴と呼ぶのはいいかげんやめろと心の底から叫びたい(いやけっこう頻繁に叫んでるんだが)
今回で最終回です。どうぞよろしくお願い致します。
「皆さん、本日は志良以唯人シリーズ最新作の試写会のお集まり下さり、誠にありがとうございます……」
私はうっとりと新作映画試写会挨拶の為、舞台の前に並ぶ出演者一同を見上げていた。
いや、正確に言うと志良以唯人役の俳優一択のガン見だがな。
この俳優はメディアへの露出が非常に少なく、生でなくても映画やドラマ以外でのお姿を拝見できる機会はそうはない。
ハッ。
ということはもうこの俳優は=志良以唯人ってことでいいじゃないかもう。
はあ、そんなことに気づかないなんて、私もまだまだ、ふう。
それにしても志良以唯人、年々年を経るごとに年を重ねたダンディさがとっても素敵……。
いやホント、やっぱり生は違うわ生は。
映画の試写会チケット手に入れた篠倉には珍しく感謝感謝だわ。
しかも四人分。
関係者経由で手に入れたって言ったけど、どんなルートなんだろう。
篠倉いい所の坊ちゃまだし、敢えて知ろうとも思わないからよくわからないけど。
メンタルは激弱だが、頭はいいし、金まわりはいいし、お役立ちルート持ってるし、誉が将来の駒にゲットしたい気持ちもわかるか、うん。
でもそれ私込みって本気でやめて、はあ。
並び順は池上、篠倉、私、小原ので横並び。
小原は私と同じ志良以唯人フリークなので放っておいても目を輝かせて見ているが、池上と篠倉はそこまでではない。
下手すると池上は爆睡し出すし、篠倉は私の横顔をじーと見つめだす。
どちらにしても腹だたしいのとキモイので、イライラしてくるので今回課題を出した。
試写会終了後私の出す質問に答えられなかったら、外でも中でも「兄貴」呼び禁止。
そのおかげか二人ともものすごい集中力で前を向いて見てる。
兄貴呼び禁止でこれだけなら、絶交をタテにしたらどんだけって思う?
以前実際にやったことあるが、もう二度としないと誓ったわ。
ウザすぎて本気でぶち殺そうかと思ったくらい。
あ、今思い出しても腹が立つ。
無事試写会は終了し、その後の余韻に浸り、感想交換をする為近くのカフェへと移動した。
三人から試写会限定グッズをもらった私はご機嫌でパンフレットを見返している。
ちょっとくらいの視線はそれでチャラにしてあげよう。
まじこいつらといると熱の籠った女子の視線と妬みの混じった男子の視線が煩わしくてしょうがない。
あ、言っておくけど志良以唯人フリークの小原からも限定グッズもらったのは無理やりじゃないから。
小原は見る派、であって集める派、ではないというだけ。
いるじゃない?
アニメは見るだけでグッズにはまったく興味ないとか、アイドルもコンサートは好きだけどグッズはいいやっての。
まあ、それと同じよね。
私は志良以唯人関連はオールゲット希望なマがつく人種だけどさ。
それと、池上・篠倉二人揃って質問はクリア。
まあ、簡単過ぎたかな。
「……さすが兄貴、ホント容赦ねえ……。マジ駄目かと思ったっすよ」
「……学校の定期試験より遙かに難問だった……。よかった、答えられて……」
池上が汗を拭い、篠倉がなんか涙ぐんでるけど、大げさだな本当にこいつらは。
「良かったあ、合格で。兄貴独り占めも魅力的だけど、三人のが兄貴のお役に立てるもんねっ」
小原もにこにこ顔で喜んでいる。
因みに小原にも質問は投げかけてみたが、余裕でクリアしやがりました。
二人へのものよりずっと難問だしたつもりだったがな。
「……なんであんたらそんなに兄貴呼びにこだわんの」
ついついそんな疑問が口から飛び出す。
三人はきょとんとした顔をした。
くそっ、そんな顔もイケメンだなおい。
中身は残念三人太郎のくせしてよ。
ついついイラッとくる私に、三人は微笑んだ。
池上はにかっと。
篠倉はふっと。
小原はにこっと。
「「「そんなの、兄貴が兄貴だからに決まってるじゃないじゃないですか」」」
私はお前らの兄貴ではないので兄貴と呼ぶのはいいかげんやめろと心の底から叫びたい。
が、それがいいかげん無駄であることも身に染みてわかってもいる。
だが言わせてくれ。
つーか。
言わずにはいられんわ!
「私はお前らの兄貴でもなければ男でもないってのいいかげんに理解しろよこの残念イケメン三人衆!」
最後まで兄登場ならず。これもまたアリかと。
途中間があいてしまいましたが、どうもありがとうございました。




