6,準備
酒場で騒ぐだけ騒いだ後、俺達は長旅で不足した薬草等の物資を揃える為に道具屋に行く事にした。
「いらっしゃい。おや、見ない顔ですね。もしや、冒険者ですか?」
店に入ると、初老の男が俺達に声をかけてきた。どうやら、この男がこの店の主人のようだ。
「そうです。薬草が切れたので補充に」
微笑み返し、返答するナーダは主人と交渉をするが、思った以上に安かったので、いつもの値切りも無く、そのまま世間話を始めた。
その間、俺は店内を眺めた。道具屋のわりには武器、特に剣が多いのが気になったからだ。主人の収集物かもしれないが、どれも無銘の物で余計気になった。
「『何故、道具屋に剣が?』でしょう」
主人は俺に微笑みかけて言った。主人の視線に気付かないほど俺はその剣に見入っていたようだ。
「実は私の息子も冒険者だったのですよ」
そういうと、主人は近くに飾られていたこの地域では珍しい細身の長剣を手に取り、抜いた。
両刃の細い刀身には細かいの細工がされていて、光の当て方によって様々な模様を見せた。
「……きれい…」
冒険者の中で、剣に最も無縁である魔導士の素直な感想に主人は嬉しそうに微笑んだ。笑顔がよく似合う主人は剣を鞘に納め、元の場所に戻した。
「実は、ここにある武器は全て、息子の物なのですよ」
「すごーい。こんなにたくさんの剣を使ってたの?」
「いいえ、殆どは使う前にここに置いていかれました。手入れだけは私が代わりにやっているので、まだ現役ですけどね……」
そこまで話すと主人は苦笑した。どうやら、触れてはならないものに触れてしまったようだ。
「冒険者は常に危険が付き纏います。どうか貴方達も気をつけて」
「…あぁ、忠告アリガトな」
主人の顔を見ていれなくなった俺達は店を出る事に。
「あ、待って下さい!!」
扉を閉める前に主人に呼び止められた。
「…何か?」
すると、主人は先程俺達に抜いて見せた細身の剣を俺に渡してきた。
「良かったら使って下さい」
「何で俺なんかに?」
主人はただ笑い、何も言わなかった。




