世界の果て
洞窟で話した夜から二日。
目の前に聳える灰色の雪山を三人で見上げていた。
「ここ登る? 登っちゃう? 流石に死ぬかもー」
「登れるわけねーだろ! ふざけんなッ」
いつもの遣り取りに、生温い笑いを零しながら周りを見る。
登れそうな道はない。だけど、視界の端に崩れかけの壁みたいな物が見えた。
「二人とも、あそこまで行ってみませんか?」
壁の方を指さして二人を見ると、二人は言い合いをやめて、それぞれ頷いてきた。
エルドを先頭に崩れかけの壁までくると、その壁の奥に暗い道がぽっかりと開いていた。
「坑道……かなぁ? 昔はここにも人がいたのかも!?」
サラサがいつものように飛び込んで行こうとして、エルドに止められ、エルドから中に入ることになった。
サラサと隣同士で坑道に入る。
中は暗く、エルドの炎だけが頼りだった。
時おり小さな腐怪をエルドが浄化しながら、長いこと歩いた。
出口があるのか分からないままそれでも歩いて、前から吹き込んでくる風で、出口に着いたと分かった。
エルドが外に出て、ぴたりと足をとめた。
「どうしたんですか?」
彼の肩口から外を見たとき、左目が白く灼けて──。
どこまでも、どこまでも広がる、空と繋がっているような、青く透明な水の地が見えた!
息を呑んで瞬きをした瞬間、その光景は消えていた。
目の前にある光景は、果てしなく広がる暗く濁った、泥水の世界だった。
一瞬。ほんの一瞬だった。それでも僕の目には──。
「ここが、海だ」
腐敗してても、海は海だった。
[完]




