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物凄い爽快感で目の前が真っ白になった。
自分の血液が沸騰しそうなほどどくどく流れているのを感じる。全身から汗が噴き出してるのに鳥肌が収まらない。身体全体が緊急事態を訴えている。
「解放ってこういうことなんだ」
手が冷たく強張り震えて銃をうまく手放すことができない。大きさの割には重たい銃身が手の中にあるのをただ感じていた。
あんなに大きな音がしたのに誰もくる気配がない。人々がひしめき合って暮らすこの町では薄い壁一枚隔てた向こう側の事に関わろうとするのは馬鹿だけだ。今日一日自分が生き延びれたらいい。被害に遭うのが自分じゃなければいい。助け合いなんてのは童話の中で生きる余裕のある人たちだけの幻想だ。隣人が死んだらそいつの家のものを自分のものにできるいい機会だ。だから皆隣の家の息遣いまで聞こえる壁の向こうで嵐が去るのを息をひそめて待っている。
この町では人の命は軽い。女の命はもっと軽い。
酔って喧嘩になったから。
自分より女にもてるから。
店の親父が睨んできたから。
幼児のころから目をつけていた新人の娼婦を自分より先に抱いたから。
金目のものを身に着けていた女が目の前にいたから。
店の女が自分の誘いを断ったから。
そんな理由で人が死んでいく。
弱みを見せたらたちまち貪られる。ここは死肉をあさるハイエナの町。
私が撃った男は娼婦たちには有名な男だった。気が弱く男たちには殴られへらへらしていると馬鹿にされ仲間に入れてもらえず、その鬱憤を女で晴らすくそ野郎だ。殴る蹴るの後に事に及ぼうとしても役に立たない自分のモノを棚に上げて女のせいだと返金を要求。遊び方が下手すぎて娼館は出入禁止になり、客として要注意で有名なので、こんな場末の街娼にしか相手にされない。
物言わぬ男の死体は血で染まり汚かった。とりあえず金目のものをあさるが、今夜の代金に少し足りない金しかなかった。
またごねて踏み倒そうってつもりだったのかとあきれる。
「死体どうしようかな」
彼女の長い夜が始まった。




