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夢幻酷法  作者: SOR
第三の反乱

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第三十三話:本心と敵

前回のあらすじっ!

竜の明るさ全開青春真っ盛りの妖怪オーラ、略して妖キャオーラに圧倒された私!

格の違いを見せられてちょい凹み。

でも友達の部活の試合を見に行くという学生っぽいミッションは無事達成できた。


そう友達。竜はただの友達で……


いろいろ考えてたらいつのまにかミロックハウスに着いていた。

ミロックハウスとは現実世界とミロック界をつなぐ家のことで、ホテルのようにそれぞれ個人部屋が割り振られている家だ。

台所などもあるのでみんなでよく休んだりしている場所だ。


「みんな!おつかれカツカレー!」

「何その絶妙に古いギャグ」


出会い頭に零ちゃんが鋭いツッコミを入れる。

ここまで来るともう条件反射でやってるよね、彼女。


「てか竜、今日練習試合あるとか言ってなかったっけ」

「終わったから寄ってみた」

「別に来なくてもよかったけど」

「零ちゃんは今日もツンツンだねえ!」


さっきフラれた人とは思えない元気さだ。

いや、もしかしたら私の考えが浅はかなのかもしれない。

竜は気まずい雰囲気にしたくなくてわざと明るく振る舞ってるんじゃ…


「あれ、むつきもいるじゃない」


後ろに隠れているところを零ちゃんに見つかる。


「また難しい顔してどうしたの」

「なんでもございません。私は何も考えておりません」

「それ考えてる時のセリフね」

「あ〜まあいいか。せっかく零ちゃんもいるし」


竜は腰に手を当て、威張るように言った。


「俺、むつきにフラれました!一応報告!!」

「……はい???」


この人は雰囲気を良くしたいのか悪くしたいのかどっちなんだ??

分からない、師走竜という人物がひたすら分からない……


「零ちゃんには少しだけ話聞いてもらってたんだよ。だから言っといた方が良いと思ってさ。他のみんなには内緒ね?」

「…そう」

「零ちゃんもありがとうな!」


竜に言われて少し視線を外す。残念そうな、嬉しそうな、でも少し頬を赤らめているような。

あれ、もしかして零ちゃんって……


「零ちゃんいる!?一旦ミロックに戻ってほしくて…」


バタバタと走ってきたのは利愛だった。私たちの顔を見て驚いた表情を見せる。


「むつきたちも来てたんだ、ちょうど良かったかも。二人も一緒に来て!」


何かあったの?なんて聞けるような雰囲気ではない。

私たちは利愛の言われるがままミロックへと向かった。

到着すると私たち以外は全員集まって何か話をしているところだった。


「見てくれ、これがミロック中でばら撒かれるらしいんだ」


りゅうさんが私に差し出してきたのは、1枚の写真だった。

そこには私とジュゼッペの姿がしっかり収められていた。

それはマリックに一人で来いと耳打ちされた時のだ…


「Be Quietもあれだけ動かしたんだ。かなりの大事だったし、ミロック国民もジュゼッペの顔くらいは認識してるだろう」

「だからこそ、王である私とと二人で映っているのは不可解だと」


クルミル様はなんとも言えない表情で頷いた。


「知らないところで王が何か画策してるんじゃないかって疑い始めている国民もいる。

このままだと混乱を招く可能性があるし、何か対処しないと」


私はもう一度写真を見る。

そもそも誰が撮ったんだろう?あの時カメラを持った人なんていなかったはず…

私の写真への視線に気付いた優が言った。


「おそらく隠しカメラがあったんだと思う。

Be Quietも合わせてかなりの人がいる状態で、ピンポイントで二人だけ入る画角を探すのは難しい」

「確かに優の言う通りだね。こんなあからさまな二人で会ってますなんて写真、普通は撮れない」

「そうなんです。ジュゼッペがカメラの位置を把握していて、そこにむつきを誘導したか…」

「マジで汚すぎるだろあいつ!!そこまで考えてたのか!?」

「いつもみなの近くにいるんだしおかしくはない。なんならみなに入れ知恵された可能性だってある」

「…どうする?むつき」


りゅうさんは私に尋ねた。こうなってはもうひとつしかない。


「私から国民に事情を話すのはどうですか?それで伝わるかどうかは分かりませんが…」

「事情って何の事情だよ。そうです会ってましたって言うのか?」


後ろで話を聞いていた優が口を挟む。

こいつはいつも嫌味ばっか言うんだから!うるさいやい!!

ふむ、とクルミル様は言う。


「ただまあ、何を言うにしろやってみる価値はあるかもね。

王の言葉は絶対だ。こういうのは早い方が良いし、さっそくセッティングするよ」

「ありがとうございます、お願いします!」


べっ!と私は優に舌を出す。大丈夫、きっと上手くやれる。


「それじゃその辺はクルミル様たちに任せて、とりあえず状況を整理しようか。俺らはさっきミロックに来たとこだし」

「ねっ!そうしよそうしよ!」

「お前、体調が優れないから今日はミロックには行かないとか言ってなかったか?なんで竜といるんだよ」

「え、そ、それは「逆になんでだと思う?」


竜は私の言葉に被せて言った。優はなぜか固まる。


「な、なんでって…」

「優のご想像通り、俺らちょっと進んじゃったんだよね♪」

「そうか、それなら確かに一緒にいても不自然ではないか」


なるほど、とぼやく。


「…ちょっと飲み物取ってくる」


そしてガンッッッッ!と扉に頭から激突する卯月優。

…なにやってんの??


「本当はサッカーの練習試合来てもらっただけなんだけど。俺が無理やり誘ってさ」

「そっか、サッカー、サッカーね…サッカー………」


優はブツブツ言いながら部屋を出ていった。本当に何やってんの??


「んでミロックの今の状況なんだけどさあ」

「切り替え早くない!!?」


自分の親友をいじめ倒してから話を元に戻しただと…!?


「結局、住民がどこに不満点を持っているかは理解しておいた方が良いよね」

「そうだね、私は四醋剣が問題だと思うの。住民からしたらこの前の異常気象の理由もまだうやむやのままだし」

「俺もそう思うな。四醋剣の存在を知らない訳だろ?原因がはっきりするだけでもかなり変わるはず」


どこから湧いてきた白空、利愛。…ただ言うことには一理ある。


「実際なにか動きはあったのかな、例えば住民が暴動を起こしたとか」

「そこまではないみたい。ただちょっと不穏な空気はあるんだよね…さっき零ちゃんと買い物に行ったんだけど、ジュゼッペについて話してる人がたくさんいたよ」

「そうね、あの男はなんだとか、なんでルチア様と一緒にいるんだとか言ってたわよね」

「やっぱり早めに動いた方が良いかもね」

「むつきどう?なんか良い案は浮かんだ?」


竜に言われて私は頭の中を整理する。

利愛と白空が言ってることが全てだ。だとしたら私がやるべきことは…


「四醋剣の話、みんなの前でしようと思う。

第二の反乱、異常気象の原因は四醋剣のせいで今はもう消滅的な?そんな感じ?的な?だから大丈夫だって」


めっちゃ大事なところなのに今一瞬ギャルいた?

語彙力がないのを誤魔化すギャルいた??


「消滅ねえ、なかなか表現が難しいけど……」

「完全に消えた訳ではないもんな。出所だって分かってないし、そもそもそれを辿るためにジュゼッペに接近した訳だし。な〜んか堂々巡りだな…」


竜が頭を抱える。

私たちが分からないようなことを憶測で話すのは良くない気もする。

ただはっきりしていないからと言って全てを話さないのは違う。


「むつきの方向性は間違ってないと思うよ。今はまだ疑惑の段階だし、話せるべきことは話しておいた方が良いと思う。僕ならそうするし。

とりあえず1時間後くらいには始められるように動くね」

「さすがクルミル様、仕事が早い!」


白空におだてられてクルミル様は少し嬉しそうにする。

それなら私も準備しないと…


「住民の前に立つのってお披露目以来だっけ?私、メイクしてあげるわよ」

「零ちゃんほんと?それじゃお願いしようかな」

「ええ。といってもむつきの方が知識はあるだろうし、指示してもらえると助かるわ」


こういう時に近くに女の子がいるととても助かる。


「じゃあ私もむつきについてく!ステッキとか持ってみる?可愛いよ!」

「確かにありかも、魔法少女的なアレだよね?唱える呪文考えとこう…」

「いやどう考えてもなしだろ、早く準備してこいよ」


いつのまにか戻ってきた優がまた文句を言う。


「はいはい。後で見惚れてもしらないからね??」


私の本気、見せてやる!!






「へえ〜、ここ王響台(おうきょうだい)って言うんですね」

「そうだよ。僕の時からもう名前がついてた。住民に向けて何か発信する時に便利なんだよね」

「学校でいう体育館みたいな感じですね!校長が前に立って話すやつ」

「それに近いかな」


あいつがミロック王としてスピーチをしてからいろんなことがあった。

時には命を投げ打つような真似をして心配もかけられた。


元はと言えば、圭太の薬を持っているから何かあっても大丈夫な可能性が高いと事前に申告してくれていればあんなに不安になることもなかったし、いや別に不安になったかと言われると微妙というか、あんなちんちくりんに情を持つこと自体本当におかしいことだと思うが。


でも俺は思っていることを言葉にするのがどうも苦手で、気付いたらこう、先に手が出てしまってまるであいつのことが好きですけど何か?みたいな行動をしている時がある。

みたいなというか、好きって言ったか??俺直接あいつに好きって言ってね??はあ???


「…優は相当王響台に因縁があるようだね」

「大丈夫です、必ずやり遂げます」

「今からやり遂げるのはお前じゃなくてむつきじゃね〜?」


とにかく、そういうことだ。俺もよく分からん。


「今回からむつきが王響台に立つ時は、ミロック王補佐である君たちも横にいてもらうよ。

風神雷神みたいな立ち位置で、王の後ろに立ってもらう」

「んじゃ俺風神でも良い?四季剣の大雪もそんな感じだし」

「…お好きにどうぞ」

「よっしゃあ!」

「むつきも正装するし普段着だと浮いてしまう。だからこちらで衣装は選んでおいたよ」

「おっマジっすか!?クルミル様のセンスが問われるんですね!どうしよう優、俺かっこよくなっちまうよ」

「お前はいつも楽しそうで良いな」

「分かってるじゃん、俺はいつでもかっこいいよ!お前もいつもよりイケメンだな優!」


…竜の様子が変だ。


「もしかして緊張してるのか??」

「………」


しばし無言が続く。俺の勘違いかもしれない。

こいつはなんだかんだ肝は座ってる方だと思って…


「そうだよ!だってなんかめっちゃ人いるじゃん!?

学校の比じゃないって、無理だって!噛んじゃったらどうしよう!?」


全然座ってなかった、肝。

そういやお化け屋敷も時もバカほど逃げてたっけ。


「逆にお前は大丈夫なのかよ、住民のみんながこっちを見るんだぜ??」

「見てるのはむつきの方だけどね」


クルミル様がマジレスをする。緊張するかどうか?そんなの愚問だ。


「スルワケガナイダロ、オバケダッテコワクナインダカラ」

「君たちって本当に愉快だよねえ、見てて飽きないよ」


フフフとクルミル様は言う。笑っている場合ではない。

むつきが来るまで俺は基本裏方に回っていた。

クルミル様や兄貴の動きを見て、どんなことをやっているか学ぶだけ。そんな日々だった。

正直ミロックに対して思い入れは全くなかったんだ。

…あの子に出会うまでは。


はあ〜〜とデカいため息を吐きながら兄貴が背後から出てきた。


「お前らがしっかりしないでどうするんだ。そんなんじゃミロック王補佐なんかやれないぞ〜?

曲がりなりにも王の側近なんだからシャンとしないと」

「俺は曲がってねえよ兄貴、どう見てもまっすぐだろ」

「うーん、今のはギリセーフか…?」

「お前の思考回路はずっと中学生止まりなんか???」

「まあまあ、りゅうの言う通り君たちは最強のボディガードなんだから王のことを守ってあげて…おっ、ウワサをすれば」


クルミル様が振り向く。その視線の先にいたのは…





「お、お待たせしました〜…」


慣れない衣装を引っ提げながら私はおずおずと前へ出た。

胸元にある大きな紫のリボン、鎖のようなチェーンのついたフリルのスカート、歩く度にひらひら動くひし形のマント。

そして、大きなマゼンタ色のバラがついた編み込みのヘッドドレス。


「良いねむつき、似合ってるじゃん。前着てたよりも王感増したね」

「いろいろありましたからねえ、ありがとうございます!メイクは零ちゃんにやってもらったんです」

「素材が良いからすごく楽だったわ。肌ぴちぴちじゃない。ねえ、綺麗になったと思うでしょうアンタたち」


零ちゃんはぼったちしている補佐どもに問う。ここまで無言って失礼では??


「え、あ、そうだな」

「反応うっっっす、他になんかないの?」

「今喋ったことによって中和された、何もねえわ」

「はあ!!?」

「てかむつきってピチピチなの?」

「そうらしい、零ちゃんにすごい褒められた」

「へえ〜触っても良い?」


竜が私の頬に触れようとして、ものすごい勢いで優にはたき落とされる。

目をぱちくりさせて驚いている竜を横目に言った。


「ちゃんと話すことは考えてあるんだろうな」

「もちろんだよ、任せて。そろそろ時間ですかね?」

「そうだね、準備しようか」


せっかく綺麗にしてもらったんだし行ける行ける!





 

「……行ける??」

「おい、ギリギリで弱気になるな。こっちまで不安になるだろうが」


正装するとより私は王なんだって感じてプレッシャーがやばい。

ちゃんと住民の前で正確な情報を伝えるだけ…それだけだから……

俯いていると竜が私の手を握って言った。


「大丈夫、俺は何があってもむつきの味方だから」

「竜……」

「優も言ってるぜ!」

「勝手に決めるな」

「言ってないの?」

「…言ってる」

「だよな!ということだから頑張れむつき、俺たちは後ろで見守ってるからさ」


トンッと竜は私の背中を押す。

抱えてたものが軽くなっていくのを感じる。

前回のお披露目とは訳が違う。確実にに住民を、ミロックを巻き込む形になるのだ。

私の言葉ひとつで国の流れが変わる。その重みを理解しなければならない。


「ありがとう二人とも、行ってくるね!」


そうして私は王響台へと立った。



ざわつく住民たち。この感覚、久しぶりだな。

あれから数ヶ月ミロックにいるけど私のアウェー感は何も変わっていない。

それでも腐っても王なんだ。私がこの国の顔にならなければいけない。


「あれルチア様?なんか話するのかな」

「例の写真の話じゃない?ほら男の人と映ってたやつ」

「BeQuietが出動してたやつだよね。あんなに集まって取り締まりしてるの初めて見た。あの男の人、相当悪いことしてたのかなあ」

「そんな奴とルチア様が一緒にいたのやばくない?」


話し声が聞こえてくる。私はゆっくり息を吐き出した。

後ろで優と竜が見守ってくれている。大丈夫、やれる。

私は前を向いた。


「みなさんこんにちは、ルチアです。

今日はお話したいことがありここに立っています。以前起こった異常気象、その原因についてです」


しんと辺りが静まり返る。


「全ての諸悪の根源は四醋剣です」


はっきり、ここにいる全員に聞こえるように、私は言った。

四醋剣って何?という声がちらほらあがる。


「四醋剣がどういうものなのか、正直まだ私たちは掴めていません。今解明するために動いています。

みなさんも知っているかもしれませんが、四醋剣について聞くためにとある男性にも接触しました」


ここで少しジュゼッペの話をする。


「もしかするとまた同じような異常気象が起こるのではないか、そう不安に思ってる方もいるかもしれません。

ただ確実に少しずつですが、原因解明に近付いてはいます。

もう一度言います。四醋剣は悪です。

ミロックの平和を守るためにも、必ず根絶させると約束します」


私は頭を下げた。

曖昧なことは言わずに断言し、事実だけを伝える。

そして共通の敵、倒すべき悪を作る。

よく言われている理論だ。目的が一致することにより、集団の結束力は上がる。

実際、私の作戦は大成功だった。


「すごい、根絶させるって断言したぞ」

「それだけ本気ってことなんだろうな、本気度が伝わってくる」

「頑張れルチア様!応援してる!」

「話してくれてありがとう〜!」


私は微笑むと王響台を後にする。

…これで良かった、良かったんだ。

四醋剣がサラ国からミロックに流れてきたせいで第二の反乱が起きた。

だから四醋剣が悪い、これが紛れもない事実。

心の中に残ったのは、やりきったという安堵と少しの不安。


「…むつき?」


表情に表れていたのか、優が不安そうに覗き込んでくる。


「大丈夫だよ、なんでもない!みんなのとこ戻ろ」

「そうか、無理はするなよ」


大丈夫、私は上手くやった。間違えてなんかない。

絶対に四醋剣について、真相を突き止めてみせる。





「みな、みな!!大丈夫か!?」

「はあ…はあ……ごめんなさい、少し立ちくらみがして…」

「人も多いもんな。急にむつきが住民の前で話をするっていうから来てみたものの…

みな、俺の肩に掴まって。どこかで休もう」

「ありがとう。ねえジュゼッペ?」

「ん、どうした?」

「やっと思い出したよ、私がやるべきことを」

「み、みな…?」


私は強く、強く拳を握りしめた。

爪が手のひらに食い込み、血が滲んでくる。


「ごめんね、ジュゼッペ。もう少し付き合ってくれる?」


彼は優しく笑いながら言った。


「もちろん最期まで一緒にいるよ。命に変えても、ね」

「ありがとう」

「……俺は君のその目が好きで付いて行こうと決めたんだよ。

悲しみと憎しみが混じった、復讐に満ち溢れる目。俺達の居場所を守ろう、みな」

「ええ、もう手段は選ばないわ」


如月むつき、私はあなたを、許さない。



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