ただいま おかえり
「お姉様」
重苦しい雰囲気の中、千春が口を開いた。
「今後のことを、考えましょう」
「…今後って」
「捕まえに行くんですよ。碧流も烈も、ちゃんと相互理解をした上で、こっちに連れ戻しましょう」
「…遥希さんも?」
「…いや、あいつは…」
言葉を濁すと、梓の瞳から涙があふれ出す。千春は慌てたようにその涙を拭った。
「はるきさんは? はるきさんもいないとやだ…」
「あああああそうですよね!? あいつもメンバーですもんね!?」
泣きじゃくる梓を千春が宥めていると、ガチャリと玄関の方から音がした。二人の動きが固まる。
誰かが玄関にいる。ぴたりと涙が止まった梓は息を呑んだ。
「あ~やっと着いた。ただいまあ~、…あれ? どうしたのそんな目を丸くして?」
唖然とする梓に、千春が気まずそうに目を逸らす。
「…は、は、は、はるきさん…?」
「えっ姉貴が名前で呼んでくれた…!」
感動したように声を上げる遥希。梓は目をまんまるにしたまま黙り込んだ。
黙り込んだ梓の前に、遥希がしゃがみこむ。
なんで、どうして。無事だったのか、どうやってあの場面から。言いたいことも聞きたいこともあった。でも、言葉としては出てこない。
そんな梓を見て、遥希は微笑む。
「ただいま、姉貴」
「…おかえり、無気力さん」
頬を伝った涙を、遥希が拭う。
「…遥希にいいところ全部持っていかれましたね…」
千春が拗ねたように言うと、遥希は苦笑いした。
「で? 烈は戻ってないの?」
「はい。碧流とは先ほど会いました。…烈を優先して探した方がいいでしょう」
「碧流はとれじゃーずに落ちたってこと?」
濁した部分をはっきりとさせた遥希に、千春は顔を歪ませた。泣いている梓の前で、これ以上泣かせるようなことを言わないでほしい。
「…烈を探そう」
梓が言い切った。その瞳は、未だ涙に濡れているが、強い意志が宿っている。
「全員、取り戻す」




