恐怖と苦悩
彼の言葉は冷たいが、尤もだった。
いくら姉妹と言っても、私は暦が向こう側に行ってしまった理由はわからない。どうすればよかったのか、どうすればいいのか。まだ正解は見つからない。
「そうだよ。とりあえず、碧流が何かを人質に連れて行かれたのか、それとも自分でついて行ったのか…から、調べないと」
「お。結成して初めて秘密結社っぽいことやる!」
どこかうきうきした様子の無気力さんを無視して、千春と一緒にパソコンを覗き込む。
「えーと、この辺だと…、うん、歩いて行けるね」
「烈が出ています。連絡して様子を見てきてもらうのはどうでしょうか。あれなら万が一戦闘になっても、私たちが到着するまでの時間稼ぎができます」
「じゃあ、烈に電話して無気力さん」
「りょ~かいお姉様!」
携帯を操作し始めた彼を確認した後、千春を呼び寄せる。
「…かしこまりました」
千春は頷いて部屋を出る。
私はカーディガンを羽織って、外に出る準備をした。
★ ☆ ★
「…期待されてんのは嬉しいけど」
遥希からの連絡の後、俺は指示された場所へ向かうため方向転換する。
曰く、碧流はとれじゃーずの基地にいるらしい。そして、俺は今、その基地に向かっている。姉御には劣るが、俺も一応前戦側の能力を持っている為、万が一交戦になった場合を想定しての選出らしい。あと単純に俺が外に出てたからというのもあると思う。
「…俺でどうにかなんのかな…」
碧流を連れて行ったらしい慧音の能力は、廃校襲撃の時に見た。圧倒的な『力』。発火装置も道具も要らない、体一つで俺たちをあの廃校から追いやれる力。
あれは、俺が相手取れるレベルじゃない。
遥希や碧流なら、倒せはしなくても、もしかしたらどうにかなるかもしれない。千春はあれでいて、防御と攪乱は得意だ。あいつですら、場を持たせることくらいできるかもしれない。
でも、防御も攻撃も中途半端な俺には無理だ。人形一体にすら手こずった。倒せなかった。守れなかった。
犬歯が唇に突き刺さるが、痛みは感じなかった。
「…俺が、行ったところで」
動いていた足が止まる。早く行かないと、姉御たちに伝えないと。
足は竦んで動かない。
「そんなところで立ち止まってどうした、Lancelot」
背後から、最悪の声がした。




