家族会議
「お姉様…」
千春の充血した目が、また潤み始めた。烈と碧流も私の方を見て、安堵の表情を浮かべる。
「遥希は?」
「顔洗ってから来るよ」
ちらりと千春が扉の向こうを見る。そして唇を噛んだ。
「…私は、行きますからね。遥希が行かなくても、遥希に止められても、…行きたいです…」
「うん。わかってるよ。千春が楽しみにしててくれたのはよくわかる。…でもね、遥希さんの話も聞いてあげてほしいの。どうして行くなって言ったのか、その理由があるから。今度はちゃんと話してくれるから」
その時、彼がリビングに入ってきた。
私は千春の前に座る。そして、まっすぐ桃色の瞳を見つめた。
「ちゃんと話し合おう。私たちは〝家族〟なんだよ。言いたいことは言わなきゃダメ。それでたとえ、相手を傷つけてしまっても。そのあと支えればいいんだよ」
言いたいことは言わなきゃダメ。
それは、過去の私に向けたものでもあった。
お父さんとお母さんが出張に行ったとき、海外に行くことが決まったとき。私は笑顔で見送った。「寂しい」という言葉を押し殺して、張り付けた笑顔で、二人の背中を見ていた。
仕事だから、忙しいから、わがままを言ったら困らせるから。
でも、本音を殺していいことなんかなかった。
ちゃんと話すべきだった。自分の気持ちも、考えてることも。
無気力さんが私の隣に座る。
目の前には千春、その隣に烈、逆隣りに碧流。私の隣には遥希さん。
「大丈夫。ちゃんと話し合おう。家族らしく、ね」
両親に向けたものではない、心からの微笑みを向けて。




