家族になりたい
けど、同時に思った。
「…私たちは、家族なんだよね」
「…うん」
「家族のことを知らされないのは、…つらいよ」
私は、お父さんとお母さんが今、どこの国にいるか知らない。
暦が、どうしてとれじゃーずに行ったのかも知らない。
それはとても辛くて、悲しいこと。
「だから、話そう。ちゃんと、共有するんだよ。一人で抱え込んじゃダメ」
無気力さんが顔を歪める。オレンジ色の瞳も、水面のように揺れていた。
「…わかってたんだ。千春も烈も、隠し事が嫌だって。内緒にされるのが嫌いだって、俺は、知ってたのに…知ってたのに俺は、二人に本当のこと言わないで…」
「うん、うん。わかってるよ。全部一人で抱え込もうとしたんだよね」
少し背伸びをして、ふわふわと揺れる前髪を撫でつける。
「間違いじゃないよ。でも、正解でもないね。…ねえ遥希さん。難しいね、家族って」
家族になりたいのに、その気持ちだけじゃ、うまくいかない。
俯いて肩を震わせる彼の頭を撫で続けるうちに、だんだんだんだん頭が下がって来ている事に気づいた。いつの間にか、肩も震えていない。
「…」
手を離すと、しゃくりあげているように肩が上下する。
「…無気力さぁぁぁぁぁん…?」
「えっ、いつからバレてた?」
ケロッとした表情で顔を上げる無気力さん。拳を握りしめて、一発入れようかと思った。
「…」
「姉貴?」
オレンジ色の瞳を囲むように、薄く赤がさしていた。
それを見た瞬間、さっと怒りが引いていく。単純すぎる自分の感情に額を押さえた。
「…はーーーーー…」
「何その長い溜息!?」
慌てる彼の額をパシンと叩く。そしてリビングのドアノブに手をかけて、顔だけを無気力さんの方へ向ける。
「二階で顔洗ってから来た方がいいよ」
「…うん」
タンタンタンと階段を上る音を聞きながら、千春と烈と碧流の待つリビングに入った。




