幼馴染
「千春と烈を…、守る?」
無気力さんは頷く。
「どういうこと? 何から守るの?」
「…最悪な思い出から。文化祭に行ったら、二人は思い出したくないことを嫌でも思い出す。それでまた、二人が傷つくなら…俺は」
ギュッと自分の服を握る彼の手に触れる。
「…話を、聞いてもいい?」
☆ ★ ☆
俺と千春と烈は、いわゆる幼馴染だった。
家も近所で、もちろん小学校・中学校と一緒。俺は二人より一個上だったから、先に高校に上がった。二人は俺と同じ高校に受験した。結果、俺たちは小・中・高と一緒だった。
毎日のようにつるんでいた。三人とも帰宅部で、学校が終わったら誰かの家に行って、くだらない話をして帰る。それが俺たちの、なんてことない日常だった。
ある日、その日常が崩された。
いつものように校門で待ち合わせをしていた。でも、二人が来ない。同じ学年の子は次々に帰っていくのに。ホームルームが長引いているのかと、俺は待っていた。
「…わり、遅くなった」
先に来たのは烈だった。何かを堪えるように唇を結んでいた。
「大丈夫~。千春は?」
「…は? あいつ来てねえの?」
烈の表情に、焦りが浮かんだ。
「…まさか」
そう言うと、烈は校舎に向かって走り出した。俺の静止の声も聞かずに。
「ちょ、烈!」
その時だけだった。俺が、烈に追いつけなかったのは。小学校も中学校も高校も、かけっこで烈に負けたことなんかなかったのに。いつもは遅いのに、その時だけは凄く早くて。
少しして、俺は烈を見失った。
「ああもう…何なんだ…」
二人がどこにいるのか、正直見当もつかなかった。だから、俺は烈を見失った階の教室を順番に一つずつ見て回った。
もう、みんな帰るか部活に行くかしている時間。当然、廊下は静まり返っていた。
「烈~? 千春~?」
呼びながら歩いて、はたと気づく。
一番奥に、明かりのついたままの教室を見つけた。




