必要な
「…どういう、こと?」
「そのまんまだよ。梓は今幸せ? あの秘密結社にいて、あの子たちと家族のように暮らして、梓は、幸せ?」
優しい目はそのままに、尊は問いかけてくる。
私は今、幸せだろうか。
今までの事がフラッシュバックする。短いようで長かった、お姉様になってから。
答えはすぐに出た。
「…うん。幸せだよ」
確かに最初は無理矢理連れていかれるし、歓迎されないし、出て行った妹は敵対組織にいるし…この短い期間で、一気に非日常に連れていかれた。
それでも、一人でいた時より充実していた。
あの寂しいものを“日常”と呼ぶなら、私はLancelotと過ごす“非日常”の方がいい。
私の答えに、尊は満足したように微笑む。
「ならいいんだ。セストは、梓の幸せを俺から守ってくれた。代償に命を落としただけ」
柔らかく微笑む尊は、昔のまま。
「セストは…もう一度作るよ。同じにはならないかもしれない。でも、六人いないと落ち着かないんだ」
学校が近付いて来た。隣の尊を見上げると、目が合った。
「梓にとっての家族が彼らなら、俺にとっての家族はあの子たち六人なんだ」
胸が痛む。尊の家族を壊したという事実は、当然だけど変わらなくて。
それに気付いたのか、尊は私の背中を叩いた。結構な強さで。
「いった…」
「梓、壊した責任感じちゃダメだよ? セストは俺と、梓の幸せを守ってくれたんだから。むしろうちの子に感謝してね!」
感謝しろ、なんて言う尊に笑ってしまった。
もし、尊とLancelotのみんなが仲良くなれたら楽しいんだろうなと考え、少しだけ憂鬱な心が晴れた。
「じゃあ、放課後家まで迎えに行くから準備しておいてね。彼も」
「うん」
不意に、私を追いかけて来た彼の事を思い出す。
どうして追いかけて来たんだろう。
あの、泣きそうな顔は、なんだったんだろう…?
✳︎ ✳︎ ✳︎
「エゼル様…これは何?」
「ああ、飛行機のチケットだよ。丁度いい、暦。それを渡してきてくれるかい?」
「…誰に、ですか」
「佐伯尊に。彼はこの兄妹喧嘩に必要な駒じゃない」




