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秘密結社のお姉様!?  作者: 折上莢
かかし編
29/71

家族、でしょう…?

「…お姉様、やっぱり顔色が悪いですよ。どうかなさいましたか?」


心配そうな声音の千春に、背を向けたまま答える。


「ううん、違うの…」

「お姉様。私今寂しくなりました」


予想外の言葉に驚いて振り返ると、むすっとした顔の千春。

手が伸びてきて、私の頬を摘まんだ。


「お姉様、違くありません。他者が辛そうだと言ってるんです。話してください。…家族、でしょう…?」


語尾が萎んでいく。

私は、もしかしたら無意識のうちに、家族に話すということを忘れていたんだろうか。


「…っ、あの、ね…っ」


堪え切れなくなった嗚咽が、言葉とともに溢れる。

暦が家を出てから、私は何があっても一人で抱えてきた。そうするしかなかったから。

学校で嫌なことがあっても、楽しいことがあっても。話せる家族が家にいなかったから。

でも、今は。

千春がいる、烈がいる、碧流がいる、遥希さんがいる。

私の、Lancelot(家族)が。


「そう、だったんですか…」

「うん…」


話し終わった頃、リビングのドアが開いた。


「オラ、キリキリ歩けや!」

「え〜眠いよ」

「遥希」


千春の声が、地を這っている。

びっくりして涙が止まった。


「えっ、何…」

「遥希、ちょっと面貸しなさい」


笑っている。いや、微笑んではいるんだけど、声が怒ってる。前に聞いた、ドスの効いた声。

そのまま無気力さんの首根っこを掴んで、リビングから出て行った。

取り残された私と烈。

烈は唖然と閉まったドアを見ていた。


「あ…姉御? あいつ、どうした、ってお前もどうした!? なんで泣いてる!?」

「いや…千春怖くて涙引っ込んだ…」

「今はな!?」


ごしごしと烈が頬に残った涙の跡を消してくれる。


「こんな顔で学校行ったら、絶対なんか言われんだろ…」

「ああ…今日学校か…」

「今日平日だわ」


何言ってんだよと笑う。

そうね、あなたたちは平日も休日だものね…。


「朝飯、昨日の夕飯の残りでいいか? あっためる」

「うん、ありがとう」


洗面所で顔を洗い、髪を梳かす。

烈が温めてくれたおかずとホカホカのご飯を食べて、食器を流しに出した。

千春と無気力さんは戻ってこない。


「…いつまで話してるんだ、あの二人」

「廊下出たくない…」


でも着替えてこなきゃ、時間がなくなる。

仕方なしに、椅子から立ち上がった時、ドアが開いた。

両頬を真っ赤に腫らした無気力さんと、澄まし顔の千春が戻ってくる。


「あ…おはよう、姉貴」

「お、おはよう…」


ぎこちなく挨拶を交わす。そして無言。

言わなきゃいけないことがある。早く言わなきゃ、どんどん言いづらくなる。

でも、言葉が出て来ない。


「…姉御、そろそろ着替えて来ないと遅刻するぞ」

「あ、うん!」


烈の言葉で我に返り、リビングを出る。

…謝らなきゃ。わかってる。

でも、何故だかいつもみたいに、彼と話せない。


☆ ☆ ☆


「…で」


姉御とぎこちなく挨拶を交わした遥希を前に座らせる。


「まず、その頬どうした」

「…千春に引き千切られそうになった」


目を逸らし、頬を摩る遥希。痛そうだ。どんだけ抓られていたんだ。


「…姉御に、何言ったんだ?」


遥希は黙り込んだ。

沈黙。答えない。

助けを求めるように千春を見た。


「答えないんです。だから無理矢理言わせようと頬抓ってたんですけどねえ…」


頑なに口を割らない遥希に、千春が諦めたようだ。


「でも、悪いと思ってる自覚はあるんでしょう? 謝るが吉だと思いますが」

「…わかってるよ、そんな事」


いつもより声のトーンが低い。

そりゃそうか。姉御を怒らせたんだ。

唯一無二、他には絶対にいない、俺たちのリーダー。これで、姉御がお姉様やめるなんて言い出したら俺たちはまた、戻ってしまう。

もう戻りたくない。それは遥希だって同じはずだ。前のリーダーが逃げてから、俺たちは裏切られたショックで腐っていた。


「…でも、今の見ただろ? 姉貴、俺と目合わせてくれなかった…」

「おい大丈夫かよ年長者」


いつもの飄々振りはどうした。夢の中にでも置いてきたか?


「…遥希、あなたはお姉様のことをどう思っていますか?」


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