地下 甘味を求めて穴掘り
しばらくの間遅れて申し訳こざいませんでした。他のサイトで二次創作物ばかり書いていたらこんなに遅れてしまいました…
「しかしどうなっているんだ?この状態は…?」
オルフェウスはプリンを見て悩んでいた。プリンは見ての通り固体だが、かき混ぜれば液体もどきになる。どうしてもその秘密がわからなかった。
「このオルフェウス、プリンを絶対に作りあげてみせる!」
オルフェウスは一気にプリンを口の中にかきこみ、飲み込んだ。やけ食いである。
「台所の様子から火を使うことはわかっているが、プリンはマグマの類か? いや感覚的にはスライムか? いや違うな」
プリンを掻き込んで思考するが一向に解決策…もといプリンの作成方法がわからない。オルフェウスは勇気から卵と牛乳を使ったものだと聞いたがその前にプリンが何故あのような柔らかさになるのか不思議で卵と牛乳を使わずにしてその柔らかさが生まれるのか調べることにした。
「なら禁呪法の応用しかねえか」
こんな時は一通り試してみるのが良い。そう決断し、実行する。オルフェウスはそのようにして仕事をこなしていた。結果仕事の量が増え、魔王の仕事が嫌になったのだが今回に限りその行動は正しい。ただし言っていることが物騒でありやっている方向性も間違っているが。
オルフェウスは9階に行き、魔王城からかっぱらった宝物から適当に杖を取り出して魔力を込めた。
「かぁっ!」
オルフェウスが杖をつく。しかし何も起こらない。
「杖の癖に仕事をしないとは生意気な奴だ」
オルフェウスは再び魔力を込め、床に目掛けて杖をダーツのように投げた。
「やれやれ……」
杖は当然のように床にめり込み、今度はそこに魔力を込めた指を立てて床に突いた。
「手ごたえありだな」
オルフェウスはそう言って指を床から放すと大きな地震が起きた。
「今だ!」
すかさずオルフェウスはその場から少し離れ、呪文を唱え始めた。その理由はここから出てくるあるものがプリンの材料になり得るものだと確信していたからだ。その出てくるものに生命を与えることによってプリンが作れるかもしれない…オルフェウスはそう信じていた。
「この地から出てくる精霊ども、俺の配下となれ!」
そしてオルフェウスが詠唱を唱えると穴から出てきたのは水…否お湯だった。
「は?」
さっぱり訳が分からなくなったオルフェウスは唖然としてしまい、脱力する。
……そう、オルフェウスが掘り当てたものは温泉だった。
本来、オルフェウスはマグマを刺激してマグマからプリンを作ろうとしていた。最悪プリンが作れなかったとしてもマグマは罠にも使える。
しかし出てきたのは使い道のないお湯であり、この勢いでは水攻めすらも使えない。
「…ダメだ。次だ次!」
それからオルフェウスは別の階にいき、同じように行動したが出てくるのは罠にも使えないものお湯ばかりであり、肝心のマグマは出てこない。
途中、お湯ではなくまた別のものを掘り当てりしたがそれは黒い油でオルフェウスの求めるマグマではない。一応火をつける際には使えるが一回使うとそれ切りなので何度でも活用出来るマグマに比べるとそれほど使えない。
しかしオルフェウスはこの時知らなかった。自分がどんだけど偉いことをやっているのか。そして冒険者達が地下迷宮に入る目的がその油になることを。
その油の名前は原油。ガソリンなどの原料をオルフェウスは掘り当ててしまった。
プリンを作ろうとしたら原油を掘り当てた。そしてその原油のおかげでオルフェウスが照り焼きバーガーやプリンなどを食べられるようになったのは皮肉なことである。
閑話休題。
兎にも角にも、オルフェウスは温泉や原油を掘り当てたのだが肝心のマグマは掘り当てることは出来ず、イラついた調子で休憩していた。
「ったく。調子が悪いな。向こうの世界じゃこんなことはなかったはずだがな」
オルフェウスは寝そべりながらそう呟いた。
オルフェウスは元の世界であればいつでも地面からマグマを呼び出す(以下マグマ堀り)ことが出来たのだがこの地下迷宮では全くダメだった。その理由は元の世界にはマグマ以外に液体状の掘り当てるものがなかったのと、オルフェウスが迷宮主になったことにある。
オルフェウスが迷宮主になったことによって地下迷宮の資産になるものを掘り当てる確率が上がったのだ。そのことによって迷宮主であるオルフェウスは温泉や原油を9対1の割合で掘り当てるようになってしまった。
「寝るか。明日やれば良いしな」
魔王城にいた頃並に激務を果たしたオルフェウスは精神的な疲れが溜まり寝てしまった。オルフェウスの弱点は肉体的には最強であるが長期戦になると精神的に疲れてしまう。故に眠りにつくのは無理なかった。
数時間後、オルフェウスは誰かに揺すられ目が覚めた。
「(…なんだ? ユウか?)」
オルフェウスが目を開けるとそこにいたのは二人の黒髪の少女達だった。
「おはようございます。主人。」
一人は優と同じく黄色の肌に日本人特有の幼さが見られるような顔つき、そして浴衣を着ていた。
もう一人は一人目よりも雰囲気が大人びいており、褐色の肌と巨乳、腰まである髪の毛、そして何よりも一人目と違うのは迷彩服を着ていたという点だ。
「主人…? 誰だお前らは?」
その二人が何故オルフェウスを起こしたのか理由がわからず寝ぼけながらもオルフェウスは戸惑っていた。
「主人が禁呪法で作った精霊ですよ。」
「精霊? 何の精霊だ。黄色の肌の方から言ってみろ」
「私は主人が掘り当てた癒しの泉の精霊です」
温泉の精霊、略して温精霊が頭を下げるともう一人の精霊も自己紹介をし始めた。
「同じく主人に掘り当てられた黒い油の精霊であります」
もう一人の精霊、原油の精霊は軍人らしく敬礼し、頭を下げる。
「水と油の精霊か…確かに正反対だな」
オルフェウスは二人の胸を比べ、そういった。片や貧乳大和撫子、片や巨乳軍人…確かに正反対だった。
「どこを見て仰っているのでしょうか?主人?」
「いいやどこも?」
温精霊の追及にオルフェウスは惚けた。
「それよりも何でお前らは実体化しているんだ? 普通精霊なら実体化せずにそれを維持し続ける存在だろ?」
オルフェウスの言う通り精霊は幽霊と同じような存在で、違うのは自然現象を引き起こすのが精霊、それ以外は幽霊とされている。魔法も精霊が干渉していると言われるのは自然に干渉する為に魔力を喰らう為である。
「主人と地下迷宮内の魔力によって実体化出来たと思われます。私達がその場に存在するには魔力が必要不可欠ですが魔力の質と量が適正以上であれば実体化します」
「もちろんそれだけではございません。主人と地下迷宮から送られてくる魔力の質が余りにも良かったことと地下迷宮内に私共の源である癒しの泉や黒い油が多くあった為に私共はこうして知識を得たのであります」
「……なるほどな。つまりそれを埋めてしまえばどうなる?」
意地悪な笑みでそう尋ねると二人が頭を下げた。
「「やめてください! 死んでしまいます!!」」
涙目になって二人が揃ってオルフェウスに懇願した。
「じゃあそれぞれ一箇所ずつに集めることは出来るか?」
「それくらいなら。でもどこに集めますか?」
「少し待ってろ。準備する」
そしてオルフェウスはその場から離れ、別の階へと移動した。
「まあここら辺だな」
オルフェウスが移動したのは小さいサイズの落とし穴が数多く存在する階でそこに温泉や原油を入れるといった発想に辿りついた。
「地形の変化!」
オルフェウスは地形の変化を唱え、更にその場所を改良した。幾ら温泉や原油を入れるのに丁度いいとはいえ所詮は落とし穴。まだまだ改良の余地はあり、落とし穴と落とし穴が結合して巨大な穴が二つ程出来上がる。
そしてオルフェウスは精霊達の本体つまり温泉と原油をそこに移すとプリンの形にも似ていなくもないと気づいた。他の階にも穴を掘りそこにスライムと牛乳、卵を入れて試行錯誤繰り返したが結局プリンは出来上がらずオルフェウスはションボリとしてしまった。