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地下 運営に向けて

オルフェウスは再び地下迷宮に入り、悩んでいた。

「あの照り焼きバーガーの材料は何なんだ?」

そう、照り焼きバーガーの作り方だ。オルフェウスは照り焼きバーガーにハマってしまい、材料を一から作ろうと考えていた。というのもオルフェウスは日本の通貨を持っていない上、自ら作った方が感動するのだ。

「(まずあのやや薄い緑の(レタス)は植物と見て間違いはない。ハンバーガーに見られたパンは小麦粉を用いたものだろうからこれも出来る。照り焼きバーガーの(ハンバーグ)の味は家畜用の牛にだいぶ近いが見た目からして加工していると言っていいだろうな。どうやって加工するかはまた材料を作ってからにするか。)」

オルフェウスはそこまで頭の中で整理するがどうしても謎が残った。

「(だが野菜につけていた黄色のソース(マヨネーズ)と赤みがかかった茶色のタレ(照り焼きソース)……これが未だに材料がわからねえ。この二つがない限りは照り焼きバーガーは出来ねえだろうな。せいぜい出来てあのハンバーガーとやらになるだけだ。)」

そう、オルフェウスの最大の悩みは二つのソースだった。ハンバーグやパンなどは作り方はともかく材料はわかるが、これに至っては作り方はおろか材料もわからない。当然といえば当然だ。オルフェウスの冒険者時代の時に食べた食事は口に流しこめるように味がさっぱりとしたものが多くソースは一応あったが不人気だったのだ。なのでソースを扱う店は極々一部だったし、オルフェウスも数回くらいしかソースを口にしたことがない。

「(となればまずはパン、野菜、肉から作るしかねえか。)」

オルフェウスはそう考えると地下迷宮の10階層に移動すると魔物苔を見つめ、魔法を唱えた。

魔物進化クリーチャーエヴォルーション!」


魔物進化とはその名の通り魔物を進化させる作用がある魔法だ。使用した術者のイメージが強いほどより近くなるが強さは変わらないが魔力を込めれば込めるほどより優れた魔物になったり過程をすっ飛ばして最終形態の魔物になる場合もある。ただしいくらイメージや魔力が強くともその魔物と進化させたい魔物がかけ離れていたり、進化が何度も行われている場合は進化出来ないようになっている。

例えばイノシシの魔物から蜘蛛の魔物に進化させたいといったことは出来ない。

だが例外がある。それは魔物苔だ。魔物苔は全ての魔物の祖先と言われるだけあってどんな進化でも対応出来るようになっており、魔力を少し込めるだけで一段階以上進化出来るようになっている。

オルフェウスが戦闘用の魔法でもないのに何故覚えているのかというと迷宮主になってからいきなり覚えたのだ。オルフェウスはそのことに不思議に思ったが称号が迷宮主になった時に覚える魔法だと判断していた。


それはともかく、オルフェウスは魔物苔から半人半牛の魔物…所謂ミノタウルスに進化させた。というのも地下迷宮内の魔物は死んだら普通に遺体は残るが地下迷宮の肥料として消化されるのでより強い魔物が生まれないように冒険者達が肉を持っていくのがベストだ。骨などはあまり食料として役に立たないから余程強い魔物でない限りはもって行かない。それはともかくオルフェウスの考えでは冒険者達がミノタウルスを倒し地下迷宮内のハンバーガー店(設立予定)に寄り、照り焼きバーガーの肉の部分であるハンバーグを作らせようと企んでいた。

「ちっとばかし魔力込めすぎたか?」

だからといってこれは予想外だった。全長14mを超えるミノタウルスがどっしりと威厳を保ちながら立ち尽くしていた。込めた魔力があまりにも多く三種族の中でも最強と呼ばれる龍種ですらも凌ぐどころか無双出来るくらいの強さを持っていた。下手したら準魔王級の魔物かもしれない。

「流石にこの階層でその強さはマズイな…転送!」

オルフェウスはそのミノタウルスを地下深くに転送した後、何度も魔力を弱めてミノタウルスに進化させたが初心者卒業とも言われる10階層の主にしては強すぎたので処分した。結局この日は失敗に終わった。


「肉が無理なら…せめて小麦粉と野菜くらいは作らなきゃいけねえな…地形の変化(アース・チェンジ)!」


そもそも地形の変化は土の硬度や湿度によって左右される。それをコントロールしたのがこの地形の変化(アース・チェンジ)だ。地形を変えることによって畑に適した柔らかい土が出来たり、戦いにおいては落とし穴までも作ることが出来る。故にこの魔法は誰もが使えるようになっているのだ。


「そんじゃこの畑に魔物苔をばら撒いてと……」

とにかく11階層の床部分をその地形の変化(アース・チェンジ)で柔らかい土に変えたオルフェウスはその土の上に魔物苔をばらまいて軽く埋めた。この行為は魔物苔が植物系の魔物に限定で進化させる変わりに魔力の吸収を促す効果があり10分で進化する。ミノタウルスの件のようにオルフェウスが直接進化させるととんでもなく強い魔物が生まれてしまうのでこの方法ならば必ず弱い状態から進化していくので上手く育てていけば小麦粉やあの野菜に酷似した性質の魔物に進化するだろうと考えていた。


「……これもダメか」

しかし、出てきたのはどれも大木のような魔物…地獄の杉(ヘル・シーダー)や蔓を絡めさせて竜みたいな形にしている魔物…草蔓竜ヴァイン・ドラゴンなどしかおらず照り焼きバーガーに必要な野菜の(レタス)ような葉をもつものは皆無だった。

「(とはいえこれはまだまだ改良の余地はあるからじっくり進化させてやればいいだろ。)」

オルフェウスは次の作業に取り掛かった。


「(…問題はサービスだな。アマタニの話だと日本は武器の持ち込みや製造は禁止されている。ここが日本である以上従わなきゃいけねえが…それだと一部の冒険者しか魔物を倒せねえ。)」

オルフェウスは最大の壁である武器の所有禁止について頭を抱えた。自分ならともかく日本人が武器無しにここまでたどり着けるか?と言われれば大多数が無理だと答えられる。その理由はオルフェウスの世界において非戦闘民の人間は自分と同じ体格以上の相手を倒せない。それはこの世界でも同じ…いやオルフェウスの世界の人間よりも日本人は小柄なものが多く力も出ない分弱いだろう。そんな日本人が武器もない状況で戦えば想像がつくだろう…確実に死ぬと考えていい。

「(となれば…蘇生サービスを充実させた方が良さそうだな。だが地下迷宮の蘇生サービスをどうやってやるかだな。)」

普通、冒険者の蘇生サービスは地下迷宮で死んだら入り口前に強制送還されて生き返るというものだ。だがこれ以上にいい案はない。…これまでのオルフェウスならば。今のオルフェウスは日本から色々なものを学んできたスーパーオルフェウスなのだ。

「(待てよ…セーブポイントに機能を追加すればいいか。)」

オルフェウスの世界では地下迷宮に潜る際、ロードの機能を使って地下迷宮の各階にあるセーブポイントにワープする機能があり、ほとんどの冒険者はそれを使って効率よく移動していた。もちろんセーブポイントは行けた階数までしか行けないのでそれよりも先の階数は行けないがその代わりに行けた階数ならば何処へでもいけることが出来るようになる。


もっともセーブポイントが使えない地下迷宮などもあるがそんなところは稀だ。そんなことをすれば地下迷宮の難易度が一気に高まり冒険者は寄り付かないし、冒険者の金も手に入れられない。なのでセーブポイントが使えない地下迷宮はよほど迷宮主がバカなのかその難易度を無視してでも欲しがるような金銀財宝が眠っているかのどちらかだ。


話を戻そう。蘇生サービスには欠点がある。その欠点は蘇生した日は地下迷宮に入れなくなるというものだ。これによってオルフェウスは冒険者が退屈しているのを見たことがあるし不満そうな顔をしていた。それを直す方法がオルフェウスの頭の中で思い浮かんだ。


「(一度死んだら今日の地下迷宮はここまで…というのではなく、特定の魔法道具マジックアイテムを持っていれば近くのセーブポイントから復活出来るようにするか。)」

そうコンティニューだ。コンティニューの概念はやり直しである。地下迷宮は一度出ると倒した魔物は例外を除いて復活する上に冒険者が仕掛けた罠なども解除されてしまい使った道具が無駄になることも多々ある。その欠点を直すのが…このコンティニューのシステムだ。このシステムを取り入れれば倒した魔物が復活することなく使った道具も無駄になることはなくなる可能性も高まる。

「そうとなればさっそく実行だな」

オルフェウスは設計専用の魔法石板にコンティニューのシステムを取り入れた。


「(…とりあえず今のところはこんなもんか。後は日本語を覚えて看板を自在に掲示できるようにするのとバランス調整だな。こればかりは時間をかけないと無理だし今は保留だ。)」


日本語を習得するのに時間がかかるのはご理解できるだろう。その理由は日本語は文法や熟語などがあまりにも多く、一人称だけでも人によって多数だ。それだけでなく平仮名、片仮名、漢字の三種の文字を使って表現する為世界一難しい言語とまで言われており習得するのに相当時間がかかる。幸いなのはオルフェウスは日本語の文法や熟語は理解しているので後は漢字を覚えればいいだけだがそれでも完全に習得するには半年くらいはかかるだろう。とはいえ完全に習得せずともコミュニケーションは取れるのでオルフェウスの頭ならば1ヶ月くらいで漢字を理解する。


しかし問題はバランス調整の方だ。地下迷宮には金銀財宝が眠っていると言われているがその地下迷宮によって様々だ。その質の良さは地下迷宮の難易度に比例する。低いほどレア度の低い道具や武器しか手に入れられないが高いほど道具や武器などのレア度が高くなる。


では何故、なにもなかった地下迷宮から金や武器、道具などが手に入るかと言うと地下迷宮にはそういった物を作る機能がある。最初に迷宮建築に込めた魔力に比例して自動で作られるか、あるいは迷宮主が好みに合わせて作られるかのどちらかだ。前者は迷宮主が何もしなくとも道具が作られるので最初の方は魔物の強さや難易度が低いのでレア度が高くなってしまう。その為ある程度後者の方で道具のレア度を調整してからスタートするのが一番良い。もっともあえてやらないで冒険者を呼び寄せると言うやり方もあるがそれで失敗するパターンが多いので普通はレア度は最初は低めに設定する。


「(少し低めだが日本には地下迷宮そのものがないしお試し期間でレア度を低くしよう。まあ…運営してから一週間経ったらレア度を上げるか。それまでは多分魔物も生まれねえしな。)」

しかしオルフェウスはレア度を最低にした。そのレベルは薬草や少し硬い棒切れ、石ころ…それに10円の価値しかない銅貨くらいしか出ないレベルで薬草以外は全て役に立たないものだ。もちろんその入手方法は宝箱である。

「(そうなると地下迷宮のオープンは2日後くらいか。アマタニにも手伝って貰おう。)」

オルフェウスはようやく地下迷宮の運営に向けて動きだした。

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