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半血魔王のクロニクル<年代記> ~魔界で一番外道な貴公子~  作者: 古弥須 凱
第一部 黒き貴公子と贖われぬ花嫁
2/46

プロローグ  「生贄の姫」

挿絵(By みてみん)



広大な儀式広場は、星のない闇に覆われていた。

 

赤い魔力の燭台がゆらゆらと無数に浮かび、人間界の寂れた古城を包む闇の中に、不吉な血のような光を降らせている。


魔界全土に生中継されているこの一大イベント……「サバトの花嫁狩り」。


司会者の甲高い声が響き渡る。


「眠れる美女・プリンセス・ルイーゼが、いよいよ祭壇に捧げられております!!

なんという白い肌! その美しさ! まさに清らかな乙女そのもの、真珠のような気品!

彼女が今夜、サバトの供物として捧げられるのです!!」


数千の悪魔が広場を埋め尽くし、興奮と欲望が赤黒い熱波となって渦巻く。


巨大スクリーンには祭壇に横たえられたリーザの姿が映し出され、歓声と口笛が爆発的に沸き起こった。


彼女の傍らには――魔界の帝王であるサタンの嫡子、アスモデール王子が立っていた。


冷たい笑みを浮かべ、祭壇に横たわるリーザをじっと見下ろした。


その顎を掴んで顔を上げさせる。


「う……」と、小さく姫君は呻いた。


気を失っているリーザの唇を、そっと親指でなぞり、ゆっくりと囁くように声を落とす。


「さぁ、はじめようか……美しい姫君。お前はただ、己が運命を受け入れればいい」


残酷な睦言を、気を失っているサバトの花嫁に投げかけたアスモデールは、もう一度、芝居掛かった動作で観衆の方に向き直った。


「見ろ、魔界の民よ。今こそ、この姫君を永遠に我が物としよう!!」


狂気とも呼べる悪魔(ディアボロ)たちの歓声が、どっと沸き起こり、この古城におうおうと雄たけびのように反響した。


美しい人間の姫君――リーザの白い体が、ただ冷たい祭壇に横たえられている。


彼女の恋人である、若き魔王・ルシエル卿は、まだこの古城へ現れない。


しかし悪魔の饗宴――

 

サバトは今まさに、清純な人間の姫君リーザ自身を捧げる儀式として、すでに始まっていた。

▼次話

1話 十二夜の再会

挿絵(By みてみん) 

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