002-3 そして始まる、誘拐生活
「はへ〜〜」
高級そうな料理の数々に感嘆の声を漏らす。
ゴールドの教育スタイルに不安を感じていると、悠のお腹が鳴ったことで夕食の時間となった。
よくよく考えると、自宅で確保されてから気がつくまで半日以上ーー窃盗騒動のあった喫茶店で軽く食べてからーーなにも食べていない。
そんななか用意された料理は、高級店で提供される料理にも引けを取らないもので、味は過去食べてきたモノよりも美味しかった。
「ーーーー美味しい」
もう、抑えきれずに声が漏れる。
「でしょ!シルバーの料理は美味しいでしょ!」
「え、これシルバーが作ったの?」
驚きに顔を向けると、シルバーは食べていた料理を口を押さえつつ飲み込み、
「お褒めいただきありがとうございます」
と、軽く頭を下げた。
「悠様がいらした最初の食事ですし、少々力を入れて作らさせていただきました」
少し本気を出せば、こんな料理も作れる!
ゴールドは、なんて有能な部下を雇ってるんだ!
「普段から、こんな感じに美味しいっすよ」
「なん……だと」
さすが、伊達にクラシカルなメイド服は着ていないということか!
3人からの賞賛に照れた顔をする、シルバー。
いや〜、本当に美味しいわぁ。
すきっ腹にシルバーの料理が染み渡っていく。せっかくの米国なのに観光はできそうにないが、この料理だけでも価値はあるかもしれない。
「ご馳走様でした!本当に美味しかった!」
「お粗末様でした」
大人げなく、料理にガッツイてしまった。
「ご馳走様、悠遊ぼう!」
追いかけるように食べ終わったゴールドが席を立ち、悠の席まで駆け寄ると手を引っ張るが、
「お嬢様、駄目ですよ」
「なんでよ!」
「お部屋のお片づけが終わってませんよね」
「うっ⁉︎」
彼女達のやり取りを本日見てきたが、雇用主と従業員という関係だけではない繋がりを感じる。
ここだけ見ると母親と子供みたいだが。
「でも〜、悠もいるし〜」
「でもーーじゃないです。お嬢様の部屋で悠様も寝るんですから片付けて下さい!」
「まぁまぁ、彼もいるっすから説教はまたで」
「そうは言っても、片付けてもらわないと」
シルバーは頬に手をあて「はぁ」と溜息を吐く。
「わかりました〜、かたづけます〜」
その姿にゴールドはチラリと悠を見ると、不承不承といった様子で、そう言った。
過去にも同じような事をしているのだろう、シルバーもカッパーも「やれやれ」といった様子で首を振る。
そんな2人に、プリプリしながらゴールドは部屋へ行こうとするが、
「いや、聞き流さないからね!」
それを断ち切るように悠は声をあげた。
「なんですか、悠様」
「なんすか、悠さん」
「なに?悠」
白々しいよ、君たち。
「いや、いや、いや、シルバーが、
『お嬢様の部屋で悠様も寝るんですから』
って、言ったの聞き逃してないよ!」
そんな問い詰めに、彼女達は肩をすくめる。
「言いましたか?」
「言ったっすか?」
「言ったかな?」
白々しいよ、君たち!
「なら、俺が寝る部屋は別にあるんだよね?」
「……………」
「……………」
「ゴールドの部屋じゃないんだよね?」
「……………」
「……………」
「おい、目を逸らすな〜」
カッパーは、もう笑ってしまってるやん。
抗議にゴールドとシルバーは「「チッ」」っと、舌打ちした。
2人の顔には面倒くさいから、さっさと受け入れろという表情を浮かべている。
というか、さっきまで説教する方、される方だったのに、本当に君達は仲良いね。
「コホン、悠様」
咳払いしたシルバーは、満面の笑みで告げた。
「抗議しようとも、この件は決定事項です」
「そうだ!そうだ!」
「ですので ーー 貴方には従っていただくほかありません」
「いや、でも、さすがに……」
「従っていただくほかありません」
笑顔が怖い。笑顔が怖い。
完璧な笑顔のまま、「言うこと聞けよ」というオーラを発するシルバーも怖いが、完璧に悪役顔で笑うゴールドも怖い。
「うふふ」
「あはは」
ハモるように笑うーー2人が怖い。
圧倒され体が動いたときに両手を繋ぐ手錠の鎖が鳴った瞬間、悠は思い出した。
自分が【誘拐】されたという立場であることを。
「まぁ、あきらめるっすよ!」
そんな自分に、カッパーは肩に手をそっと置くと慰めるように言った。




