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ロリユーカイ(prototype)  作者: 冬時宇井好
10/31

002-3 そして始まる、誘拐生活



「はへ〜〜」


高級そうな料理の数々に感嘆の声を漏らす。


ゴールドの教育スタイルに不安を感じていると、ハルのお腹が鳴ったことで夕食の時間となった。


よくよく考えると、自宅で確保されてから気がつくまで半日以上ーー窃盗騒動のあった喫茶店で軽く食べてからーーなにも食べていない。


そんななか用意された料理は、高級店で提供される料理にも引けを取らないもので、味は過去食べてきたモノよりも美味しかった。


「ーーーー美味しい」


もう、抑えきれずに声が漏れる。


「でしょ!シルバーの料理は美味しいでしょ!」


「え、これシルバーが作ったの?」


驚きに顔を向けると、シルバーは食べていた料理を口を押さえつつ飲み込み、


「お褒めいただきありがとうございます」


と、軽く頭を下げた。


ハル様がいらした最初の食事ですし、少々力を入れて作らさせていただきました」


少し本気を出せば、こんな料理も作れる!


ゴールドは、なんて有能な部下を雇ってるんだ!


「普段から、こんな感じに美味しいっすよ」


「なん……だと」


さすが、伊達にクラシカルなメイド服は着ていないということか!


3人からの賞賛に照れた顔をする、シルバー。


いや〜、本当に美味しいわぁ。


すきっ腹にシルバーの料理が染み渡っていく。せっかくの米国なのに観光はできそうにないが、この料理だけでも価値はあるかもしれない。


「ご馳走様でした!本当に美味しかった!」


「お粗末様でした」


大人げなく、料理にガッツイてしまった。


「ご馳走様、ハル遊ぼう!」


追いかけるように食べ終わったゴールドが席を立ち、悠の席まで駆け寄ると手を引っ張るが、


「お嬢様、駄目ですよ」


「なんでよ!」


「お部屋のお片づけが終わってませんよね」


「うっ⁉︎」


彼女達のやり取りを本日見てきたが、雇用主と従業員という関係だけではない繋がりを感じる。


ここだけ見ると母親と子供みたいだが。


「でも〜、ハルもいるし〜」


「でもーーじゃないです。お嬢様の部屋でハル様も寝るんですから片付けて下さい!」


「まぁまぁ、彼もいるっすから説教はまたで」


「そうは言っても、片付けてもらわないと」


シルバーは頬に手をあて「はぁ」と溜息を吐く。


「わかりました〜、かたづけます〜」


その姿にゴールドはチラリと悠を見ると、不承不承といった様子で、そう言った。


過去にも同じような事をしているのだろう、シルバーもカッパーも「やれやれ」といった様子で首を振る。


そんな2人に、プリプリしながらゴールドは部屋へ行こうとするが、


「いや、聞き流さないからね!」


それを断ち切るように悠は声をあげた。


「なんですか、悠様」

「なんすか、悠さん」

「なに?悠」


白々しいよ、君たち。


「いや、いや、いや、シルバーが、


『お嬢様の部屋でハル様も寝るんですから』


 って、言ったの聞き逃してないよ!」


そんな問い詰めに、彼女達は肩をすくめる。


「言いましたか?」

「言ったっすか?」

「言ったかな?」


白々しいよ、君たち!


「なら、俺が寝る部屋は別にあるんだよね?」


「……………」

「……………」


「ゴールドの部屋じゃないんだよね?」


「……………」

「……………」


「おい、目を逸らすな〜」


カッパーは、もう笑ってしまってるやん。


抗議にゴールドとシルバーは「「チッ」」っと、舌打ちした。


2人の顔には面倒くさいから、さっさと受け入れろという表情を浮かべている。


というか、さっきまで説教する方、される方だったのに、本当に君達は仲良いね。


「コホン、ハル様」


咳払いしたシルバーは、満面の笑みで告げた。


「抗議しようとも、この件は決定事項です」


「そうだ!そうだ!」


「ですので ーー 貴方には従っていただくほかありません」


「いや、でも、さすがに……」


「従っていただくほかありません」


笑顔が怖い。笑顔が怖い。


完璧な笑顔のまま、「言うこと聞けよ」というオーラを発するシルバーも怖いが、完璧に悪役顔で笑うゴールドも怖い。


「うふふ」

「あはは」


ハモるように笑うーー2人が怖い。


圧倒され体が動いたときに両手を繋ぐ手錠の鎖が鳴った瞬間、悠は思い出した。


自分が【誘拐】されたという立場であることを。


「まぁ、あきらめるっすよ!」


そんな自分に、カッパーは肩に手をそっと置くと慰めるように言った。




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