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満月の夜3  作者: 桐生初
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柊木は幸せそうだ。


太宰達を呼び、遺体を前に丁寧に説明する。


正確には、遺体の一部だ。

この被害者には、頭部も肘から下も、脚も無い。

つまり、胴体のみ。


「ガイシャは見て分かる通り、男性。

推定になるが、10代後半から20代前半。

筋肉質で、なかなか良い体だよな。

死亡推定時刻は今日の午後4時位。

いまから4時間前の、非常にフレッシュな仏さんだあ。」


「フレッシュとか言うんじゃない…。死因は…。」


太宰が眉間に皺を寄せながらいつもの様に言った。

未だに皺も殆ど無い、見た目はやたらと若い太宰だが、もし太宰に皺が出来るとしたら、先ず眉間で、その原因は柊木だと思われる。


「両手両脚の切断面、生体反応あり。

首の切断で即死。」


「つまり、両手、両脚を切断してから、トドメを刺したという事ですか。」


霞が聞くと、頷いた。


「うん。また変態だな。拷問はしてねえ。本当に切り刻んでるだけ。レイプも無し。

ただ、ガイシャの身体、漂白剤で拭き取ってる。

だから、指紋も体液関係も全く無え。

んでえ、切り口見てみな。」


全員でそれぞれの切り口を見つめる。


「すんげえ綺麗ですね…。若干潰れてるけど。」


夏目が言うと、また頷く。


「鉈か中華包丁で上から一気に、ダンッて叩き切ってる感じだな。なんの迷いも無く。」


甘粕が嫌そうな顔で呟く。


「初めてじゃねえな…。」


太宰も憂鬱そうな顔で言った。


「動物で実験してからってパターンかね…。芥川に動物の虐待被害当たって貰って。」


夏目が直ぐに芥川に連絡し、科捜研に行くと、幸田は矢張り夏目を見て固まった。

しかし、目を逸らして、太宰に向かって話し始める。

段々お約束の様になって来ているので、甘粕達は笑いを堪えるのに必死だが、夏目だけは面白そうに不敵に笑っているので、幸田は尚更居心地が悪くなってしまう。


「ーざっ、残念ながら、ビニール袋や周辺にも、ホシと思われる指紋やDNAの類いは無し。

ビニールの中、ガイシャの身体にも不自然な程、何も無し。」


「ガイシャの身体、漂白剤で拭き取ってたっつーからな…。」


「だな〜。強迫神経症的に神経質な感じするよな。で、ガイシャは、4重にした袋に入れられてたんだが、この袋。

最近は殆ど見かけねえけど、ネット通販なんかだと豊富に売ってるんで、今、メーカー調べてる所。

分かったら、原田に回しとくぜ。」


「頼む。」


「んで、足跡もな、無えのよ。良い所に現場荒らしが吐いてくれたのもあって、余計分かんねえ。

まあ、貴也君とやらが、保全しておいてくれたお陰で、24センチのパンプスの女以外、血痕も踏み付けて無え状態だった。

多分置いてからジワーッと血が漏れ出したんだと思うから、ホシの靴跡は付かずに済んだんだとは思うけど。」


「成る程。他には。」


「ガイシャのDNAもヒット無し。綺麗に舗装された道路だし、台車の跡も無え。悪いな。今回なんも無え。」


DNAがデータベースに無いという事は、被害者の前科や失踪届は無いという事になる。

無い無い尽くしで、貴也の目撃証言しか無いような状態だが、オフィスに戻って、事態を整理する。


・発見状況


芝浦3丁目。

ワインバルSakaiのゴミ捨て場。

黒のポリ袋を4重にした中に、脚部分を下にして、立てるようにして置かれていた。

血が滲み出ていた事で、北条貴也が発見。

置かれた時間は18時半と推定。


・被害者


男性。

肘から下、脚部分、頭部を切断された状態。

推定年齢、10代後半から20代前半。

レイプの痕跡無し。

身体的特徴は無し。

筋肉質で何らかで身体を鍛えていた模様。

全体を漂白剤で拭き取られた形跡あり。

腕、脚、頭部の順で切断。

腕と脚には生体反応あり。

首の切断で死亡。


・凶器


斧か中華包丁の様な鋭い刃の重い物。

一気に切り落としている。


・容疑者


身長185センチ以上。

痩せ型。

サングラスに黒マスク、深めの黒いキャップ。

黒の上下。

中音域より高い声(段ボールを拾ってやろうとした時に「すみません」という声を発した)。

顔が大きい。

カビ臭い衣服。

年齢不詳(但し、老人や中年までは行っていない雰囲気との事)。

音のしない台車を使用。

銘酒大和盛の段ボールを載せ、発見場所より3メートル離れた所で、北条貴也とすれ違う。

北条貴也が角を曲がった時には、田町駅に向かう方向に歩いて来ていた。

大和盛の段ボールをすれ違う時に落とす。

その際、段ボールの底から側面、台車の段ボールが載っていた部分が真っ黒に濡れていた。

段ボールを奪い取る様に拾う。

田町駅に足早に向かう。


・通報時刻


18時35分。

直前にパンプスを履いた女性が血痕を踏むが、気付かず立ち去る。

北条貴也が携帯電話で通報。


・その他目撃情報


ワインバルSakaiの店員が18時にゴミ捨てに行った際、遺体のポリ袋は無かった。

北条貴也の目撃後、男の姿は田町駅では確認されていない。

現在、周辺を引き続き聞き込み捜査中。


・遺留品


・業務用の黒ポリ袋




「顔を隠す目的なのか、自分に自信が無いからなのか、現段階では、ちょっと分からないですね。」


霞が言うと、甘粕も同意しつつ言った。


「でも、印象だけ言うと、ガイシャと黒づくめの男は正反対な感じがしますよね。185以上もあって、貴也君程度の肩幅しか無いなんて、かなり貧相な男です。」


「確かにな〜。なんか嫌な予感すんなあ…。」


黙っていた夏目が太宰を見た。


「目撃者の貴也君ですか。」


「そう…。顔ちっちゃいし、あの年にしちゃ相当剣道頑張ってるみたいで、体格もいい。背も伸びそうな上、イケメン…。

黒づくめの男がホシだとしたら、ほっとくかなあ…って、また俺のカンなだけなんだけど。」


太宰の心配を裏付ける様に霞も言った。


「いえ、分かります。YouTubeに一時とはいえ、アップされてしまったし、T大附属って、制服無いから、学校とかは分からないんでしょうけど…。」


「一応、念のため、貴也くん周辺の警備徹底させよう。強烈旦那にも注意喚起だな。」


夏目が所轄への指示の電話に走り、太宰が尊に電話しようとした時だった。


芥川が一課から転びそうになりながら駆け込んで来る。


「課長!。運河沿いに両手両脚が!。」


逃走する際に捨てて行ったのか。


太宰達は美味しそうなディナーを横目で見ながら、またオフィスを飛び出した。





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