リタリーニャ空港地上衝突事故①:プルデック派遣調査官による前段
○登場人物
・ヴァーツラフ=プルデック(ロムント王国 国家飛空安全機関。派遣調査官)
・レイル=バルタザーレ(カカナ連邦 飛空艇事故調査委員会。連邦捜査官)
・ミリィ=セレネイド(カカナ連邦 連邦飛空局 空獣害防除課。国家魔術師)
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リタリーニャ空港地上衝突事故
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○ヴァーツラフ=プルデック(ロムント王国 国家飛空安全機関 派遣調査官)の証言
ワイバーンは我がロムント王国を含むムヒュルム大陸に多く生息していますが、その大半は人間に飼育されています。
ムヒュルム大陸は四大陸で最も南にあり、最もワイバーンに関する伝統を有している地域です。
その中でも、ロムント王国はワイバーンレースの世界王者を何人も輩出しており、山がちな国土の物流を何世紀にもわたって支え続けた、飛空騎手"ワイバーンドライバー"の国でもあるのです。
……ただその分、飛空艇の導入が他国に後れを取ったことも否めません。
飛空騎手ギルドは導入に強く反発しましたし、空港の候補地を探そうにも好条件の土地はワイバーンの繁殖場が既に出来ており、飛空艇に関連する人間はワイバーンへの裏切り者という風潮で、人材の育成も困難でした。
そういった飛空騎手たちも、時勢の中でかつての規模を維持することは出来なくなりました。他国からの飛空艇の乗り入れはますます増え、大都市の飛空の主導権を握っていきました。
王国名物であった、王都と各主要都市を結ぶ空輸ワイバーンの行列"ワイバーンライン"も、ジェットエンジンの大型貨物飛空艇によって消滅し、多くの飛空騎手が職を失いました。
そうやってワイバーンに乗ることが無くなった飛空騎手は、皮肉にも飛空艇関連の仕事に就きました。空の運輸に関するノウハウは、飛空艇の世界にこそ必要だったからです。
飛空会社はこぞってワイバーンドライバーを雇用し、空港を管理する民間飛空公団はワイバーン専用のポートと滑走路を用意しました。ワイバーン訓練学校も併設し、飛空艇の乗り入れられない地方でワイバーンと飛空騎手が途絶えないよう、共存の道を歩き出したのです。ワイバーンが空港にいると、他の空獣がやって来ないという利点もありました。
こうした複雑な経緯を経て、ロムント王国の飛空艇業界は成長することが出来ました。
しかし決して両者は和解をしたわけではなく、お互いに燻るものを抱え続けていたのです。
そして22021年、飛空艇業界と飛空騎手達とが激突する事件が起きました。
王国中を震撼させた、リタリーニャ空港のあの事故です。




