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黒のメイド  作者: 藤本 寛那
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探さん

 全てが、終わった。真悟も捕まえて。千春様も助け出して。あとはここに警察に来てもらっておさらばするだけだ。ということは、ご主人様とも、お嬢様とも、ビオラ様とももうお別れなわけで。それに関してはなにも不満はないはずだった。それはいつものことて、当たり前のことで、100年近く続けてきたことで。なのに、どうしてだろう。ここに、胸に何かぽっかり穴が開いてしまったようなこの感覚は。

「わからない。」

わからないわ。私が人間で、人間の感情で。これが人を愛するという感情なら、今までどうして芽生えてこなかったの?ああ、どういうこと?私はウメとアイビーのことも愛していないの?愛して、アイシテイルノ?

「ゆり。警察はこっちに向かっているのか?」

「……え?ええ。」

ダメだ、考え事に熱中してしまっていた。もうセイが警察に通報してくれたというのに。私たちは早くここから立ち去らなければいけないというのに。だって、私たちはいないはずの存在だから。戸籍もない。それに、警察の協力者でもないことに表向きはなっているのだから。

「……行って、しまうんだな。」

私の置かれている状況を何となく察してくれたのだろう。ご主人様はそう言って私の方に手を差し出した。私も手を差し出し、握手を交わす。

「ありがとう。助かった。」

ご主人様はもう、私を軽蔑してなどいなかった。その目は、優しさに満ちている。

「約束しよう。ここで見たことは誰にも言わないし、双子の人形の真実も、誰にも言わない。」

ご主人様は私にそう約束してくれた。はっきり言って、嬉しかった。ありがたいと思う以前に、嬉しかった。ご主人様が私を普通の人と変わらずに見てくれたことが。私を、人殺しではなく、普通の人間と見てくれたことが。

「ありがとう、ございます。ありがとう、ございました。」

精一杯のありがとうを込めて、私はご主人様に笑いかけた。ああ。やっとわかった。私はご主人様をちゃんと大切に思っている。ここまで頑張ったご主人様を、尊敬している。だから、悲しい。別れが悲しい。けれど、これはどうしようもないことだ。今までのように、前を向いて、生きていくんだ。今度こそ、人間として。1人の人として。家族と。また、いつか会える日まで。

警察の鳴らすサイレンの音が近づいてくる。

「またお会いしましょう。次は、月夜の下にて。……探さん。」

探が瞬きをして、目を開けた次の瞬間には、天使の姿になっていた。そして、もう一度彼が目を閉じて開けたとき。

「……さよなら。またな。」

全員の視界から、私たち3人の姿は無くなっていた。

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