治療
足から血を流している警官の横には、ひたすら肩を揺すっている女の子がいた。真っ黒な服を着ていて、まるで喪服のようだ。
「おい、あの警官と女の子、見覚えねえか?」
「はい。ありますよ。」
そうだ。思い出した。まえ、どうしても犯人が捕まらない殺人事件があって、その時一緒に犯人を追った警官と被害者の娘だ。今思えばどうして一般人に犯人を一緒に負わせたのかは謎だが、今はそんなことを考えている暇はない。
「罠はなさそうです。行きましょう。」
急いで駆け寄ると、ヒュッとナイフが飛んできた。どうやら投げたのは女の子のようだ。顔が怒りに満ちている。立ち上がり、もう一本ナイフを投げようとしている。止めなければ。
「待て、俺たちだ!」
そう声をかけると、女の子は俺たちが敵ではなく、いつぞやの警察の味方だとわかったようだ。
「セイ。助かりそうか?」
いち早く患者、警官のもとに駆け寄ったセイは、傷口の状態を見て、首を縦に振り、安心したように笑った。
「ぬっちゃいましょうか。」
そういうと、消毒を済ませ、針と糸を取り出し、素早くぬっていく。傷は貫通しているようで、どこに隠し持っているのかよくわからない包帯をぐるぐると巻く。
「終わりました。」
いつものことだが、速いな。さすが我が妹。誇らしい。
ペチペチとセイが頬を叩く。気付け薬を使ってもいいのだが、今持っているのはそこそこ、その、刺激が強いやつだからなあ。
「……ん?」
どうやら無事に目を覚ますことができたようだ。と思ったら、勢いよくガバッと起き上がる。
「いたっ。」
そりゃ痛いわな。足以外にも軽度の傷がいくつかあるようだし、しばらくは安静にしたほうがいいかもしれない。
そういえば、と、楓の方を振り返る。すると、楓は意味がわからない、とでもいいたげにポカーンと口を開けて入り口に突っ立っていた。
「ああ、楓。おいで。」
ちょいちょい、と手招きをすると、よろよろと楓が近寄ってきた。
「え、誰?ていうか、怪我、大丈夫なんですか?」
プルプルと震える手で警官を指差す。
「ああ、大丈夫ですよ。このくらいで死にませんから。」
にっこり笑って警官が答えた。それを聞いて、楓も少しは落ち着いてくれたようだ。
「はじめまして。僕はウメ。こっちはアイビーって呼んでください。」
ヘラヘラと笑いながらウメは笑った。ウメ?アイビー?どうして植物の名前なんか。確かこいつらの名前って……えっと。
「ああ、コードネームですね?」
え、コードネーム?なんの?俺らでさえ組織に潜入した時に使うくらいなのに、どうして俺らに対してコードネームを使う必要があるんだ?




