ウメとアイビー
それより、こいつらどうしてここにいるんだ?こんな危険なところに。しかも、アイビーって、ナイフ投げなんてできたか?
「覚えていませんか?姉さんが2人を雇っていましたよね?」
や、雇う?姉貴が、2人を?……やばい、記憶にないな。
「……そういえば、兄さんはいなかったんでしたね。」
そうか。そりゃ覚えていないのは仕方がない。そもそも知らないのだから。それにしても、どうして姉貴は2人を雇ったんだ?ウメはともかく、アイビーは一般人だぞ?
「アイビーは親を失って1人ぼっちになってしまいましたからね。そこをお嬢様が救ってくださったんです。」
お嬢様……姉貴のことか。
「アイビーが一緒にいたいといえば僕も雇ってくださいましたし、お嬢様には本当に感謝しています。」
ニコニコ笑いながらウメはそう言ってアイビーの手を取った。その顔を見る限り、本当に感謝しているのだろう。
「は、はじめましてアイビーちゃん。楓です。」
楓が少し戸惑いながらもアイビーに話しかけたのだが、アイビーはウメの後ろに隠れてしまった。
「ああ、すみません。アイビーは話せないんです。両親を失ったショックで声を失ってしまって、それからずっと話せないままなんです。」
すぐ人に怯えるところから見ても、確かにそうなんだろう。けれど、人形のように何も反応しないわけではないから、ある程度は回復している、ということか?
アイビーがナイフを投げれるようになっていたりしたのは、姉貴が鍛えたのだろうか?俺たちの知らない間に、姉貴も成長しているんだなあ。……弟がそれをいうのはおかしいか。
心の中で姉貴とアイビーの成長を喜びつつ、俺は部屋の中を見渡した。この部屋には誰もいないし、罠もない。また新しい何かが出てくるというのか?
「それより、2人はどうしてここに?」
セイがそう尋ねると、ウメはまたヘラリと笑った。
「お嬢様を見つけて追いかけて行ったら、男に撃たれて……気がついたらここに。」
あの時後ろにいたのか。気がつかなかったぞ?
「けっこう距離があったんで、お気づきでなかったかもしれませんが。」
アイビーと手を繋いだまま、ウメはそう付け加えた。
距離があったのなら、男に姉貴が撃たれそうになっていたことも気が付かなくて仕方がない。
「立てますか?」
セイがウメに手を差し出すと、アイビーが微かにウメの手をぎゅっと握りしめた。2人は俺とセイのように、相棒という関係なのかもしれない。その上子供なら、相棒を取られそうになってやきもちを焼いても仕方がないよな。
「ありがとうございます。アイビーも、ありがとう。」
よろよろとウメが立ち上がる。なんとか歩くことはできそうだ。走るのは無理そうだが。




