主 探
目的の宝石がある屋敷に音もなく降り立つ。私達は顔を見合わせて、こっそりと忍び込む。私たちに造作もないことだ。そして、霧に見せかけた睡眠ガスを流す。いつもなら、見つかることさえせずに帰れるはずだったのに。そこで、出会ってしまったのだ。出会ってはいけない人に、出会ってしまった。
「ねえ。」
宝石を手にし、帰ろうとした瞬間に声をかけられたのだ。誰かがいることはわかっていた。けれど、睡眠ガスを嗅がせたはずなのに、これはそこに立っていた。その男は、ガスマスクをしていたのだ。
「どうしてこの睡眠ガス、君たちには効かないの?」
その男は不思議そうな顔をすることなく、私たちに尋ねた。その後ろには、誰かを庇っているように見えた。気配でわかる。もう1人、誰かいる。
「私達は人間ではありませんから。」
夜の静寂を壊さないように、静かに答える。しぃ、と、私は男の唇に人差し指を当てた。男、というよりは、青年と呼んだ方が近いだろうか?背丈や話し方は高校生くらいのように感じられる。
「お前たちが人間じゃないなら、どうして睡眠ガスなんか使うんだ?」
何も答えられず、少し焦る気持ちが私の中に芽生え始めていた。けれど、同時に私は今の状況を楽しんでいた。にやけそうになる顔を、無理やり押さえ込む。表情は完璧に作れているはずだ。
「警備員や居合わせたものから霧を見た後すぐに眠ってしまうとの報告が相次いでいる。その霧の成分を、今回調べさせてもらった。」
青年は私のことなど構わず続けた。
女、いや、女の子から資料らしきものを受け取り、私たちに見せる。
ぽん、と私の肩を私の弟が叩く。こんな奴らに付き合っている暇はない。そう言いたいのだろうか?
「見ろ!」
大きな声を出しながら、青年が私に一歩近づく。
「はい、探さん。聞いていますよ?」
私がそう答えると、これの肩は少しびくっとした。当たり前だ。名乗っていないのに名前を知られていたのだから。
なぜ知っているのかというと、誰かが私たちのことを調べているのを知り、調査していたからだ。これの名前は主探。背後に隠れている女の子は、おそらく小学生から高校までずっと一緒だという桜沢 楓だろう。
「と、とにかく、調べたんだ。そうしたら、暗殺者、双子の人形が使っている特殊な睡眠薬と同じものだと判明したんだ。」
一歩背後に下がった探は、冷や汗をかきながらニヤリと笑う。
「お前ら、同一人物だな?」
確かに、私の弟と妹は暗殺者として知られている。けれど、恨まれるのは心外だ。私達は悪いことなど何一つしていないというのに。
ため息をつきたくなるのをグッと堪えて、探に向き直る。
「バラされたくなければ、俺に従え!」
表情からわかる。彼の心の中は、恐怖で満ちていた。何のためにここまで来なたのだろうか?何のために、危険かもしれないこんな場所に大切な友人を連れてきたのだろうか?
全く、反吐が出る。




