行きましょうか
その場にいた3人全員の身体に、心臓を射抜かれたような電撃が走る。
「……姉さん。」
「姉貴。」
2人が私をすがるような目で見てくる。私ははあ、とため息をついた。どうして面倒ごとというとはこうやって次から次へと迷い込んでくるものなのだろうか?
「わかっているわ。」
お嬢様の家のあるあたりからだろうか?近くで何人もの重い足音が聞こえる。通常の足音の者も含めれば、何人もいる。なぜ重いのかって?そんなの簡単だ。重い何かを……抱えているからだろう。例えば、人とか。
どうやらその者たちは車でさっていったようだ。車の音が聞こえてくる。
「お嬢様の家って、あっち……よね?」
恐る恐る音の聞こえた方向を指差すと、セイが残念そうにうなずいた。
「しまったわ。すぐに助けに行かないと……。」
パシッ。玄関に向かってバタバタと走り出した私の腕を、ヤミが掴んだ。ヤミは一体何がしたいのだろうか?急がなければならないというのに。
「姉さん。これは好機ですよ。」
いつも通りの笑顔を見せながらそう言ったセイは、私の手に向かって手を伸ばしてきた。ゆっくりと、私の手を手に取って、そしてまたゆっくりと撫でる。
「姉さんは知らなくてもいいこと、ですけれどね。」
今度はにこり、にこり。嬉しそうな顔をして笑っていた。
2人に腕を掴まれて、身動きが取れない。キツく掴まれているわけではないのだが、動くことができない。これはどうすれば言葉にして言い表すことができるのかさえも、わからない。とにかく、動けないのだ。これが実力の差か、と痛感させられる。2人は私の弟なのに、妹なのに、その2人よりも実力が下とは、呆れた話だ。
「それで、どうして助けに行かないのかしら?」
2人はまたにっこり笑った。そして、私の頭を優しく撫でる。ああ、知らなくていいと言われているのか。つまり、それは私の正義に反することなのか。つまり。それは、つまり。
そのくらいのことは、私の馬鹿な頭でも理解することができた。つまり、私の弟と妹はご主人様とお嬢様をおとりにしようと考えているのだ。なんと馬鹿な考えなのだろうか。
「2人の考えは分かったわ。……追いましょう。」
気づかれないよう、少し離れて追う。けれど、いざとなったら助けられるくらいの距離で。
「……わかりました。」
玄関に向かい、素早く靴を履く。
「さあ、行きましょうか。」
「はい。」
「おうっ!」




