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マイペースな仕事屋

死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬ!マジで今回は死ぬかと思った!」


『俺ノオ陰』


「いや、マジでありがとう!」


『ケタケタ』

森の中を必死で走り数十分。ここまで来れば追ってこないだろうと高を括り木陰に腰を下ろし一息ついた。

「しっかしまあ…撃つかねえ普通」

心臓と頭部計6発。ストリアも腕がいいのか全弾メタルがいなければ急所を撃ち抜いている。

『脅迫サレテタナ。家族ハ大切ナ物ダカラナ』


「あー…まあね。どっちにせよ、どうする?仕事無くなっちゃったよ」

あの獣人の子が多分運んでたレアモンスターって事なのだろう。詳しくは知らないがこっちの人達は獣人や魔人?魔族?とかそう言った亜人と呼ばれる種族達が嫌いだと聞いたのを思い出した。要するに人身売買の片棒を担がされた訳だ。

まあ、可哀想だがしょうがない。外から来た人間が知りもしない世界の連中が嫌悪する連中を引っさげて突然「俺はこの子の味方だ」って言えば頭がおかしいとしか思われない。後先考えずに行動するのは例えそれを成せる力を持ってたとしてもアホだ。それに普通に考えてみれば自分達と似たような姿形で知能を持ち、言葉を持ち、文化を持った生物がいるのだから嫌いになるのは当たり前だ。人間なんてそんなものだし、俺だって多分元いた世界にいたとしたら普通に嫌いになる。

「しっかし、どうすっかねえ。チャカでドタマブチ抜かれましたって言えばヒカワさんは満足するか?」


『一蹴サレソウダ』


「なー」


『アトヲ何人カ追ッテ来テル。数ハ6』


「あー…つってもなぁ…人殺しはしたくないんだが?……お?ヒカワさんからメールだ」

握っていたケイタイを見るとヒカワから何件かメールが送信されたところだった。新しい仕事?

「ええと…獣国ビルウェストの第二王女アルマ=フリーズム=ビルウェストが誘拐された。確信はなかったけどヤマ勘で張ったらビンゴだ…王女奪還よろしく…え?」


『殺シダ』

文章を読み終わるとメール下部に写真が添付されていた。王女と書かれた文字と先ほどの空色少女。誘拐実行犯と思われる商人2名と手を貸したとされる冒険者7名のシャシンも送られてきていた。

(こんな偶然ある?)

「あの人達じゃん」


『事務所マデ連レテ来イッテ』


「えーと、主犯格であるビブラム、ベルカ両名の捕縛。他冒険者7名の抹殺…ストリアさんの名前と残りのは…最近雇った奴らかな?書いてないや」


『サァ?』

もう一件のメールには事件の詳細が書かれていた。侍女2名、衛兵13名の殺害及び王女誘拐らしい。やべえな。

『元々ハ先代王族カラノ付キ合イラシイガ今ノ奴ハ獣人ガ嫌イラシイ。デモ、変態ガ高イ金払ッテ買ウッテンダカラ』


「なるほど」

と、言うかそこまで調べてあるなら一層自分で動けばと思ったが、あの人がフィールドワークしてるとこはそうそう見ないので俺に任せたのだろう。

「しっかし、あの人普段全くツキも勘も当たらないくせしてこういう時だけ凄いよな」


『マァナ』


「そういう所は探偵向きだよね。これで酒とギャンブルやめてくれれば最高なんだけどね」


『無理ダナ』

知ってると内心思いながら一通だけメールを返信すると遠くから聞こえてくる声に耳を傾ける。魔法なのかどうかは知らないけど…羨ましい。こっちは息切らして走ってきたというのに。もう追いついてきやがった。

まあいいや、行くとしよう。

『沢山殺セ』


「この間ドクから貰った睡眠爆弾でこっちは済ませよう」

リュックに沢山詰まっている便利道具の一つ、ガスマスクを被り声の方へと向かう。まあ、まだ殺さない。だから深呼吸をしないでいい。

「お?」


「見つけたぞクロバネ!」

 いつも通り、いつも通り。先程と同様に地面に叩きつけるとあたり一面にガスが充満し、追ってきたものたちが咳き込み始める。1人2人と倒れていきおしまいだ。魔物は近くにいるらしいけど流石にそこまで面倒は見切れない。

「あれ?ストリアさんいないぞ」


『逃ゲタカ?』


「んー…見た感じ家族見捨てるようには見えなかったけど…居ないならしょうがない。本番行こうか」


『ケースハ?』


「ちゃんと持ってるでしょ?ほら…あれ?」

 仕事道具であり身を守る道具であるアタッシュケース。ふと手に視線を落とせば握ってたはずの物がない。だらだらと冷や汗が出てきた。あれがなければどうしようもないというのに…

「落とした…?」


『サッキ撃タレタ時ニ手ヲ離シテタ』


「は…?ちょ!言ってよそれ!」


『ヤレヤレ』

 どちらにせよお姫様を助けないといけないのだ。また走ろう。体力にはそこそこ自信はある。





 ストリアは内心急ながら森へと入っていった冒険者達の帰りを待っていた。次ば自分だ。彼らもまた家族を人質に取られた者たちだ。同情する。まさか裏に大きな犯罪組織があるとは思ってもなく仕事を引き受けてしまった。

(金だ。金さえ払えば家族は…だからすまない。エンスケ君死んでくれ)

 そんな事考えてはいけない…でも、今日出逢った人間よりも家族が大事だ。


「おい、ストリア」


「あ、はい。何でしょうか?」


「これ、どうやって使うんだ?」

 雇い主の1人であるビブラムはそう言ってエンスケの持っていたアタッシュケースを持ってくる。何を言ってるんだ?ロックも無いのに開け方すら知らないのか?

「…あれ?開かない」


「チッ…なんなんだこれ」

 苛立だしげに森に向かってビブラムがケースを投げると地面に落ちずに空中で止まる。

「マジか。今日の俺運いいな」


「なっ!?」

 銀色の粉塵が内側に吸い込まれるように消えていくとそこにエンスケが立っていた。

「なんで言うんだっけこういうの?覗きやろう?【ピーピングトム】あれ?違う?」

 再びエンスケに向けて銃を構える。今度は…外さない。

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