仕事の開始
一時休止した作品の代わりですが、楽しんで書きまーす。
拝啓 何百回目ともなりますが手紙の書き方などわからないので省略させてもらいますがこちらは秋になりました。お久しぶりです。こちらの世界に来て早くも2年の月日が経ちました。変わらずに私は元気です。どれほどの年月がそちらで経っているかわかりません。もしかしすると御二人は既に亡くなっているのかも知れません。それでしたら読んでくださってる方が墓前にこの手紙を添えておいてください。
もしも過去に何百通と似たような手紙が届いておりましたら、是非燃やして頂いて結構です。
私は元気にやっています。思いかえせばたった16年の人生でしたがまさか元の世界での最後が小型隕石がピンポイントで直撃して頭部破砕など考えても無く、不幸なのか幸運なのかよくわからない人生の終わりでした。隕石の住人とは今も仲良くやっています。
最後に感謝を述べてこの手紙を送らせていただきます。両親を早くに亡くし、独りぼっちになってしまった私を育ててくれてありがとうございました。どうかこの手紙を読んでくださったなら私のことは気にせずに御二人の人生を送ってください。末永く、健やかにお過ごしください。何度も言わせていただきます。私は異世界で元気にやっています。
黒翅 葉助様 穣女様へ
遠い異世界より感謝を込めて 孫 黒翅 燕助より
「よし、書き終わった」
『酔狂ダナ』
「いいんだよ。気分の問題なんだから」
朝焼けの中、書き終えた手紙と水筒と弁当をリュックサックに入れたのを確認し背負い、靴を履き玄関に置きっぱなしだったアタッシュケースを持つ。
鍵は閉めなくていいし付いてない。金目の物もないしレイゾウコの中に2日分くらいの作り置きのカレーは入れてあるので奴らの食料に関しても問題ない。そもそもここまで上がり込んでくるのはもう2人の同居人の自称宇宙人の兄妹か大家さんくらいだ。まあ、昨日は居たのに起きたら見当たらないので多分ミステリーサークルでも作りに行ってるか、宇宙との交信とか言って怪しげな儀式を行っているのだろう。頼むから儀式で使った動物の生首を持って帰ってくるのはやめてもらいたい。
「さて、今日も頑張るか」
『ヒカワカラ呼ビ出シ。事務所来イ』
「OK」
ここは異世界。名前は知らない。ただ理由もなく毎年多くの人間が此方の世界に飛ばされてきて技術チートや誰も考えつかなかった!?なんてのをずっとやってるので、魔法もファンタジー的モンスターも魔王だっているのに元いた世界とそこまで変りなく暮らしている。何ならクルマもヒコウキもあるしテレビもケイタイもある。形骸化してない?と思ったが考えてもみればファンタジー世界など非ファンタジー世界な人間が作り出した妄想だ。ファンタジー世界の住人からすればこれが自分達の世界であり、ただの技術革新が起きてるとしか思わない。むしろ飛ばされてきた我々が世界観をぶち壊しているのだが…何も言うまい。人間は一度楽すれば後戻りは出来ない。
まあ、ここいら辺だけは他と比べて随分ファンタジーのままな気がするけど。クルマもないしデンキもそれ程通ってないし。そもそも舗装された道路も無い。
「今日も頑張ろうな、メタル」
『暴レサセロ』
傍目から見れば頭のおかしい奴だがこれが俺の日常だ。決して妄想でも何でもない。隕石に付着してた未知の宇宙金属生命体に寄生されているのだ。よくあることだ。血の気?は多いがまあ、特に害のない。