俺、次なる目的地を知り、はしゃぐ
「しかし……上には上がいる。お前達が敵に回らぬ事を願っている」
ドゥーズはしかめっ面で呟く。
俺とゴールはヘラヘラしている。
「大丈夫だって。俺達は正義の戦士だからな」
「そーそー。無敵のエインヘリヤルとヴァルキュリアなんだから」
「ドゥーズさん、またね!」
おっ、この精霊使い、ソフィに対する時だけはなんかふわっと優しい表情になるな。
ソフィめ、人たらしの才能があるな?
「お前はもっと強くなれる。より成長したお前と会えることを楽しみにしておこう」
「って訳で、おいらと精霊使いのおっさんは、新しい命題がやって来たんでここで失敬するわ」
意外や意外。
精霊使いの仲間はあの竜騎兵か。
仲悪そうに見えたんだが、喧嘩するほど……というやつかもしれないな。
いやあ、お約束だ。
アンネはソフィの頭をポンポンすると、固く握手を交わして去っていった。
キャバリア、実にいい音を立てるな。
後ろに精霊使いを乗せているのだが、バランスが崩れた様子もない。
……で。
この少年は何者だ。
ちょーん、と佇んでいる、ソフィと同い年くらいの半裸の少年がいるのだ。
「スタンさん、この子はね、フォルト君って言って、私と同じように探索者になったばかりの子なの」
「お、おう! よろしくな」
「ほほー」
俺はじろじろと、彼の姿を見た。
武器はあの銛一本。
そして、見た感じからはクラスは判別できない……いやいや。
手足の指の間に水かきが残ってるじゃないか。
これは、メロウの人間形態だな?
戦士、メロウのダブルクラスと見た。
若き探索者が誕生していたとは……。
彼らの活躍をこの目で見られなかったのが残念だなあ。
「フォルト君はこの後、どうするの?」
「俺はまた漁師に戻るかなー。なんか不思議な力が身についたけど、でも俺ってやっぱり魚捕るのが仕事だし」
ということで、この少年ともここでお別れなのだ。
また会う時があるであろう。
俺達は再び、旅に出ることになる。
「しかし、シュヴィーツ湖王国は、もろに観光地って感じのところだったなあ」
「いやあ……散々飲み食いしたわ」
「ゴールは、例え一緒に飲むのが俺だとしても素っ裸にはならないようにしような……」
「素っ裸……」
「あっ、やめるんだソフィ。そんな目で俺を見るんじゃない」
そんなやり取りをしながら、次なる俺達の目的地は、大陸を横断して遥か東。
「命題が来てます。えっと……“神州にて、国を覆さんとする異界の術者を止めよ”って……なんだか古い言い回し」
そんな、ソフィの言葉があったからだ。
神州!!
俺の胸は踊った。
ラグナロク・ウォーにおける、日本に当たる国だ。
鎖国されており、他国の人間が自由に立ち入ることは出来ない。
神州だけで一つのキャンペーンシナリオが遊べる、その名もずばり、『神州サプリメントブック』が発売されている。
あの国だけでも、侍、忍者、僧侶、陰陽師、鬼、狐、妖と、オリジナルクラスが目白押しだ。
ワクワクドキドキの冒険が俺達を待っているのではないか。
「スタン、いきなり元気になったわねー」
「うむ。神州はいいぞ。オリエンタルな魅力に満ち溢れ、何より酒と肴が美味い……」
「いいわね!!」
ゴールもワクワクドキドキになった。
こいつは酒池肉林にしか興味が無いのかもしれん。
腐れヴァルキュリアだ。
「が、外国……! 帝国も、シュヴィーツも私の村とは全然違いましたけど……」
「神州はもう、文化や人種からして全く違うからな。凄いぞ。そして、普通なら簡単には入り込めないところだが、そこは俺の知識を信じるんだ。出島というのがあってな。外国人はそこから商人として入り込むことが出来る。俺は詳しいぞ」
「あ、はい! スタンさんなら大丈夫って信じてます!」
ということで。
馬車を購入した俺たちは、ひたすら、東へ東へ向かっていくのだった。
※メロウの人間形態
探索者になったので、得た性質は武器として残りました。
それを一瞬で見抜くスタンである。
※異界の術者
それは裏切りを意味する言葉……。
※日本に当たる国
和製ファンタジーTRPGお約束。
舞台となる時、おおよそ時代としてはバリバリの戦国時代であることは少ないように見える。
※出島
ということで、第三シナリオからは神州を舞台に、異国人であるスタンたちが冒険することになる。




