2-57.作戦の立案と提示
さて、誕生会とか婚約よりえらい事実がでてきたね。
とにかく、ベニス卿を徹底的に弱体化して勝つ。
何が一番効果的で、相手を罠に嵌められるかね。
「姉さん、ただいま。」
「おかえり。あれ?4人一緒だったの?」
「うん。結果から言うと、<闇の結界>が4ヶ所が街の中にあるだけで、魔術師らしき存在は見当たらなかった。」
「あ。王宮内をシルフやステラにも確認してもらったんだ。」
「うん。念には念をいれたんだけど、王宮内は見つからなかった。多分、一人一ヶ所の割り当てでいいんだと思う。」
「そっか。ありがとうね。その4か所に魔術師が張り付くは分からないから、たまに巡回しにいこっか。あとね。『王宮内にはきっと使用人とかのスパイが沢山入っていて、そういう盗聴を阻止しても無駄だろう』ってベッセルさんが助言してくれてね。裏が取れてよかったと思う。」
「なるほどね。ベッセルさんはどうしたの?」
「今から重大な作戦会議が始まるから、飲み物を取りに行ってくれてる」
「ふ~ん・・・。」
ーーーー
「ヒカリさん、お待たせしました。あ、皆さんお帰りでしたか。」
「丁度いいタイミングだね。皆で作戦会議をしよう。
<如何にして、ベニス卿に多額の借金を背負わせるか>
についてだよ。」
「姉さん、気持ちは分かるけど、もうちょっと解り易く説明してもらってもいいかな。俺たち、ベッセルさんと会話してなかったんだしさ。」
「うん。今から状況を説明するね。
・ロメリアはベニス卿を利用して、エスティア王国を乗っ取るつもり。
・ベニス卿は財務大臣を担当して、エスティア王国を弱体化させている。
・ベニス卿が財務大臣になってから、ベニス卿の提案の<今の厚みの通貨>になり、そこから<贋金>が流通し始めたと考えられる。
・このような重大な局面で、ベニス卿の魔術師部隊をロメリア王国へ派遣しているのは、エスティア王国の内政よりも、ロメリア王国への忠誠を示すため。
・ベニス卿が推薦する<婚約者候補>は、ロメリア王国の貴族令嬢と推測できる。
・なお、これも推測にはなるけれど、ロメリアがベニス卿へメルマの支配権を任せているので、ベニス卿はかなりの収益を上げている。
ここまで、いいかな?」
「さっきのヒロキとの会話からも整合が取れてるね。で<借金>てなんだ?」
「うん。これは私の提案であって、いろいろな意見を出してほしいのだけど・・・。
・私が伯爵になるタイミングで、婚約者候補として紹介する。
・ベニス卿から<待った>が入る。『王国の為になる人物と結婚するべきだ』と。
・「具体的には?」と、王子から<財力勝負>に話を向けさせる。
・2日間の猶予で、<財産の積み上げ>をさせて、徹底的に絞り上げる。
そんなストーリー」
「姉さん、それだと王子を諦めることになるよ。財力勝負じゃ話にならない。」
「ヒカリさん、私も全力で支援いたしますが、2日間となると、金貨5000枚程度しか。向こうは数万枚規模で用意してくると思います。」
「うん。さっきの魔石と属性石があったでしょ、あれ換金できる?」
「姉さん、あのサイズは100年に一度の魔物クラスであって、流通してないよ。」
「フウマさんの言うことも尤もですが、<値決めできたら>金貨1000枚以上するでしょう。」
「そこがねぇ・・・。この辺りを上手く細工して、<相手の財産の積み上げ>をさせたいんだよ。」
「ヒカリさん、よろしいかしら?」
「ステラ、何?」
「<金貨に限らず、鑑定書のある物を寄付できる>というルールは如何かしら?小さめの魔石を並べておいて、『これで勝負したい』って油断させるの。<魔石の鑑定書>であれば、宮廷魔術師数人に見せればいいですし、価値も平均値をとれば算出根拠になりますわ。」
「あ!それいい!次の作戦とも繋がる!<偽物であった場合は提示額の10倍を支払うこと>をルールにしておくの。相手は偽物の石ころを並べられるのは警戒するはずで、こっちの魔石を片っ端から調べて<積み上げた額>を割り引こうとしてくるはずなの。」
「姉さん、次の作戦って?」
「ベッセルさん判るよね?」
「ヒカリさんは恐ろしいお方ですな。相手が限界まで積み上げ切ったところで、<贋金>を指摘するのですよ。10倍の借金が相手に生まれます。」
「たださ、権利書とか宝物とか持ち出されると厄介なんだよね。こっちも<魔道具>とかを並べなきゃいけなくなるから。」
「ヒカリさん、そこはステラさんの言う通り、<価値が算定できる国庫に納められる物>としておけばいいのです。『権利書や宝物の類は価値の算定ができませんし、国庫に納められないので禁止』としておけば。この辺りは事前のルール確認の段階でさり気なく王子に言ってもらった方がいいですね。」
「おお~。なんか上手くいきそう?」
「あとは姉さんが殺されなければいいね。」
「あ。忘れてた。闇の魔術師サクリファイとやらが、誕生会そのものを潰して、婚約者発表を延期させてしまうような手段にでるとしたら、どんなことをしてくるかな?」
「ヒカリさん、そこは並行して作戦を立てましょう。相手の魔術師の得意技などの情報も集める必要がありますし。先に<王子への連絡>と<鑑定書の発行>。そして<見せ球>の作成です。」
「そだね。やるべきことをやろう。
ステラとシルフとユッカちゃんで魔石と属性石の作成をお願い。中型200個、大きいのは馬車一杯分。
ベッセルさんは各種ツテを使って、さっき出した魔石と属性石の<鑑定書の発行>をお願い。値段は、無理して高価な値を引き出すより、揉めない妥当な価値を引き出してね。
フウマと私で王子とレナードさんに連絡しにいく。
各自OK?」
「「「「「ハイ」」」」」
ーーーー
<<フウマ、勢いで決めちゃったけど、どう?率直な意見をきかせて>>
<<姉さんの仲間には参るよ。王子の味方でいてくれて助かる。作戦は問題ないように見える。ただ、姉さんを暗殺しにきたり、相手の魔術師が何をしてくるか判らないところが怖いんだ。>>
<<ありがとうね。そこは少しずつ情報集めながら作戦に盛り込んでいきたいかな。>>
<<そうだね。王子を捕まえよう。>>
と、二人で<飛行術>と<光学迷彩>を駆使して、王子とレナードさんを探索する。
ちょっと、いつぐらいに到着できるか計算してみよう。
まず、関所~キルギスが10㎞。キリギス~城下町が50㎞。
次に、昨日の12時ぐらいに関所を出発したから、1時間あればキリギスに到着。
そこから馬の乗り換え、食事とかで準備に2時間かかるとして15時出発。
19時にはもう道が見えないから休止。
時速6kmで4時間進んだとすれば、24km地点で野営。
夜明けから時速6kmで走れば残り4時間。
今、夜明けから4時間ぐらい経ったから、そろそろ着くのかね?
<<フウマ、馬って時速6kmぐらいならずっと走れるんだよね?そしたら、そろそろ着くかな?>>
<<姉さんの<時速>って何かわからないけど、ずっとって、まさか休憩無しない計算かい?関所からキリギスぐらいなら休憩なしで着くよ。けど、キリギスから城下町を休憩無しは馬の体力が持たない。>>
<<どれくらいかかるの?>>
<<朝ごはんを食べてから出かけると、夕方に関所が閉まるぐらい>>
<<ナビ、それって、何時間ぐらいなの?>>
<<2時間ごとに30分休憩するとの資料がございますので、身軽な馬でしたら9時間といったところでしょうか>>
<<フウマ、人の方が速くない?>>
<<姉さんみたいに、昼起きて城下町を出て、夕方にキリギス着く人は居ないから。ただ、あの二人は馬にも相当無茶させるし、夜目も効くからね。姉さんの計算で合ってるかもよ。って、姉さん。二人の姿が見えたよ!>>
<<どんな魔術を使って来たか知らないけど、門の中で待とうか。ここには<闇の結界による盗聴器>は無いってことでいいよね?>>
<<大丈夫。ステラ達にも確認してもらったから>>
「王子、割と早く着きましたな。流石にヒカリ殿達にも負けますまい。」
「レナード。そういうことを言うと負ける気がするんだ。」
「まさか。予め途中に用意させていた代えの馬を乗り継いで、夜通し移動したのですぞ?我々が抜かれたとは思えませぬ。ほら、門番もその様な一行は見てないし、我々が渡した許可証も提示した者が居ないと申しております。」
「俺も普通はそう思うんだけどな。ほら、レナード見てご覧。」
「え?何をですか?」
「そこに二人いるじゃないか。手を振ってる。」
「王子も人気者ですからな。」
「ワザと気が付かない振りをするのか?」
「まさか?」
「眠いからって、現実から逃げるのは良くないな。」
「王子、負けました。王子の予想にも、ヒカリ殿達にも・・・。」
「二人で手を振ってるんだ。用事があるんだろう。二人を乗せてこのまま王宮に向かうぞ」
「かしこまりました。」
私は王子の後ろに乗せて貰った。そこらの農民みたいな格好だから違和感がある。
ま、今日から戦争だし、ばれてもいいや。
「ヒカリ、馬に乗りながら話ができるかい?」
「これくらいの速度でしたら大丈夫だと思います。」
「貴族の子女なら横座りなんだが、ま、ヒカリだからいいか。話って何?」
「ベニス卿を利用して、ロメリアまで食い込みます。」
「おいおい。馬の操縦を誤るだろ。うちの両親に紹介する。その場で人払いをして一緒に説明を聞こう。」
「はい。」
ーーーー
もう、王子が先頭だと、許可書いらないんだね。どんどこと敬礼されて門番が通してくれる。王宮の玄関正面まで馬で乗り付けると、執事の一人が手を貸してくれて、私を丁寧に降ろしてくれた。なんか女性扱いされてちょっとうれしい。
この先は前回来た時と同じ執事が王子の部屋まで私たち4人を案内してくれた。直ぐにお茶が出てきて、ゆっくりする間もなく会議室みたいな所へ案内された。
普通王様が暇とは思えないんだけど、私の知らないところで何かの合図がでてたんだろうね。
「こっちが俺の父親、そっちが母親。で、こちらの女性がヒカリ・ハミルトン卿です」
「リチャード。一応は国王なんだぞ。ヒカリ殿、私がチャールズ・ウインザーで、こちらが妃のマリアだ。」
「初めまして。リチャードの母のマリア・ウインザーです。ぎりぎり間に合いましたね。」
「紹介頂きましたヒカリ・ハミルトンと申します。よろしくお願いいたします。
その、ギリギリと言いますと・・・?」
「ああ。誕生日までに婚約者の候補を連れてくるって言っててね。明後日だろ?」
「でも、私まだ爵位が・・・。」
「それは、ほら、レナードも言ってたように、養子に入るなり、なんとでもなるから、誰もそんなの気にしてないんだ。俺がこれまでの縁組を全て蹴ってきたから、誕生日のお披露目の儀式の方が気になってるんだよ。今日も待っててくれたから直ぐに会ってくれた訳さ。」
「お忙しいところお会いできて光栄です。王子に見初めていただき、ご縁ありこのような場に出席させて頂いております。」
「ヒカリ、いいから。時間が勿体ないから無礼でもなんでもいいから、いつものように簡潔に要点だけを話して。」
「あ、あの、ええと・・・。」
「ヒカリ、悪かった。深呼吸して落ち着いて。お茶でも飲んでゆっくりして。」
「<スザク>、皆へ報告」
「はい。僭越ながら発言をさせて頂きます。ヒカリ殿の家族及び仲間により立案された作戦は以下のようなものです・・・。」
無理だってば。
<普通の貴族じゃないオーラ>出まくり。レナードさんですら<普通の貴族>に見えてくるぐらいだよ。<威圧の魔術>でもあるのかね?エーテルで探索しちゃうよ?あ、でも、<威厳>とか<体から滲み出る雰囲気>って実は<オーラ>であって、エーテルに作用している結果なのかもね。
あ、なんかいろいろ考えてたら、いつもの自分が取り戻せそうだ。って、フウマの説明がほとんど終わってるし、私のお茶が空っぽ。私は何してたんだ?
「ヒカリ殿、以上が私の説明になりますが、宜しかったでしょうか?」
「あ、はい。ご質問や、作戦実行中に修正が必要であれば、適宜調整したいと思います。」
「うむ。疑う訳では無いが、一つずつ確認したいのだがよろしいか?王子を誘惑しているロメリア王国の手先であるかもしれぬしな。」
「当然です。何から始めましょうか」
「国庫に納めてある、金貨を一袋。あと、鉱山の金から作った新造金貨を一袋持ってこさせろ。」
「その間に、<魔石>を見せて貰ってもよろしいか?数が豊富にあるところを確認したい。」
「フウマ、ポケットに入ってるでしょ。私と順番で出していくよ。いい?」
「姉さん、小さくてもいいかな?」
「<あることを示す>のだから、そこは大丈夫のはず。」
私が、ゆっくりと腰にぶら下げている革袋に手を入れて、右手に小型(ピンポン玉)を握りしめて取り出す。その手を皆の前で広げてみせる。右手を広げて、皆に見せている間に今度は左手を革袋に入れて生成を始める。
「例えば、このサイズの物でしたら、このような革袋にいつでも入れて持ち歩いています。」
「ふむ。<魔石>に見えるな。だが、このサイズの魔石では金貨1枚にもならないだろう。ベニス卿の財力からすると、金貨で数万枚。500枚入りの革袋が数十袋は積みあがるだろう。ちょうど今取りに行かせている金貨の袋のサイズだがな。たしか、このサイズだと金貨1/2枚。1000個集めてやっと金貨一袋なんだが。そんな荷馬車が何台も居るように思えぬのだが。」
「フウマ、そっちにはあった?」
「姉さん、同じサイズのならあったけど・・・。」
フウマが握りしめた手のひらから魔石を転がして見せる。
もうちょっと時間を稼いで欲しいな。でも、フウマには作り方を教えてないから仕方ないね。大きさと価値の問題を言い出したのは王様なんだしね。
「うむ。同じ大きさだな。これで金貨1枚だ。<魔石>は魔物の体内で成長する時間に比例して大きくなる。だから、大きさが一回り大きくなるだけで、魔石の価値がぐんと上がる。この2つより大きな魔石は無いのかな?」
「金貨が邪魔していて、取り出せませんでした。こちらに・・・。」
と、苦しい言い訳をしながら、中型を出す。これより大きなサイズは今の私が身に着けている物からだしたら不自然だ。いろいろと準備が足りなかったな・・・。
「ほう。これは中々だな。確か金貨20枚相当だろう。これでも馬車満載にしないと、金貨数十袋には敵わないな。かといって、これより大きな魔石が出回ることは滅多にない。滅多にないから希少価値も跳ね上がる。つまり、ベニス卿と渡り合えないのではないかな?」
と、そのとき、執事が二人別々に入ってくる。一人は金貨の袋を2つ携えた人。もう一人は宮廷魔術師を引き連れている。で、その宮廷魔術師が何かもってる。あ、あれはひょっとして・・・。
一人の執事は金貨の袋を置くと出て行ってしまった。もう一人の執事が宮廷魔術師を王様に紹介すると、二人で何やら話をしている。で、宮廷魔術師が王様に<魔石>と<風の属性石>を手渡す。やったね!
「ヒカリ殿、ベッセルという商人はご存知かな。メルマの組合に所属してない、誠実な商人なんだがな。」
「はい。今回の宿でお世話になっております。」
「今、ベッセルから、うちの宮廷魔術師に<魔石の持ち込み>があった。緊急事態故に、特別に会議室に入れた訳だが・・・。これだ。」
例の100年物の魔石と風の属性石が皆の前に差し出される。きっと、今朝の勝負でユッカちゃんが作ったやつだね。
「ベッセルがこの2つの石の価値を鑑定して欲しいと持ち込んできたそうだ。先ほどの<スザク>が話したストーリーと一致するのだが、この魔石はお前のものか?」
「ベッセル殿に今回お世話になるということで、差し上げたものです。私の物ではございません。」
「慎重な言葉選びはなかなかいいぞ。相手に隙を突かれにくい。いま、ベニス卿を落とすための道具として、金貨数万枚に相当する金貨、鉱石、宝石、魔石などが必要な訳だ。この魔石と属性石、それぞれ金貨3000枚相当の価値があるとの判定だ。満足したか?」
「満足といいますと?」
「ヒカリ殿の切り札が金貨6000枚で打ち止めということだ。ベッセルが頑張っても金貨5000枚がいい所だろう。合わせて1万1千枚だ。残念だったな。」
「はい。残念です。私はその価値をベッセルさん自身から伝えて欲しかったです。私が後ほどベッセルさんからの報告を受けても、2度目では感激が薄れてしまいます。」
「な、なにを!俺の計算が判らぬか!」
「あなた。怒る前に、先に金貨の確認をしましょう。全てのストーリーが噛み合わないとダメなのですから。」
「あ、ああ・・・。そうだな。ヒカリ殿、どう確認する?」
「それを運んできた執事さんに感想を聞いて貰えればよろしいかと思います。」
一旦退出した執事さんがまた呼ばれてきた。
「金貨を運んだ感想を言え。」
「あ、はい・・・。感想といいますか、不思議でした。左右で重さが違うのです。」
「どういうことだ?」
「同じ500枚のはずですが、新鋳造の方が重いのです。倉庫にあった物は使用するにうちに、すり減ってしまったのでしょうか?」
「ば、馬鹿を申すでない。ほれ、ちゃんと角もあり、刻印もすり減ってないではないか。」
と、それぞれの革袋から一枚ずつ取り出して比べて見せる。
「はぁ・・・。そうですね・・・。」
執事も自分で言っておきながら、なんだかよくわからない状態。
「フウマ、金貨を切れる?」
「ああ。」
「あの2枚を切って。」
「わかった。」
<チャキーン>って、かっこよく切るね。
私なら机に置いて、ゴリゴリ鑢みたいに削って切るんだけどさ。これが<術で切る>ってことか。<業物>なら石も切れるとか言ってたもんね。
「断面を皆にみせてあげて」
断面を見た皆がギョッとする。片方の金貨は外側の皮のような部分は金色だけど、内側が灰色の金属なんだもんね。多分鉛なんだろうけどさ。
「こ、これは・・・。」
「あなた、ストーリーのピースが1つ埋まったわね。ヒカリさんに謝るのは、あなたの方よ。」
「ぐ、ぐ、ぐぅ・・・。」
「ヒカリ、ちょっと待っててくれるかな。親父なりに、この国のためと信じてきたことの根幹が覆ろうとしてるんだ。国王からしてみたら、俺がつれてきた女の子を嘘つきの詐欺師に仕立て上げた方が都合がいいんだ。」
<<フウマ、帰ろうか?権利書にサインしてもらってるから、別にエスティア王国でなくても生きていけるよ?>>
<<姉さん、ここは王子や関所で待つ皆のためにも我慢して。>>
<<はい・・・。>>
「ヒカリさん、王が悩んでる間に、私から3つほど質問させて頂きたいのだけど、宜しいかしら。」
「はい。」
「ベニス卿との勝負で、貴方の全財産に匹敵するような魔石や属性石はこの国の物となるわ。また、ベッセルさんも貴方のために全財産を失うでしょう。それは構わないのかしら?それとも、王子と婚約できたら、<おねだり>して、返してもらうつもりだったのかしら?」
「その必要はありません。」
「必要がないとは?」
「全財産を失いませんので、返してもらう必要がありません。エスティア王国内でご自由に活用頂いて結構です。」
「そう。予想外な回答ですね。いいわ。それが正しい前提で質問を続けるわね。『その財力でこの国をどうするつもり』なのかしら。」
「当初は<食料自給率の向上>、<メルマの商人の迂回>だけを考えていました。今の状況を考えますと、<ロメリアとの外交手段>にも成り得ると考えています。」
「あら、面白い子ね。ヒカリさん、ごめんなさい。最後の質問の前に、先にリチャードと話をしたいわ。続きは、ちょっとまっててくださるかしら。」
「はい。」
「リチャード、この子どこで見つけてきたの?」
「肉と砂糖を交換した。」
「この子が砂糖を持っていたの?あなた、そんなに甘い物が好きでしたっけ?」
「美味しい肉を紹介されたから、砂糖との交換を申し出た。」
「その後は?」
「メイドの格好をしたこの子にクッキーを貰った。」
「その後は?」
「肺の病を治してもらった。」
「え?ジャガ男爵の薬が効いたのではないの?」
「ちがう。ヒカリとユッカという女の子の二人に助けて貰った。」
「なにそれ、命の恩人じゃない。ひょっとして関所の男爵ってこの子?」
「そうだよ。」
「この子の心を爵位で買おうとしたの?」
「そういうつもりは無かったけど、お礼をしようと思ったのは事実だ。」
「うまくいったの?」
「全く歯が立たなかった。今のオヤジぐらいショックを受けた。」
「いま、連れて来れてるじゃない。」
「ヒカリに許してもらったからだよ。」
「ヒカリさん、これが最後の質問よ。『リチャードと一緒になって、何をしたい』のかしら。」
「まだ何も分からないことだらけですが、家庭を築いて子供を授かりたいとも思いますし、一緒に冒険の旅に出たいとも思います。こればかりは何とも。」
「そう。いい答えだったわ。私は貴方に私の所有物の旧金貨2万枚をあげる。自由に使っていいわ。運ぶのが大変だろうから、ベニス卿との競り合いのときまでに別室に用意させるわ。」
「ありがとうございます。」
「結婚式はまだ先だけど、この子をよろしく頼むわ」
「はい。」
「わ、ワシの持つ金貨は全て新型で・・・。新造金貨5000枚を控室に用意させよう。この<魔石>と<属性石>の価値が金貨3000枚であることは、宮廷魔術師に証明書をすぐに発行させよう。また、ストーリーに沿った婚約者選びの場を設けることに協力する。」
「あなた、今はそれでいいわ。ヒカリさんが勝ったら、そのときはちゃんと謝るのよ。」
「わ、わかった。」
「ヒカリ殿、私も旧金貨となると、そう多くは用意できませんが、2日あればキリギスから3000枚は運んで来れるでしょう。間に合うように準備を進めます。」
「ヒカリ、俺も手伝う。このまえフウマに渡しちゃったから、新造金貨で残り1500枚だ。親父、結構いい勝負になってきてないかな?」
「さぁな。国としては潤うがな。」
ふぅ。
・ベッセルさんが5000枚
・王妃が2万枚
・王様が5000枚
・レナードさんが3000枚
・王子が1500枚。
・魔石が6000枚
これで、4万枚ちょっと。
確かにベニス卿に追いつてきたように見えるね。
皆に悪いけど、金貨は勝負の場には出さないつもりだけどね。
あとは闇の魔術師の話かぁ・・・。
情報が無いと動きようが無いね。
孫氏の兵法ってすごいと思うよ。
馬移動に関する部分は
N1998DQ「ミジンコが中世ファンタジーを書こうとしたら」
を参考にさせて頂きました。
いつも読んでいただきありがとうございます。
頑張って続けたいとおもいます。
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ありがとうございます。
10月は毎日少しずつ22時更新予定。
手間な方は週末にまとめ読みして頂ければ幸いです。




