2-51.視察(3)
美味しい夕飯を作ったつもりなんだけどさ~
なんか王子が無言なんだよね。
疲れちゃったのかな。
さぁ、二人が戻ってきたタイミングでみんなで夕食だ。
今日は、ニーニャ、ステラ、ユッカちゃんが居なくて、
王子、レナードさん、モリス、フウマ、私の5人だ。
「モリス、毒見役はどうしよう?」
「リチャード王子とバイロン卿の意向に沿うのがよろしいかと。」
「王子、レナードさん、私とフウマが別室で先に口をつければ宜しいでしょうか?」
「王子、今日は台所も視察しておりますので心配ないかと思われますが。」
「ああ。いい。」
「では、皆で歓談するためにも、ヒカリ殿、今夜は毒見抜きでいきましょう。」
「承知しました。」
「姉さん、これはなんていう料理?」
「刺身」
「ああ。生の魚か。」
「そうだよ。美味しい?」
「タコより淡泊だけど、脂が載ってて美味しいね」
「ヒカリさん、こちらのプルプルしたのは昨日試食した<プリン>ですか?」
「ううん。魚のエッセンスが入った物。<プリン>の原料といえば原料だけど、良い味が出てると思うよ。」
「なるほど。魚の出汁ですね。味が濃いですが、触感がそれをまろやかにして、面白いですね。」
「ヒカリ殿、この食前酒について伺ってもよろしいか?」
「モリス、これ判る?」
「<プラムの果実酒>でございます。甘めが合うとのことで、こちらを選択しました」
「初めて見るものばかりだが、相性が良く整っている」
なんか、王子が無言だね。
美味しいと思うんだけどな~
いろいろ手を変え、品を変え、興味を引いてるはずなんだけどね・・・。
少しずつだから、お腹いっぱいにもなって無いと思うし・・・。
なんか、娼館から帰ってきてから様子がおかしいね。
「姉さん!この牛が凄く柔らかい!」
「でしょ。たくさんあるから食べて。お替りもできるよ。」
「ほう。ではヒカリ殿、私も早速おねがいしてもいいかな。」
「王子はどうされますか?」
「ああ、お願いする。」
「モリス、3人分追加で。」
「承知しました。」
一応、反応はあるんだよね。
食欲はあるみたいで良かった。
ちょっと疲れてるのかな?読めないね。
「では、そろそろデザートに移りたいとおもいます。」
「ヒカリ、娼館のこと、すまなかった。」
「ええと・・・。許可頂けないということでしょうか。」
「いや、違うんだ。許可はレナードが出す。レナードどうだ?」
「問題ありません。今日からでも営業して頂いて結構です。権利書の発行は後日使いを寄越す形になりますが。」
「許可頂き、ありがとうございます。良かったです。」
「謝りたいのは、そのことではないんだ。自分の器量の狭さと偏見で君にとても済まないことを言ってしまった。許してもらえないだろうか。」
「なんのことでしょう?」
「あの娼館を建てた費用は『おれがフウマに渡した金貨』と言ったことに対して、ヒカリは何も言わなかった。それどころが、『必ずお返しします』と言っただろ?」
「そうでしたっけ。」
「いや、いいんだ。言っても言わなくても構わない。そうじゃないんだ。ヒカリに実力がなくて、俺にはヒカリを自由にできる資金があると狭い視野で人を判断していた自分が悲しいんだ。許してほしい。」
「何のことか、良くわかりませんが、私が<王子を許す>と言って、楽しい食事が再開できるのなら、そちらの方が嬉しいです。」
「レナード、スザク、俺はこんな程度の人間だったのか?」
「「ヒカリ殿ですから。」」
「おまえら、仲がいいな。なんか嬉しくなったよ。<ヒカリだから>か。
ヒカリ、許してくれてありがとう。デザートを頼む。」
「モリス、<プリン>と<ミルクテロン>の2種類を人数分おねがい。」
「承知しました。」
「レナード、今のエスティア王国の王子の婚約者の条件は?」
「王族、侯爵、伯爵以上の令嬢であること。ここが最低限守られるべき条件となっています。それ以外は、他国の者でも構いませんし、年齢も不問になっております。月の運命からすると、リチャード王子に限って言えば、半月を2つ持つ誕生日の女性が見つかれば、有力候補になるでしょう。」
「あと、4日間で婚約者を決めないといけないよな?」
「王子が19歳の誕生日に婚約者を発表し、20歳の誕生日で婚姻の儀を行うのが慣例です。」
「ヒカリが伯爵になるには?」
「手っ取り早いのは養子縁組でしょう。本人が伯爵である必要はないので、例えば、バイロン家の養子になれば、即、侯爵令嬢の肩書が得られます。」
「それは最終手段だし、ヒカリ本人の意向がある。先ずは国のルールで考える。」
「そうしますと、この関所であれば・・・。
(1)メルマの自治権を停止し、エスティア王国の管轄に組み入れ
(2)風土病である肺の病の治療方法の確立または根絶。
(3)エスティア王国の食料自給率を5%向上させ、その状態が維持できること。あるいは100haの開墾と領地組み入れ。
(4)多大な技術または魔術の発展。たとえば、<高温炉>の実用化レベル。
(5)冒険者としての多大な成果。例えば、<神器>の発見または所持。例えば、未開の地へ50km^2の領地拡張。
これら(1)~(5)のうち、1つ以上が達成できれば伯爵以上が確定でしょう。
しかし、審査に時間の掛かる事柄が多く、4日間で通すとなると・・・。」
「はは。絶望的だな。4日後は諦めて、婚約破棄で出直すか?」
「王子の意向は分からなくはないのですが、ヒカリ殿の意向も汲んでは?」
「そうじゃないんだ。俺が勝手に押し付けるのではなくて、ヒカリ自身に力がある状態で話をしたいんだ。そうでないとフェアでない。主人と奴隷の関係だ。俺はそのような意見の押し付けをしないように相手のことを考えて生きてきたつもりだったが、今日、本当に情けない思いをした。だから・・・。」
「姉さん、どう?」
「リチャード王子は容姿や家柄だけでなく、多くの有能な仲間に支えられています。また仲間の期待を背負ってられることから、胆力もあると想像されます。素晴らしい方です。それだけにとどまらず、自省し、自分の否を認めることはなかなかできないことであり、その勇気ある生き方には今後の成長が期待される人物であると思われます。」
<<ねえさん、そうじゃなくて。>>
<<うん。素敵ないいひとだね。>>
<<分かってて、言ってるよね?>>
<<分かってる。切り札を選んでる。どの札が一番王子を傷つけずに、私が自由に活動できるかをね。ここで私が王子のモノになったら、私を支えてくれている皆に失礼だ。この辺りは王子の考え方に共感できるんだよね。>>
「そうか。ヒカリとしても俺を嫌いになってはないんだ。ありがとう。」
「嫌いになるなんて、とんでもないです。人は間違いを犯す生き物です。私も多くの間違いをし、それを乗り越えて今生きています。」
「レナード、なんとかしてくれ。」
「王子、男爵は適当でもかまいませんが、伯爵や侯爵になりたい子爵は多くいます。そこで国に役立つ貴族だけが昇格できるような、厳しい審査基準があるのです。」
「あの・・・。もし、私がリチャード王子の婚約者に選ばれたとして、その後の1年間はどのような扱いになるのでしょうか。例えば、王宮の部屋に閉じ込められるとか。また、結婚後も、この領地での<高温炉>の開発が継続していると推測できます。こちらの指揮はどういった形になるのでしょうか。」
「王子次第です。」
「ああ、俺の気持ちでどうとでも。」
「仮の話ばかりで申し訳ないのですが、『王子は私をどうしたい』のですか?」
「ヒカリと一緒に人生を過ごしたい。そして、ヒカリがヒカリらしく生きていて欲しい。それができなくなるのであれば、別れよう。自分も大切だが、ヒカリもかけがえのない存在だからだ。」
「丁寧にありがとうございます。しかと受け止めました。」
「フウマ、領地マーカーの記録は宮廷魔術師クラスじゃないと確認できない?」
「いや、書き込みは難しいけど、国の大臣や王子なら、確認できるんじゃなかったかな。ちょっとした魔術が必要みたいだけどね。」
「うむ。できるぞ。」
「ヒカリ、俺もそれぐらいはできるぞ。」
「では、ヒカリ・ハミルトン卿の領地マーカーで囲われた面積をご確認ください。」
「「ヒカリ(殿)だからか・・・。」」
「うん。姉さんはいつもこうだよ。」
「では、冷え冷えのデザートをご堪能ください。」
「このデザートもヒカリ殿の仕業か。」
「ヒカリ、そうなんだろ?」
「モリス、料理長のゴードンが作ってくれたよね?」
「レシピ通りに作成しているとのことです。」
「レナード!ここは貴族の迷宮より歩くのが困難だな。」
「王子がしっかりヒカリ殿を捕まえてください。」
ーーーー
さて~~~。今日はつかれたねぇ。
まぁ、口約束とはいえ、将来の伴侶が見つかったか~~。
なんか、疲れたせいだか、プレッシャーから解放されたせいだか、胸がドキドキするね。実はさ、あんまり恋愛とか考えたことが無くてさ。
<やらはた>とか<やらみそ>とかすっごい嫌な表現なんだよね。
人は人。自分は自分。ただ、まぁ、自分にとっては良い家庭で育ったと思っているから、今度は自分も良い家庭を作って子供を育てたいっなぁ~ってのはある。
あ~~~。なんか頭がぐちゃぐちゃ。眠れない~~~。
今日は<お客さんシフトの部屋割りだから>って、何故か部屋に私一人だし。
話し相手も居ないから、外を歩いて涼んでくるかね。
「あ~~。月がきれいだ。もうすぐ、満月と半月2こになりそう。」
「そうだね。俺の誕生日が半月、満月、半月なんだ。」
「あ、王子。」
「なんだか寝れなくてね。月が綺麗だね。」
「うん。」
「あ、あれ?ヒカリ、目にゴミがついてる」
「え?」
「ちょっと、腰曲げて、目を閉じて。直ぐとるから」
「うん」
って、あ~~~。
古典的なキスの方法だったかぁ・・・。
騙されたっていうか、嬉しいのか・・・。
びっくりだ・・・。
「はぁはぁ。随分取りにくいゴミだったんだね。」
「うん。ゴミは取れなくても、ヒカリの心がとれたかも。」
「今日はレイの娼館で泊る?」
「いく必要ないだろ?」
「はい・・・。」
生まれて初めてのお姫様だっこだ。
身長があるからさ、難しいとおもうんだよね。
王子が昼間言ってた通り、見た目以上に筋力や体力があるんだろうね。
寝室までいく最中、頭の奥がジンジンするよ。
痛いんじゃないんだけど、なんだろ~。
緊張してるのかな・・・。
ああ、初めてってばれちゃうかな~。
上手くいくかな~。
なんか、王子が体に纏わりついて・・・。
こっから先は内緒だ。
いつも読んでいただきありがとうございます。
頑張って続けたいとおもいます。
また、ブックマークや評価を頂けることはとても励みになります。
ありがとうございます。
10月は毎日少しずつ22時更新予定。
手間な方は週末にまとめ読みして頂ければ幸いです。




