2-46.料理を作ろう(2)
牛は一人でもいけるし、練習も今の材料でできる。
ユッカちゃんと海鮮の材料集めに行こう。
「ゴードン、ちょっと試して欲しいことがあるんだけど。」
「なんでしょう?」
「さっきの料理のレシピの話でさ、<柔らかい牛肉>の話があったでしょ。」
「ありましたね。」
「<ヨーグルト漬け>と<玉ネギの微塵切り漬け>で、試してもらってもいいかな?」
「は、はい・・・。材料は冷蔵庫の牛を使って試しても宜しいでしょうか?」
「うん。漬けてる時間とか肉の厚さとかいろいろ条件を変えて試してみて。水牛は、追加で一頭捕まえてくるから、材料は気にしないで使ってね。」
「判りました。」
早速、牛を一頭捕まえて、冷蔵庫に放り込んでおく。
もう、解体するの面倒だから冷凍でいいや。
大自然相手だから牛が全滅することは無いでしょ。
よし、ニーニャにナイフ貰いに行こう。
「ニーニャ、ナイフ出来た?」
「急ぎだったのか。すまん、言われた順番に作ってたから<パスタ製造機>がもうすぐできるぞ。<銛>なら、体操の時間ぐらいで作るぞ。待てるか?」
「あ、いや、こっちこそごめん。私が思いついた順番に話をしちゃったからいけないんだよ。<パスタ製造機>は完成したら、ゴードンさんと動作を確認してみて。ユッカちゃんを呼ぶから、その間に<銛>だけお願い。<良く切れるナイフ>って、明日でもいいんだけど、作るのって大変な物?」
「ユッカちゃんが持ってるような<魔術コーティング物>は、いろいろと時間が掛かるぞ。普通の獣とか魔物を切るだけなら、<業物>で、十分だろ?ヒカリが好きなタコもスパスパきれるぞ?」
「<業物>だと、どれくらいかかる?」
「材料はあるから、夕飯までには終わる。<パスタ製造機>と<業物ナイフ>どっちが先がいいか?」
「<パスタ製造機>を優先でおねがい。麺の太さを変えると触感も変わるんだよ。太さが可変になるといいかな。余裕が出来たら、無理しない範囲で<ナイフ>をお願い。」
「分かった。今から<銛>な。伸びる紐はドワーフの特殊な皮を使うぞ。」
「お願いします。」
<<ユッカちゃん、海に行きたいんだけど>>
<<タコ?>>
<<タコはまだあるから、他のエビとかカニを取りたい。あと魚類も少し。>>
<<海の試練?>>
<<私が知ってるカニは挟まれると痛いよ。エビは逃げ足が速いぐらい>>
<<美味しい?>>
<<魚やタコとは違った味がするね。私は茹でたり、焼いたりしたのが好きかな>>
<<シルフも一緒でいい?>>
<<私は構わないよ。ニーニャと関所で待ってるね>>
<<今から、そっち行くね~>>
「おねえちゃん、来たよ。」
「こっちも準備できたよ。ほら<銛>って言うんだよ。にひひ・・・」
「何に使うの?」
「こう、伸びる紐を伸ばして持って、離すと紐が縮んで先っぽが魚に飛んでいくの」
「それで魚捕まえるの?」
「うん。変かな?」
「ううん。たくさんお魚とった方が勝ちね?」
「そしたら、大きな袋を2つぐらいもっていかないとね。」
「ランドセルは置いていくよ?」
「あ、魚入れると臭くなるか使わないね。置いて行こう」
ーーーー
最初はさ、憧れと興味があったわけ。
<海に潜って、魚を銛で突く>とか、ロマンでしょ。
で、呼吸は続くから困らないし、飛行術の応用で水中もそこそこ移動できる。
で、狙いを定めて、近寄って・・・
『えい!』
とか、やってたわけ。
普通に逃げられる訳よ。
簡単に言うと、場数踏んでないから、動きを読まれてるんだね。そして逆に魚の動きとか読めないから好き勝手に逃げられる。昼間とか反応も速くて、漁に向いてる時間じゃないんだよ。<ファンタジーで何とかなる>とか思ってた。そんな風に考えてる時期が私にもありましたってね。
ユッカちゃんがさ、この間の私の<タコ狩り>真似してさ、どんどん凍らせて取ってるの。こう、狩りじゃなくて、<魚拾い>なんだよね。目につく魚を片っ端から凍らせて、それを革の袋にどんどこ集めて入れる。海のロマンとかないね。
で、私が負けた訳。
<<おねえちゃん、そっちの袋空いてる?こっち、もう入らない>>
<<私の負けだから、残りはエビ、カニ、貝を取って帰ろう>>
<<エビは?>>
<<そこにいる、長いひげと足がたくさん生えてるの>>
<<これ?>>
<<左のは<フナムシ>、右のは<グソクムシ>両方違うね。
あ、いたいた。これだよ>>
と、エビを見せる。
<<それなら、こっちに山盛りだよ>>
いや、本当にイセエビみたいな大きなエビが山盛り。なんていうか、集まって生息するんだね。岩にみっちりついてる。
<<ユッカちゃん、ナイス!エビも私の負け。何匹か私の袋に入れて。ガサガサするから凍らせておいてね。>>
<<カニは?>>
<<今日は、もう入らないよ。貝を少し拾って帰ろう>>
<<<カイ>って?>>
<<ほら、ここの岩にへばりついてるのを<銛>とか<ナイフ>で引きはがすと、内側が貝の身になってるの。あとは、そこに転がってる渦巻いたのも貝だよ>>
<<へぇ~~~。美味しい?>>
<<う~~~ん。ワタって言って、内臓の部分は独特の苦みがあるから、子供は苦手な子が多いかな。大人になると、この苦みが好きな人が多いね。貝の肉の部分は淡泊なタコとは違った美味しさあるよ。>>
シルフは海とか浜で何かを探してるみたいだった。別に狩りに誘った訳じゃないし、暇を持て余してなければいいんだけどね。
「じゃ、シルフ、ユッカちゃん、帰ろうか。」
「「はい」」
ーーーー
「ゴードン、ただいま~。あれ、ニーニャも。」
「お帰りなさい。ニーニャ殿が<パスタ製造機>を作ってくれたので、二人で試してました。この細いのをパンみたいに焼くのですか?」
「あ、ごめん。茹でる。で、ソースと絡めて食べる。今から練習で作ってみよう。ちょっと、魚を冷蔵庫に置いてくるね。ユッカちゃんとシルフはどうする?」
「「みてる。出来たら食べる係」」
仲がいいね。ちゃちゃっと、やっちゃおう。
ニンニクを一欠片、唐辛子を少々刻む。
これをオリーブオイルで少し色が付くくらいまで温める。
一方で、鍋に生パスタをたっぷりのお湯でゆでる。
今度は、フライパンに、残りの物の玉ねぎ、キノコ、ハムを細切りにして炒めて、塩を振る。胡椒はないんだね。あるかもしれないけど、ここには無いっと。
ま、なんとかなるでしょ。
ぐだぐだになる前にパスタをお湯から揚げて
フライパンの具と合わせて混ぜる。
フライパンのまま、ど~~んと、キッチンテーブルに置いて完成。
お皿に少しずつ取り分けて、試食してもらう。
「みんなどう?」
「おねえちゃん、いつもずるい」
「僕は美味しいと思うよ」
「料理人として、こんな簡単に作れる料理があると緊急時に嬉しいですね」
「私の<パスタ製造機>だぞ。みんな嬉しそうだから、私も嬉しいぞ。」
「ニーニャ、ありがとうね。この麺の太さとか幅を変えて、触感をわざと変えて、いろいろな味を楽しんだりするんだよ。
例えば、極細で作って、茹であがったら直ぐに水で冷やして、冷製のパスタにしたり、板状のままで、間にソースを挟んで窯で焼きあげたりするんだよ。」
「ヒカリ、今、それ作るのか?」
「おねえちゃん、もっと」
「僕も食べるよ」
「ヒカリさん、出来れば私もいくつか知っておきたいですね」
「え?あ?今から?」
「「「「はい」」」」
なんかさ、ニーニャの<パスタ製造機>が凄いの。
横長に出てくるアタッチメントと、ソーセージ作るようなチューブからでてくるアタッチメントがあって、横長の方は平麺が作れて、そのカット幅を適当に調整できる。チューブの方は別に頼んでおいた<篩いの網>を利用して、編み目の細かさで麺の太さを調整できるの。ロマノフ家のドワーフの実力はおそロシア。
しゃぁない。この調理場に居るみんなで夕飯に向けてパスタとソースづくりだ。
一つはラザーニャタイプで、ミートソースと水牛のチーズを挟んで焼き上げる。今日は器が無いからフライパンごと窯に入れる感じで。
もう一つは、フェットチーネタイプで、今日とってきたエビのクリームソース。ブロッコリーとかアボカドとか無いから、青みはキャベツでいいことにする。
最後の一品はスパゲティータイプ。エビのミソを使ったオーロラソース風だ。
玉ねぎも、トマトもある土地で大助かりだね。
さぁ、みんなを呼んで夕飯だ。
いつも読んでいただきありがとうございます。
頑張って続けたいとおもいます。
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