2-47.料理を作ろう(3)
さぁ、試食会といつもの報告だ。
「さぁ、夕飯を食べながら報告会だ~。
って、あれ?いつもより人数多いね。いいけど。」
「ワシは、ハーブティーの元をゴードンに届けに来たのじゃ。いい匂いがするから待っておったのじゃ。」
「私たちは長老が返ってこないので、心配になって見に来たわ。長老が帰らないのでここで待ってるの。」
「そっか。一応、夕飯での報告内容は秘密の情報だから、他に漏らさないでね。」
「大丈夫じゃ。この子らも注意されれば判るはずじゃ。」
「「「ハイ」」」
「じゃ、モリスからお願い」
「今日は、ベイスリーさん達家族との交流をメインに、レイさんの仲間を娼館に戻せるように準備を進めました。もう、ほとんどの引継ぎは終わって、もし何か問題があったら声を掛けるレベルまで完了しました。
また、馬車付きで2家族がさらに到着しました。ちょうど2軒分の開拓者用の小屋はありますが、牛車を使った農耕器具が1式しかありません。終わったところから順番に区画割を進めて、それぞれ種まきを開始しました。
あとは、今日の夕飯にあるような、晩餐会に向けての料理の打ち合わせを行いました。」
「ありがとう。そっか。区画割しないといけないね。あと、種とかなんにも用意してないんだけど、どうなってるんだっけ?」
「1家族当たり、500歩×100歩を1区画として、割り当てることにしました。家族構成や4期ごとの転作を考えて、拡張は都度行えるようにします。種は持参したとのことです。」
「二期作とか二毛作とか知ってるけど、4期ってどういう計算なの?」
「小麦→イモ類→根菜→牧草を1年で回すことになります。それぞれ3か月ずつです。」
「いやいや・・・。1年で4種類はとれないでしょ」
「あそこの土地なら、十分に回せると思うわ」
「ワシとシルフが居れば、6回まわせるのぅ。耕した土と種があればじゃがな。」
「そんなに耕すなら、10家族とか移住してきたら、牛車の耕運機が5式ぐらい必要ってことだよね?牛小屋も用意しないといけないんじゃ・・・。」
「今のところ、2家族で共同管理としてもらっています。管理する代わりに牛乳などは分けて頂きたいとのことですが、よろしいでしょうか?」
「管理って、連れてきた牛を放置してても面倒みてくれるってこと?」
「というよりも、無料で借りれる牛が居るので、初期費用が助かるらしいです。牛を使うのは移住者の仕事の都合があるので、管理も任せて欲しいとのことです。乳は飼料の食べ具合を見るのに毎日確認したいとのことです。」
「牛は、増やしたり食べたりもしたいんだよね?」
「イノシシを飼う話はありますが、牛は未確認です」
「ベイスリーさんと一緒に<必要な物リスト>を作って貰えるかな。共同でいいものと、個別の住居で必要な物とかね。水路、竈は今は屋外の共通のを使ってもらっておいて。」
「わかりました。確認と調整を進めます」
「種を撒いたのじゃったら、明日シルフと一緒にみてやるのじゃ。任せておけ」
「ありがとね。」
「モリス、他に報告とか問題とかあるかな?」
「今日は以上になります」
「次、ニーニャお願い」
「銛、パスタ製造機、ナイフを作ったぞ。あと、ここにある夕飯も皆で作った。」
「いろいろありがとうね。ナイフって作り終わったの?」
「普通の<業物>だろ?ほら、これでどうだ。」
何か、ナイフっていうと、果物ナイフぐらいなイメージがあるんだけど鉈だよね。これは。鉈ほど刀身が厚くないけど、包丁よりは分厚い。こう、昔の映画であるような戦場格闘物ででてくるアーミーナイフ?なんていうんだろうね。あんなかんじ。
「これ、大きくない?」
「丈夫で軽いぞ。使ってみるといい。牛も簡単に解体できるぞ」
「そっか~。ありがとうね。」
「石とか甲冑は、技が無いと切れないからな。壊すなよ?」
「いやいや、技とかあっても切れないよね」
「切れますわ」
「切れるぞ」
「ユッカちゃんのナイフは見たから知ってるけど、普通のナイフで石は切れないでしょ?」
「ヒカリさん、騎士のクラス3ぐらいあれば、甲冑や石を切ることは可能であると聞いたことがあります。例えば、ベイスリーさんでも切れると思われます。」
「そっか・・・。フウマがここに居たら、『ねえさんは切れないかもよ』とか言われるんだろうね。わかった。今度誰かに教えてもらおう」
「ヒカリが石を切ったり、甲冑を相手にするぐらいなら、<魔術コーティング>の方が楽でいいぞ。防具にも応用できるしな。」
「そういう機会がでてきたら、今度相談にのってね」
「いいぞ。」
「最後ステラは?」
「今日は、革の準備です。石灰漬けは今朝終わりまして、ニカワの元を長老にお渡ししました。ヒカリさんは料理用に精製するのですよね。今晩は石灰分を抜いて、明日からタンニンに漬けるなめし作業に入ります。そのため、栗の皮から<タンニン>を抽出していました。あと、解体した牛肉から脂を抽出していました。」
「ありがと。牛は調理用にもう一頭足しておいたから、必要なら使ってね。」
「わかりました」
「じゃ、今日はここいらで報告会を終わって、試食会にしよう」
「「「「「「「「はい」」」」」」」」
なんか、晩餐会なみにいろいろでてくるの。
牛肉料理が4種類ぐらい。厚い肉と薄い肉。
パスタが3種類
スープが2種類
試食会を毎日開きたいとか言われたら、毎日海と山に狩りに行かないといけないね。
「そういえば、ヒカリさんや、<透明なプルプル>が出来たのじゃ。」
「え?早くない?」
「お礼なら、そこの3人のエルフの子らに言っておくのじゃ。工夫もしておったみたいじゃぞ」
「エスト、イスト、ミスト、ありがとう」
「ステラ様の最初の状態が良かったのと、長老の指導のおかげです。これからもよろしくお願いいたします。」
「じゃ、みんな試食会続けてて。ゴードンと一緒に<プリン>作ってくる。長老も待っててくれるかな。今から作ってくる<プリン>に合うハーブティーも考えておいて欲しいの。」
「わかったのじゃ。」
なんか、みんな楽しそう。美味しい料理は心を明るくするよね。新鮮なら美味しさも増すしね。この料理を維持するための生活力ってどれくらい天然資源を消耗したり、領地の運営資金が必要なんだろうね。この関所で働く人が増えたら、いつまでも平等に食事を振舞うことはできないかもねぇ・・・。かといって、各自が独立生計を立てるのだったら、こっちが食事を提供するのはオカシナ話になってくるし・・・。
パーティーとか、そういう機会があったら皆を招待して、それ以外は私の直接雇用じゃない人達はその人たちで食事を作って貰おう。
なんか、人が増えるってことは考えることも増えるってことで大変だね。
ーーーー
「ゴードンさん、試食会は成功っぽいよ?ゴードンさんも味見した?」
「肉類はお皿に盛る段階で柔らかさを確認しました。あと、スープも。このビスクってのは凄いですね。今度、殻を粉にする機械をニーニャさんに作って貰いたいです。」
「パスタ類は?」
「フライパンごと給仕してますので、私はソースの味を調える分しかいただいておりません。ですが、パスタ類は今後もいろいろアレンジが出来そうですし、晩餐会で使う予定も無いのであまり心配しておりません」
「そっか。じゃ、<プリン>を今から作るよ。一緒に見て覚えて。で、冷ましたりするときに時間が掛かるから、そのときに、試作料理で分かったことを教えて。」
「はい。早速お手伝いします。」
<<ナビ、プリンのレシピを頂戴。ヒットした上位で簡単なもので。>>
<<はい。
材料:卵1、牛乳200ml、砂糖大さじ3、バニラエッセンス
手順:
(1)牛乳半分に砂糖を入れて、人肌に温める
(2)卵を溶いて、(1)と混ぜて、布等で濾す
(3)器に入れて80℃くらいまで熱する。土鍋の余熱を利用するのもあり。
ここで泡が立つと、スが入ります。
(4)ゆっくりと固まるのを待ったら、最後に冷やしておしまい。
以上です>>
<<材料にゼラチンは?>>
<<ありません>>
<<う~ん。ゼラチンを使うプリンのレシピはありませんか?>>
<<料理レシピサイトの上位にはありません。卵のタンパク成分で固めるようです>>
<<<たまご>と<ゼラチン>を一緒に使うプリンはないんだよね?>>
<<プリン、ゼラチンですと、お芋や豆乳、栗と一緒に使用されています。あとは2層プリンなど。>>
<<私の勘違い?>>
<<<ゼリー>は<ゼラチン>を使用して<ぷりん>とした触感になります>>
<<それを、私が狙っていたことにすると?>>
<<ゼラチンなしプリンは<とろん>とか<てろん>という触感になります>>
<<ネーミングの問題で、<プリン>がここではプリンにならないと?>>
<<ゴードンが不思議そうな眼差しでこちらを見ています>>
「ゴードン、お待たせ。2種類のレシピを作ってみようと思って頭の中を整理してたよ。あとで皆と一緒に感想をきかせてよ。」
「はい。手伝えることがあれば、指示いただけますでしょうか。」
「卵と砂糖と生クリームに近い牛乳を人肌で温めて混ぜる。それが終わったら裏ごしして、コップにいれる。今度は土鍋にお湯を張って、お茶をいれるぐらいの温度になったら、さっきのコップを底に並べる。お湯が入らないように注意ね。これで30分くらい放置して、最後に冷蔵庫で冷やしたらおしまい。」
「<ゼラチン>は使わないので?」
「うん。味も触感も両方変えてみようと思ってね。」
「2種類目ね。ゼラチンをお湯で融かす。そこに、果汁をいれて、砂糖で甘さを整える。これはトレイに開けて、冷蔵庫で冷やす」
「とすると、最初にゼラチン無を作って、次にゼラチン有を作ると冷やす時間待ちの順番が良さそうですね。」
「そうだね。」
裏ごし用の肌理の細かい篩いもあったけど、土鍋が無かった。厚手の鍋を暖かいところに常温放置でおしまい。なんか、気のせいか、黄身が白っぽいんだよね。これって、あれか。日本の黄身は鶏の餌で色付けてるってやつか。ま、味がでてればいいやね。
で、プリンとゼリーが固まるまで、ゴードンと試食結果の話をする。
<肉について>
肉は驚くほど柔らかくなる。風味が気にならなければ、食欲が増すのではないかとのこと。たとえば、玉ねぎ漬けの場合、玉ねぎをメインにしたソースを作って掛ければ、違和感がなくなるし、ヨーグルト漬けの方はクリーム煮や濃い目の味であれば、牛乳の風味が反って味の奥行きを深めるとのこと。ただ、単純に塩や香草のみで牛肉を食べたい人にとっては、質より量や触感を求められる可能性があるため、柔らかさやソースが反って弱点となる可能性がある。この辺りはお客様次第だって。
へぇ~~。流石は料理長だね。素材とソースを生かすバランスを心得てるんだ。
<エビ・スープについて>
エビが何かしらないけれど、身、ミソ、殻の全てを使うのが楽しいとのこと。この残りの頭の部分もなんだか魔物との戦闘がイメージできて、飾りに使うと人気がでるかもしれないとのこと。
騎士団とか辺境侯爵ってのは、やっぱり肉食系なのかね。ゴードンさんは、レシピを忠実に再現するだけでなく、素材を生かしつつ自分でアレンジできるんだ。この関所には凄い人が多すぎるよ。
<魚について>
今日はドタバタしてて、使えなかったとのこと。
パスタと牛肉だけでもすごいんだけどね。<煮凝り>は魚のゼラチンを生かした料理であることを伝えると、うんうん頷いていた。魚のプリンは臭そうだから止めておくように言っておいた。
さて~~。
「みなさん、おまたせ~~!試食タイムだよ!2種類あるから感想を聞かせてね。」
「おねえちゃん、シルフも呼んだよ。私の半分あげてもいいよね」
「どうぞどうぞ。十分に量はあるはずだよ。初めての試作品だから、改良点とかも言ってね。」
みんな、一言目は美味しい。『こっちが<プリン>らしいね』と、ゼリーを指さす。<プリン>の方は、ナビの予想通り、<ミルクテロン><卵トロン>で意見が分かれてた。語感と食感から<ミルクテロン>に決まるらしい。
いや、いいんだよ。
<プリン>を<ゼラチン>から作ってることになってればさ。
あそこまで無理言って、ステラや長老達に作って貰ったんだからさ。
私は<ミルクテロン>を楽しむさぁ~。
いつも読んでいただきありがとうございます。
頑張って続けたいとおもいます。
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ありがとうございます。
10月は毎日少しずつ22時更新予定。
手間な方は週末にまとめ読みして頂ければ幸いです。




