2-44.ハーブオイルを作ろう(3)
ここからハーブオイル作成の本番だ。
本番とかいいつつも、私は全然わかんないんだけどね。
漢方の一種ぐらいな感覚しかないもん。
その前にハーブティーが絶大な効果を!
ステラが外の竃で何かを煮炊きしてる。
早速お知らせだ。
「ステラ~!3人連れてきたよ。」
「あら、早かったですね。3人はどちらに?」
「ステラ様~~!」
「奴隷商人が~~!」
「あら、<隠密行動>でつれてきてもらったのですね。エストが居ないようだけど・・・。」
「エストは私がここに運んで降ろしたよ。あ。見えないか。」
<<全員の<光学迷彩>解除>>
「って、あれ?一人居ないね・・・。」
皆が辺りを見回す。なんか、随分高いところに一人浮いてる。で、降りてこれない・・・。なんであんなところに・・・。
「あ、居た。ちょっと引っ張ってくる。ステラ、その二人の重さ消してあるから捕まえておいてね。」
で、3人をステラに抱き着かせた状態で<重力遮断の膜>を解除する。
「ステラ、この子達が、エスト、イスト、ミストだと思うけどいい?」
「はい。<冒険者登録所>で無事に会えたんですか?」
「それがさぁ・・・。私が説明するより、本人達に聞いてもらってもいい?」
「ステラ様、私たち奴隷商人に売られました。」
「人気が無くなると、姿を消されて誘拐されました。」
「借金が、金貨5枚に増えたんです!」
「ステラ、分かる?」
「大変な旅だったみたいですね。それをヒカリさんが助けてくれたんですか?」
「いや、私が奴隷商人みたいだね。どうしよう。」
「私もヒカリさんの持ち物ですわ。」
「ステラがそういうこというと、誤解が増すよね?」
「だって、面白いじゃないですか。」
「で、話を進めちゃうけどさ。この子らは、どこかの貴族の子なの?豪遊してお金払えなくなってたんだけど。」
「豪遊といいますと?」
「5泊で金貨3枚とか言われてたよ。」
「あら、それは随分な金額ですね。どうされたんです?」
「私が奴隷商人に売られる前に買い取った。」
「ありがとうございます。普通の貴族の子達なんですけどね。ちょっと世間知らずかもしれませんが・・・。」
「普通?」
「あ。ヒカリさんは普通が嫌いでしたね。世間で<貴族>を名乗っても恥ずかしくないレベルでの一般的な令嬢ということでよろしいでしょうか。」
「この子ら、使っていいの?あとで、どっかの貴族から文句とかこない?」
「奴隷にしてあるなら、主はヒカリさんですよね。王様ですら文句は言えないルールです。」
「奴隷にしてないよ。売られる前に買い取ったんだってば。」
「え?でも、この子らがさっき『奴隷商人に売られた』って。」
「だから、私は奴隷商人じゃないんだってば。」
「ひょっとして、この子らの命の恩人レベルですか?奴隷になるのを未然に防いだとか、<普通は>あり得ませんよ。あ。ごめんなさい。<特別な状況>ですよ。」
「あ。もう、<普通>でいいから。気にしないで使って。で、奴隷って、そんなに簡単に死ぬの?ニーニャもステラも平気だったじゃん。」
「ニーニャも私もそれなりの魔術が使えますから、あの程度はお昼寝と一緒です。」
「レイさん達は?」
「死にそうでしたね。それもヒカリさんが助けましたが。」
「そっか・・・。奴隷って厳しいねぇ・・・。」
「あ、でも、この子ら奴隷じゃないんだよ。使えるの?」
「本人たちに聞かないと・・・。」
「私が聞くの?」
「私が代わりに聞きましょうか?」
「どう考えても、そっちのが話が上手くいく。」
「わかりました。焦げ付かないようにニカワの鍋混ぜながら聞いててください。」
「おっけ~」
なんか、変な臭いがする鍋をぐるぐるかき混ぜる。ニカワ=ゼラチンの元だもんね。がんばっちゃうさ。でステラ+3人の会話を聞くんだけど・・・。
「エスト。何故ここに居るか、順を追って話をしなさい。」
「はい。
ステラ様がエルフ族の元を出立したので、私たち3人は追いかけました。それなりに身支度も整えて、資金もあったはずなのですが、船に乗ったり、食事をしたりして、いつの間にか資金が乏しくなっていました。
あるとき、奴隷商人がステラ様に似たエルフを売買したとの情報を得ましたので、メルマの街で宿を取りながら、情報を集めました。その・・・。残りの資金が少なくなったので、住み込みで働ける<魔術師見習い募集>の所に応募をしました。今日はその募集した人と会って、住み込みで働き始める予定だったのですけど、宿泊していた宿屋の料金が不足していて・・・。」
「それが金貨3枚?随分と高価な宿に泊まったのかしら?」
「一人銀貨5枚で夕飯とお湯は別っていってました。」
「3人で小金貨1.5枚よね。20日も私を探していたとしたら、私が奴隷商人に売られた日と日数が合わないわね。」
「いえ、あの・・・。5日間宿泊してました・・・。」
「1日小金貨6枚は、何かおかしいわね。騙されてたのかしら?」
「夕ご飯にワインとお肉を付けてもらって・・・。」
「無銭飲食で奴隷にされたわけね?」
「それが、ひどいんです!金貨3枚なのに、『金貨5枚で買い取る』とか言って、借金が勝手に増えてるんです!」
「本当かしら?」
「「本当よ!エストの言ってることは本当!ステラ様信じて!」」
「ヒカリさん、世間知らずの子らに、世の中の厳しさを説明して貰ってもよろしいいでしょうか?」
「え?私が~~?だって、『次やらない保証は?』とか聞くと、黙り込んじゃったんだよ?自分たちが悪いことしてるって分かってないし、奴隷に売られることも判ってないんだよ・・・。」
「そこをなんとか、お願いします。」
「う~ん。いいよ・・・。
先ずね。この子らは借金の金貨3枚が返せない。その時点でこの国では犯罪奴隷として扱われる。裁判も何もなく、奴隷商人に売られることが確定してたの。宿屋の女将は奴隷商人を呼んだり、その価格交渉をして値切られたりすることが嫌だったのね。
例えば、女将から金貨3枚で買い上げて、奴隷商人は金貨15枚で売るかもしれない。だって、この子らは『借金の額は金貨3枚です!』とか奴隷商人の前で叫ぶでしょ?そうすると、奴隷商人は、なんだかんだで3枚以上で買おうとしないわけ。
一方で、身請けする私の立場からすると、奴隷商人に売られた後では、金貨10枚どころか、20枚でも危ういような値段を吹っ掛けられる訳。『この子らは服も付いてるのでお値打ちでしょ?』とかね。だって、3人裸で引き受けても、別に服代が一人金貨5枚くらいはかかっちゃうからね。
私としては、奴隷商人に売られたあとだと、奴隷の印が付いて消せなくなるし、値段も吹っ掛けられるなら、宿屋の女将の言い値で買うことにしたわけ。借金の金貨3枚+迷惑料で2枚を上乗せしてね。
一応、その最終結論になる前に、「奴隷として働くか、私の言うことを聞くかどっちがいい?」って聞いたんだけどさ。ユッカちゃんとシルフに助けてあげるように言われて、<何の条件も無し>で、お金払ったよ。
これでいいかな?」
「ありがとうございます。」
「エスト、イスト、ミスト!貴方達に奴隷の印は付いてますか?」
「「「ついてません」」」
「誰のおかげで、奴隷にならずに済んだのですか?」
「そこの奴隷商人さん」
「お~~い~~~!ステラ、怒っていい?」
「ヒカリさん、もう、おこってますw
こちらの方は奴隷商人ではありませんよ。ヒカリさんです。
なぜ、奴隷商人でも無い人が、貴方達を買い取ったか考えましたか?」
「転売」
「性奴隷」
「鉱毒のでる鉱山で働かす」
「ステラ、なんか鍋の面倒見れないぐらい、イライラしてきたよ。」
「ヒカリさん、これから偉くなって、貴族と付き合う機会が増えると思います。多くの貴族は世の中の仕組みを知りません。この子らは悪意無く接してるのでまだマシです。この子らを落としてみませんか?」
「ステラが私にそんなことを期待しちゃう?」
「皆が期待してますよ。良い機会なのでチャレンジしてください。」
「私は宮廷魔術師になって、自由な研究したいんだけど・・・。」
「そんなのくだらないことやめて、この世界の真理を解き明かすぐらいのことしてください。」
「私がそんなことするほど、お金も力も無いの判ってるでしょ。」
「確かに今はできないかもしれません。でも、私が支えます。皆が支えます。ヒカリさんは存分に力を発揮してください。そのためには外交力も必要になってきますよ。」
「ぐぅ。
あ、ぐぅの音ってね、息もできないぐらい苦しいときに、なんかそんな音がでるんだって。知ってた?」
「私はヒカリさんにゆっくり深呼吸して頂いて、どっしり構えてもらいたいですよ。」
「そこは流さないでネタを拾ってくれるシーンだよ。分かったよ。自分の成長を信じてチャレンジしてみるよ。」
「ありがとうございます。さぁ、どうぞ。」
「エスト、イスト、ミストの3人のエルフさん達、朝の宿屋の続きをしよう。そういえば、朝ご飯がまだだったよね。ごはんを食べながらお話しよう。ユッカちゃんとシルフもご飯にする?」
「僕はヒカリを信じてるから、どっかその辺で遊んでるよ。」
「じゃ、私もシルフと遊ぶ~。おねえちゃん、がんばって。試練だよ。」
「分かった。がんばる。ステラ、そういうことで3人を借りるね。」
「良い結果をお待ちしてますわ」
ーーーー
「ゴードン、悪いけど4人分の朝ごはん作ってもらえる?」
「おや、ヒカリさん。こんな時間に珍しいですね。パンと肉だけでいいですか?」
「私はいいんだけど、この子ら貴族の子女らしいんだよね。どんなの食べるんだろ?」
「ヒカリさんの食事は、そこらの貴族では出されないレベルなんですけどね・・・。」
「そうなの?じゃ、パン、チーズ、肉3種類、あとタコを適当に調理してだして。飲み物は牛乳。なければ適当に。」
「分かりました。直ぐに順番に出すので食堂でお待ちください。」
「じゃぁ、ご飯食べながらお話しようか。貴方達はこれから何をしたい?」
「ステラ様の付き人になりたいです」
「ステラ様と一緒に旅に出たいです」
「ステラ様と一緒に暮らしたいです」
「そっか。でもステラは奴隷だよ?」
「私たちが買い取ります。」
「売ってくれなかったら?」
「売ってくれるように頼みます。」
「それでも断られたら?」
「私たちにとって、ステラ様がどんなに大切な人か一生懸命説明して、説得します。」
「貴方達の思いより、ステラに強い思いを感じてる人だったら、その人からステラを奪うことになるけどいいのかな?」
「私たちより、強い思いを持ってる人なんていません!」
「その思いをどうやって示すことができる?」
「ステラ様の代わりに、私が奴隷になります。そうすれば、残りのイストとミストがステラ様と一緒に暮らせます。」
「もし、それが出来るとしたら、エストにステラの代わりが務まる程の価値があることを示せないとダメだよね。」
「そ、それは・・・。」
「私も奴隷になります。」
「わ、私も奴隷になります。3人いれば、ステラ様の足元には及びませんが、それなりの価値があるはずです」
「う~ん。ちょっと休憩。ご飯たべよ。あの宿屋より美味しいと思うよ。」
ふわふわパン。水牛から採ったらしいチーズ。ローストビーフなど肉3種。<タコ丸>まででてきた。
私は慣れてるから、いつもの感覚でたべるんだけどね。<普通の貴族>はどんな感想になるのかな・・・?
「どう?美味しい?」
「あ、あの・・・。」
「これはどこで買えるのですか」
「毎日食べられたら、とても幸せです・・・。」
「まず、一つ目ね。
このパンは他所に行っても買えないよ。バイロン侯爵っていうエライ領主さんが製造権と販売権に制限掛けてるからね。個人で作るしかない。他の物はここの草原や森、海で採れたものを調理して作ってもらってる。
次に、二つ目ね。
ここでは管理人や奴隷の区別なく、同じ食事を提供している。仕事内容は人によって差があるし、出かけた先では、そこの食事を摂ってもらうしかないけどね。
最後に、
今はステラ1人分の食事を用意すればいいし、ステラも喜んでくれている。
だけど、ステラを奴隷から解放して追い出した挙句、今後は貴方達3人へ、この食事を提供しろってことを希望してるのかな?」
「そ、そんな酷いこと、私は言ってません!」
「イスト、ミストも同じ意見?」
「そんなつもりで、身代わりの奴隷になると言った訳では無いですが、結果としてステラ様を追い出すことになってしまいそうです」
「ステラ様の意思は私が決めることでは無いと気が付きました。私は可能であれば、ここで働いてみたいです。」
「エスト、言い張るのは簡単だけど、冷静に考えてみてくれる?」
「私は・・・。私は・・・ステラ様がとっても大切です。でも、それは私がステラ様を大切なだけであって、ステラ様にとって大切な物が別にあるはずです。それが何かを聞いてみたいのですが・・・。」
ここで最後にハーブティーが出てきた。いいタイミングだね。会話を読んでの給仕だったら凄いよ。
「はい。お茶をどうぞ。多分、うちの森で採れたハーブで作ったんだと思うよ。」
「これは、どなたの調合でしょうか?」
「長老だと思うよ。昨日一緒にハーブ取りに行ったから。」
「お弟子さんとか、お手伝いをされる人は・・・?」
「今のところ私だけ。お手伝いさんを探してるんだけどね。住み込みで働ける<魔術師見習い>とか、応募してたんだけどさ、なかなかいい出会いが無くてね。」
「あ、あの・・・。なんで、今朝あの宿屋に居たのですか?」
「貴方達3人を探していたからだよ。」
「あの宿屋で美味しくないご飯を召し上がってましたよね?」
「絶対に譲れない大事なことだから、最優先で行動しただけだよ。」
「なんで・・・。ステラ様が直接迎えに来てくださってれば、このような誤解は・・・。」
「ステラは奴隷だから、冒険者登録ができなかったんだよ。だから冒険者登録所で依頼したり、契約報酬を支払ったりできないんだよね。ステラにとって大事な人は、私にとっても大事な仲間だから、私が代わりに行ったよ。私なら飛んでいけるしね。」
「でも、ステラ様は貴方の奴隷なんですよね・・・。」
「私にとって、とても大切な仲間だよ。そして、ステラ自身も私の名前が入った奴隷の印を解除しないで欲しいと望んでいるよ。だから私の奴隷のままだ。」
「すみません。今更なんですが、お名前を伺っても良いですか?」
「ヒカリだよ。貴方達はエスト、イスト、ミストでいいの?」
「あの、ええと・・・。はい。ただのエスト、イスト、ミストです。」
「そう。じゃ、もう一回同じ質問をするよ。
<貴方達はこれから何をしたい?>」
もう、長い説明は必要なかった。
ステラと長老に3人を案内してお終い。
住むところはステラと相談してもらうことにした。
ハーブ関係のことはこれで片付いたね。
さて、プリンを作りたいんだよね~
ニカワの煮出しが終われば、そこからゼラチンをゲットだぜ!って感じ。
これってさ、ゼリーとかババロアとか牛乳寒天とかも、作りたい放題なんだよね。関所や娼館でお茶と一緒にだせればいいんだけどさ。
先ずは本筋の<トモコの毛皮>を再現して、それと並行してってことだね。
いつも読んでいただきありがとうございます。
頑張って続けたいとおもいます。
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ありがとうございます。
10月は毎日少しずつ22時更新予定。
手間な方は週末にまとめ読みして頂ければ幸いです。




