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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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2-39.利権

現代日本の耕運機は無理だけど、

水牛を使って耕すのは上手く行きそうらしい。

ベイスリーさんの人材も期待できそう。

利権の問題があるんだって・・・。

「みんな、おつかれ~。今日は私も疲れたよ。なんかいいことあった?」


「私からな!いいことあったぞ。牛で耕すの上手く行くぞ。牛4頭で一度に横幅10歩分を耕せる。人が乗って、牛を操作する席も作った。細かい目にも後からできるように、鋤の間隔や深さも変えられるようにしたぞ。牛の歩く速度で耕せるのと同じだぞ。」

「それはすごいね。横幅も広いし。耕すのが捗るね。」


「あとな。娼館の方も一枚岩から好きに石を切り出せるから、今日でほとんど終わりらしいぞ。小さな石を積み上げたり、模様を合わせて切り出したり、今度はそれをつなぎ合わせるって作業が無いのはいいらしい、細かな装飾、内装とかはまだだ。どちらかというと、レイの担当だと思っている。明日からは、水車と水路に人を回せるようになる。」


「それもすごいね。レイとイワノフは何か言ってた?」

「レイが『前倒しできるなら、早く営業の準備にかかりたい。関所の手伝い人員を返す準備も考えて欲しい』って言ってるらしいぞ」

「そっか。また人か・・・。」


「ヒカリさん、それについては、朗報があります。ベイスリーさんの家族が明日にも来ます。息子の2家族も到着するので、労働人口は10人以上増加します。子供は5歳以上になったら簡単な作業員として働けます。」

「農業ができなくても、関所の手伝いならしてもらえるね。ベイスリーさんにお礼を言っておいて。あと、関所で働く条件での移住できそうな人が居るかも聞いてくれるかな。ちょっと人手募集の見込みが甘かったな・・・。」

「分りました。伝えておきます。」


「他のみんなは?」

「続いてこのまま私が報告します。館の中の竈は時間がかかりますが、屋外共同使用できる竈は6くちが明日より使えるそうです。ベイスリーさんの人材の件は先ほどの通りです。冒険者ギルドや奴隷商人の方は条件を変えていないため、今のところ追加の情報は入っていません。」


「他には?」

「ステラさんとユッカちゃんと俺で牛囲いの柵と、ニーニャの装置の取り付け補助をしたよ。牛を座りながら操って耕すのは圧倒的に速く作業ができて、とても楽だね。人さえいれば、どんどん農地と作物の育成が行えるよ。」


「そっか~。なんか、みんなのおかげで、随分と進んできたね~

他に何か、みんなと共有したいこととか、足りないこと、問題点とかある?」


「娼館の運営についてですが、管理者、人員、建物、内装は準備ができたと思います。ヒカリさんが気にされていた衛生と健康に関しての魔術師が必要になるのですが、そこがまだできていません。水路が未完成なことについては、川まで水を汲みにいって対応できるそうです。」


「風、清浄、体調不良時の回復の3つだよね。風はシルフ、清浄は長老ができそうなんだよ。後で相談してみる。体調不良はそういう人が出てからでもいいかな?妊娠しちゃうとこまるけど、その辺りの対応はレイができるってことでいいか、確認しておいてね。」

「わかりました」


「ねえさん、娼館は運営許可が必要なはずなんだ。エスティア王国から運営許可の権利は貰ってるかい?」


「今更何をいってんの。そんなの貰ってないよ。男爵はどうやってたのさ?」

「これまでの動きから考えると、男爵はメルマに別荘を抱えていて、そこでレイさん達に娼婦としての活動をさせていたんじゃないかな。指定や特別の接待がないときは奴隷小屋に閉じ込めていたとか。」


「メルマならエスティア王国の管轄外であることを利用してたってことね。頭いいね。許可は誰の承認が必要?」

「王国の担当大臣だね。王子や王様の口添えでも大丈夫な場合があるよ。」

「フウマ、王子に視察にきてもらって。あと、一応担当大臣が誰かも確認しておいて、その大臣が何で動かせそうかも。」

「往復と情報収集で3日ぐらいかかる。いいかな?」


「フウマ、<念話>は?」

「まだだよ。」

「フウマがユッカちゃんと二人で行くと不味いことある?」

「本人が直接申請した方が心象はいいよ。面倒とか関係なく、そういうものだと思ってくれるかな。」


「わかった。やっぱり、王子か担当大臣に視察に来てもらおう。そこで問題がなければ、私が申請して、許可をもらいにいく方向で。」


「姉さん、ごめん。

ハッキリ言うよ。男爵ごとき、利権の許諾権をもったエライ貴族がお願いされて出向くことは無いんだ。来てもらうことすら、たくさんのお土産が必要。今度は利益を生む案件に許可を与えるのであれば、更なる手土産を渡して願いをしないといけない。」


「モリス、そういうもの?」

「フウマさんの言う通りです。元ジャガ男爵も苦労していました。メルマでの娼館運営も、金策のためと考えられます。」


「そっか。フウマ、モリスありがとう。私は全然分かってなかったよ。ってことは、レナードさんがパンやクッキーの製造許可をくれたことって、やっぱりトモコさんやユッカちゃんの影響が大きいってことだし、その技術を公開しないってのもレナードさんにとっての利権確保として重要なんだね。」


「ヒカリさんは、二つも権利を持っておられるのですか?」

「ふわふわパンの製造・販売権。それとクッキーの製造権。ただし、販売権は無しだよ。個人で楽しむなら問題ないことにしてもらってる。」

「お母さんは、毛皮の製造・販売権と、お肉の製造権を持ってたよ。」


「製造と販売は別の権利になりますので、二人で6個も権利をお持ちということでしょうか?」

「トモコさんの毛皮の方は知らないけど、お肉は自動的に許可されていたね。ユッカちゃんが引き継いでるのかも。そういえば、狩りをしていい権利も貰ってるよね。これはユッカちゃんと私がだけど。」


「ねえさん、それって・・・。」

「トモコさんが死んじゃったことをレナードさんに伝えに行ったら、いろいろと面倒を見てくれたんだよ。」

「バイロン卿とお知り合いでしたか。娼館の方も申請し易いかもしれまん。申請と許可は別の問題になりますが・・・。」


「レナードさんって、そんなに偉いの?」

「王子が一番頼りにしてる。現国王からの信頼も厚い。辺境を統治できるだけの武力も所持しているしね。この国では公爵に次ぐ実力者だよ。」


「そっか。領主の庇護下にあれば、全て領主の物になるもんね。隣の新興勢力が力を持つことは面白くないか。とすると、領地を急拡大したことも問題になってくるね・・・。」

「姉さんとレナードさんの関係がどういうものか分からないけど、領民で無くなったら、対等な立場としての見返りを要求してくる可能性はあるよ。」


「ニーニャ、あの<こん棒>って価値ある?」

「なんだ。私にくれるなら大事にするぞ。<神器>ではないが、魔物が製造した武器故に、<付帯効果>があって、非常にレアな魔道具だぞ。」


「ステラ、この<トモコの毛皮>の品質がどのレベルか分かる?」

「正直初めてみました。動物自体の毛並みも良いですが、加工の仕方を私は見たことがありません。」


「モリスとフウマ、<焼きレンガ>の粘土採取の洞窟の魔物討伐、焼きレンガの製造技術、焼きレンガの販売権。これの価値は?」

「私は<焼きレンガ>がどういったものか分かりません。普通の日干し煉瓦と違うので?」

「日干し煉瓦って、竈とか熱を使うところだと、どんどんボロボロになって、窯や竈を定期的に作り直しになるでしょ?今回の屋外に作った石窯だと煙突とか組めなくて、屋内設置が難しい。だから耐熱性の高い、半永久的に壊れない竈や窯を作ることができるんだよ。」


「ヒカリ、それはドワーフの製錬炉でも使えるかもしれんぞ。鉄の融点を超える窯がなくて、鉄から鋼を精錬するのに皆苦労してるんだぞ。精錬スキル持ちもいるが、魔術ランクが5以上必要だからな。」


「それぞれの専門知識を持ってるのはありがたい話だね。

で、関所の小さな領地を持つ男爵が、バイロン卿に

<こん棒>、<トモコの毛皮の製造・販売権>、<焼きレンガの製造・販売権>を譲渡したら、<領地の拡張>と<農民の移住>と<娼館の経営権>を許してもらえると思う?」


「ヒカリさん、危険すぎます!やめてください!」

「モリス、急にどうしたの?」

「以前にフウマさんも言っていましたが、ヒカリさんは男爵の器を遥かに凌駕しています。この国すら超えることも可能でしょう。今のヒカリさんが、バイロン卿に、『半分あげるから半分頂戴』という恭順の意を示したとしても、相手は将来のリスクを懸念します。」


「フウマはどう思う?」

「姉さんがこの国を救った切り札を使って、さらに、この先も国を支える計画を王子に先に示せば、バイロン卿からのリスクは無くなるだろうね。王子とバイロン卿を押さえておけば、この国では問題にならないよ。」


「それって、王子を救った話?」

「それしかないよ」

「あれ、レナードさんに頼まれたんだよ。『王子を救ってくれ』って。

レナードさんに結果を知らせてないんだけど、結果として王子は助かってるからいいかな~って。あと、男爵の件があったから口止めされててさ。」

「王子も止めてるからね。男爵の件は別件で処刑されたことになってる」


「モリス、この辺の切り札じゃダメかな?やっぱ、私が殺されちゃう?」

「男爵が代わった理由が今判りました。先ほどヒカリさんが列挙された宝物や利権を譲渡せずとも、娼館の経営ぐらいは許可が出そうですが・・・。

ただ、領地を上手く運営していることの報告とお礼をするというのは、やはり与えた側からしてもみても嬉しいし、安心感もあるでしょう。これは利権とは関係なく、親が子を見守るのに似た感覚になります。」


「よし、二人を娼館の視察目的で接待しよう。

フウマ、一週間後を目途に二人でお忍びで来てもらえるように調整して。館がちっちゃいから、大掛かりな視察は無理って言っておいてね。

ニーニャ、この食堂から地下通路か何かを設けて、娼館にこっそりいけるようにしておいて。あと、関所の休憩室の隠し部屋からもいけるようにしておいて。表玄関を使いたくない人が多いと思うんだ。

モリス、二人を接待できるレベルの食材とメニューを準備。冷蔵庫を使っていいから、必要な食材を調達・確保して。それと、最低限の従者が泊まれる部屋も整備して、このことをレイにも伝えて、計画に盛り込んでもらって。

ステラは<トモコさんの毛皮>の技術に必要な液体を再現できるように。森を探索して、<石灰>とか<タンニン>とか集めるからよろしく。

海・森で必要なものがあれば、私やユッカちゃんと取ってくる。

みんな、いそがしくなるけどいいかな?」


「嬉しい限りです」

「私は問題ないぞ」

「姉さんのいつものことだから大丈夫。安心して」

「トモコさんの技術にたどりけるか、ちょっと心配ですわ」

「タコ丸つくる?ホットミースつくる?」


うん。大丈夫いこう!

いつも読んでいただきありがとうございます。

頑張って続けたいとおもいます。

また、ブックマークや評価を頂けることはとても励みになります。

ありがとうございます。

10月は毎日少しずつ22時更新予定。

手間な方は週末にまとめ読みして頂ければ幸いです。

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