2-21.海(3)
エイサンの言う島に向かう。
これ、島?崖?壁?確かに飛べないと上がれない。
エイサンに引き連れられて、沖合の方へ飛んでいく。こんな大きな船が飛ぶのは爽快だね。で、海水がジャバジャバ船底からこぼれていく。海水まで含めて膜を張ったつもりはないから、海水が抜けてくれれば、あとで船内探索するのが楽でいいね。
で、エイサンの動きが止まる。まだ沖合2-3kmのところなんだけどね、壁があるの。柱ともいうのかね。とにかくこのままじゃ進めない。上を見上げると数百メートルはありそうな壁。
「エイサン、ひょっとして、この上まで船を上げるの?」
「そうだ」
「みんな、落とさないと思うけど、落とすといろいろ終わるよ。今までよりさらに気を付けて運んでね。こういった壁の傍は気流の乱れも起こり易いから、突風にも注意してね。」
「「「はい」」」
徐々に、徐々に高度を上げていく。ギアナ高地のエンジェルフォールが1000mくらいあるんだっけ。あれよりは低いんだろうね。でも、これ、普通には登れないよ。船が横付けできる場所もないし。わざわざ海から飛んできて、この崖を登ろうとする人もいないでしょ。エイサンはなんでこんなの知ってるんだ。魔術レベルも相当高いはずだし。ファンタジーな人が集まってることにしておこう。そうしよう。
崖の頂上というか、島の上というか、とにかく上部がやっと見えてきたよ。なんか、普通の島に見えるんだよね。海岸が無いだけで。ただ、広さは結構ありそう。外周で数㎞以上ありそう。これだけあれば、この船を置いても問題ない広さだね。
「エイサン、この船、どこに置けばいい?水場の近くがいいんだけど。」
「この奥に森ある。そこに泉ある。」
エイサンの誘導に従って、そーーっと、そーーっと船を下していく。たださ?船ってやっぱり底は竜骨の部分でさ。平らにおけるようにできてないんだよね。このまま置いたら倒れちゃうな・・・。
「エイサン、この船をこのまま置いたら横倒しになるけど、何かいい方法ない?」
「森の木。挟む」
なんか、ぐいぐいと船を森の方へ引っ張っていくよ。ガサガサと木の間に突っ込ませて船を倒れないように固定する。強引だけどこういうの嫌いじゃないよ。
「ふ~~~。みんなお疲れ。この高さじゃ、船から人が降りられないから、こっからは一人ずつ順番に降ろしてあげて、泉のそばに寝かせよう。それが終わったら私たちも休憩だ。」
どうにかこうにか船から30人ぐらいを泉のそばに降ろし終わって、4人で一緒に休憩をする。看病始めるまえに、こっちが倒れちゃいけないからね。まして、魔力切れなんて起こそうものならいろいろアウトだ。
それにしても、関所以上にやること満載だね。
・奴隷の面倒をみる
・死者の弔い
・船倉の探索と資源確認
あ。この船もらっちゃって、修理ができるものならこれ改造した方が楽じゃないかな。なんか、難破っていうより、座礁に乗り上げて動けなくなっただけっぽいし。でも、こんなに大きいと乗組員とか操船とか別の人材が必要で、どこに行って、何を交易するかってのも、私が決めないといけないんだろうね。
大きな船は、やばいね。清掃と資源回収が終わったら、本体はしばらく放置だ。今はこの船を運用する実力がない。きっと冒険に出たりしたら楽しいんだろうけど、領地の安定化と自給率アップが先だ。
クッキーや、お肉をユッカちゃんの鞄から取り出して食べ始める。他の3人は奴隷さんたちのことが気になるみたいでそわそわしてる。だけど、ちゃんと何するか、どこまで手助けするか決めてから行動しないと、場当たり的な局所最適化は後で遠回りすることになるからね。
「エイサン、ここは誰の領地?さっきの海人さんとかの場所?」
「誰も持たない。海神と海人は知ってる。使わない。」
「そうなら。この船置をここにおいても大丈夫かな。あと、奴隷さん達でここに残りたい人がいたら、ここで自由に暮らして良い?」
「船大丈夫。嵐来て壊れる、知らない。人住む、大丈夫。食料知らない。」
「そっか、ありがとう。」
「船の本体はここに残します。生存者はうちの領地で開拓とか農業の人員として確保します。船内の死者はここに弔います。船内の清掃と資源を確認したら、ここから撤収します。奴隷さん達30人の運搬は本人たちの意思を確認してから移住希望者だけを運搬します。
何か質問ある?」
「おねえちゃん、あの人たちにクッキー分けていい?」
「いいよ。今はここにあるので全部だよ。」
「うん。ありがとう。」
「ヒカリさん、あの生き残った人たちの治療を許可頂けますか?」
「ステラが無理しない範囲でお願い。どんな治療ができるのか、私もあとで見たいかな。」
「許可に感謝します。帰還時の魔力を確保しつつ、私の最善を尽くします。見学していただくほどの物ではないと思いますが、ご自由にご覧下さい。」
「ステラ、もっと楽に構えて。今までのステラのように話ししてくれていいよ。私が会話するのが面倒になる。」
「わかりました。気を付けます」
「ヒカリ、一人、助ける。」
「どうぞ。」
「手伝う。」
「なにを?」
「一緒、来る」
「はい。」
なんか、呼ばれた。大事な人なのか、なんなのか。
ーーーー
なんかね。おじいちゃん。長老ってかんじ。
脇にね二人ぐらいの女の人がいるの。
おじいちゃん、その年で元気ですこと!
なんてね。
「ヒカリ、この人、助ける」
「元気そうだよ?」
「みろ。」
私は医者じゃないんだよね。
ユッカちゃんとかステラさんのがいいと思うんだよね。
なんで私が呼ばれたんだか。
<<ナビ、この老人をスキャンするよ>>
<<どのような?>>
<<まず、肺炎の患者と同じで、血行と異常の有無確認>>
<<了解。全身の血流スキャン結果を右目へ投影>>
<<なんか、異常点、疑問点ある?>>
<<無し>>
<<次、リンパ系スキャン>>
<<造影できないため、エーテルの流れで代替。右目へ投影>>
<<おかしなところは?>>
<<無し>>
<<次、神経系スキャン>>
<<X線等ではスキャンできないため、エーテルの流れでスキャン>>
<<おかしな点、神経瘤とか、何かない?>>
<<無し>>
<<CTスキャンってできる?してもらっても、私は理解できないけど>>
<<CTスキャン及び、標準的な日本人の健康体と比較します>>
<<何かある?>>
<<頭部に若干の縮退。加齢によるものと思われます>>
<<MRIやって。結果も比較して。私は無理だから。>>
<<結果に異常なし>>
無理じゃん。
私は、わからんって、最初に言った。
言ってないけど思った。
言葉通じるかわからんけど、聞いてみるか。
「おじいちゃん、どこか痛いところある?」
「・・・。」
「おじいちゃん、何か食べたいものある?」
「クッキー」
はぁ???
<<ナビ、このじいちゃんと、エイサンのエーテル使用権限ランク確認>>
<<??:ランク6、エイサン:ランク6>>
<<この人たち、エーテルで通話できたりしてる?>>
<<私とヒカリと同じ方式とは限りませんが、エーテルによるコミュニケーションは可能なランクです>>
<<ありがとう>>
「おじいちゃん、ちょっとまってね。分けて貰ってくるから」
ーーー
「ユッカちゃん、クッキー残ってる?」
「これが最後。残り半分だよ」
「それ、分けてもらってもいいかな・・・。」
「おねえちゃんが食べるの?」
「ううん。おじいちゃんが食べたいんだって。」
「代わりに、他の食料をみんなに分けてもいい?」
「うん。お肉類しか残ってないけど、それでよければ」
「どうぞ。」
最後の一かけらゲットだ。
それもユッカちゃんからゲットだよ!
なんか、泣きそうだ・・・。
いつも読んでいただきありがとうございます。
頑張って続けたいとおもいます。
9月末までは日々24時更新です。




