2-16.飛行訓練
陣取りゲームする前に大きな問題がでてきたよ。
道が無いから飛んで移動して結界を設置するんだって。
まだ、習ってないよ。
「姉さんは飛べる?」
「え、なんで?」
「これから未開拓の地へ、領地マーカーを結界として張りに行くわけだけど、飛べないとなると、街道のルートを囲ったり、未開墾の肥沃土を最初に囲って確保ってできないよね。」
「そうだね。」
「で、飛べる?」
「飛べない。前に飛ばされて失敗した。」
「どうやって、飛ぼうとした?」
「ふわふわ浮いたら、風で飛ばされた。」
「飛ぼうとしてないでしょ!姉さん、風の魔術使える?」
「風を呼ぶことはできるよ。」
「風を呼ぶのではなくて、出す方です。」
「風って、空気の流れだから人の体から出るものじゃないよ」
「いや、手を向けたら、そっちへ風って出せるじゃないですか。」
「掌を向けて、風が出る訳じゃないでしょ。温めるか、空気を押さないと空気は動かないよ。」
「空気が何かよくわからないですが、風に力を与えることを<風の魔術>って俺は言ってます。」
「空気の説明はこのまえしたじゃん。口から取り込んでるって。そこに20%ぐらい酸素が入ってるって。」
「それは呼吸の話で、今は風の話をしてるんだよ。」
「どうすれば分かってくれるの?」
「今は姉さんが空を飛ぶために、風の力を借りる魔術の説明をしてるんだよね。」
「じゃあ、自分で飛べる方法を考えてみるから、先に街道のルートを考えながらマーカーを置いてってよ。あとで合流するから。」
「後からって、マーカーどこに置いたかわかるの?」
「マーカーを探索して、最後の方に行けばフウマがいるんだよね?」
「分かった。馬車が楽にすれ違えるぐらいの道の幅で、1000歩ぐらいの距離ごとに領地マーカを置きながら進んでいくよ。」
「うん。なるべく早く追いつくから。」
ーーーー
領地拡張の話の前に飛行魔術を一人で特訓することになったよ。
さて、浮遊と飛行が違うのだと思っていたけど、
ひょっとして、ユッカちゃんも浮遊魔術は風力による飛行移動を僅かに使ってただけなんじゃないかな。私はそれを勘違いして重力遮断の魔術を使っていると思って、今に至ると・・・。
と、すると・・・・。
根本的に飛行とか浮遊について考え直さなければいけないね。
(1)アイアンマンみたいにジェット噴射のような推進力をもつ
(2)鳥の翼のように、翼と羽を複雑に動かして揚力を得る
(3)タケコプターを具現化する
(4)気球とかパラグライダーみたいな風任せ
どう考えても(1)しかないし、フウマはそれを<風の力>って言ってるわけだよね。風は空気の流れなんだから、空気を噴射する必要があって、そのためには空気を取り込むか、体の流れにそって表面を滑らせないといけない。
空気を噴射しないで、噴き上げてもらう方法もあるかもしれないけれど、今度は進行方向のバランスとか速度の制御がとっても難しそうだね。
それにしてもさ。魚のエラ呼吸じゃないんだから、空気を体内に取り込んで、手から噴射とかナンセンス極まりない。周りから空気を薄く流れるように呼び集めて、掌とか足の裏に集中させて排出させる仕組みがあれば、相対的に揚力は得られそう。ベルヌーイの定理とか言うんだっけ。
ただ、これ、空気で仮に50kgのものを持ち上げようとしたら、どんだけの噴射量になるんだろ。
<<ナビ、空気の比重と50kgに釣り合う体積を計算して。>>
<<地球の空気は1.293kg/m^3です。50kgに釣り合う体積は38.7m^3です。>>
てことは、大きな羽も無く、揚力の恩恵をほとんど得られないとしたら、38.7m^3より大きな風を常に排出しつづけないと浮力に十分な力が得られないってことだね。それにしても、2mx2mx9mより大きな体積を手と足から出せと。そんなことしたら風で服が破けちゃうって。
いやいやいや・・・・。
そもそも体積求めても、それって浮力の話であって、
噴射しても、浮力にも推進力にもならないよね。一度どこかで推進力を得て、その後に体のどこかで、ベルヌーイの定理から求まる揚力が発生するような流体力学を考えないと話が合わない。
あ。いいこと思いついた。
重力遮断して、体重を制御しやすい重さまで減らして、やんわりとした空気を噴出なり、下から吹き上げてもらうなりして進めばいいじゃん。宇宙飛行士がジェットガンみたいのを使って、方向とか推進速度変えるイメージ。ただし、ジェットガンに相当する気体を背負ってないから、外部から押し上げてもらわないとね。ベルヌーイの定理みたな揚力に基づく浮力は一度バランス崩したり、速度低下を起こすと、私みたいな素人には地面激突の危険性があってあぶない。
よし、<重力カットと風の吹き上げ>これでいこう!
<<エーテルさん、重力80%カットの膜で私を覆って>>
<<<ふわわ~~ん>>>
<<このまま、掌と足元に向けて、少しずつ風を流して>>
<<<ひゅ、ひゅ、ひゅ>>>
うん、風の流れを感じる。
<<風の流れをもう少し強く>>
<<ひゅ~ひゅ~ひゅ~>>
あ。浮き始めた。推進力が働いているってことだから、このまま上手くやればどんどん浮き上がるね。これさ、進むには方向を決めるんだけど、左右のバランスが狂ったら、渦巻きのように回転しまくっちゃうね。掌の向きとか、角度をうまく制御して、重力の遮断量と風の流れの強さをそのときの気象条件に合わせて作りこまないとね。
ここのバランスは慣れていくしかないかな。上手くいったら、その都度、その条件を登録して、後から気象条件や速度に応じてナビ経由で条件を呼び出せるようにしよう。
よし!ここまでできたら、マーカーを探索してフウマに追いつこう。
いつも読んでいただきありがとうございます。
頑張って続けたいとおもいます。




