2-13.斧
夕方やっと体が動くようになった。
明日に皆で森の探索をしたかったから、
準備をしようと食堂にいったんだけどね……。
ふぅ~。
やっと体がうごくようになった。
ちょっと、食事とかできないかな。
フウマ、ユッカちゃんと3人で食堂まで降りて行ってみると……。
「ヒカリ、木材が無いから冷蔵庫が完成しない」
「ヒカリさん、狩りをしてきたのに、調理場が狭いし、道具もないわ」
「二人ともお疲れ様です。そして協力ありがとうございます。
それで、ニーニャさんの言う木材とは、森の木ではダメですか?」
「生木を乾燥させる話もあるが、先ずは木を切る斧が必要だろう?」
「関所の誰かから、借りられませんでしたか?」
「無いそうだ」
なんか、ニーニャさんは木材より斧が無いので作業が滞っていることに不満があるみたいだね。斧って言ったら、あれしかないよ。
「フウマ、あの斧貸してもいい?」
「ニーニャが持ち逃げしなければ」
「ニーニャさん、終わったら返してくれるよね?」
「斧ぐらい作れる。この周りに鉄がなかっただけだろ。」
「いや、ちょっと変わった斧でして……」
「武具は常に見て、触れて育った。人族の斧なんぞ、持ち逃げなどせん」
「フウマ、部屋から持ってきてあげて」
「ステラさんは、何を狩ってきたんですか?」
「イノシシよ」
「ユッカちゃん、ステラさんの解体を手伝ってあげれる?
鞄の中で使いたい物があったら言ってね。あと、関所の中の物で使えそうなものは勝手に持って行って使っていいから。
こっちはニーニャさん達と冷蔵庫を作って準備しおくよ」
「わかった~。ステラさん、行こう!」
ここで一旦、ステラとユッカちゃんとはお別れ。
ニーニャ、フウマ私で冷蔵庫を作る準備だね。
ーーーー
フウマが戻ってきた。
で、物干しざおみたいな棒に、布として干してあったフウマの服を外していくと……。
「お~~!お~~~!あ~~~!あった~~~!」
ニーニャがビックリするような大声で雄たけびを上げる。
「どうしました?」
「これ~~!これ~~!」
「拾いました」
「く、くれ~」
「いや、さっき、『斧なんか見慣れてる』って」
「なんでもする。奴隷でいい。だからくれ」
「ひょっとして、そうやって奴隷商人に騙されませんでした?」
「そ、そんなことは!あ……。ま…… ……。な……」
「私たちに協力し続けてくれるなら、その間ずっと、自由に使っていいですよ。つまらなくて、出ていきたくなったら返してくださいね」
「する~!よし、冷蔵庫な。一緒に来い!」
なんか、ニーニャの斧を担ぐ様がカッコいい。
背が低いから引きずっちゃうかとおもったけど、鉞担いだ金太郎みたいなかんじ。ニーニャは銀色のサラサラした軽くウエーブがかかった髪と青い瞳で、日本のおかっぱの髪型の男の子風じゃないけどね。
3人で館の裏の森の前に到着。
開拓してないから、入り口とか小道とかない。藪に木が適当に生えてるだけ。
こんな所に街道とか作れないよなぁ……。
と、将来の暗澹たる思いに悩んでいると、ニーニャは斧で軽く灌木と草を器用に薙ぎ払って、道なき森の中をどんどん進む。
すると、一本の大木の前に立ち止まって、ニーニャから声が掛かった。
「みてろ?」
この木は太過ぎでしょ。私だと2人掛かりで抱えられるぐらいの幹の太さ。
胴回りが4mぐらいってことだね。大型のチェーンソー使っても一時間以上かかりそう。
<<<カット>>>
あれ、エーテルさんの音が聞こえた?
ニーニャが斧を振り抜くと、大木が倒れ始めた。
いや、あり得ないよね。
木の繊維を切断するってすごい大変なことでさ。こんな太いの、刃渡りの何倍も木の方が太いでしょ。少しずつ木を削るように幹へ刃を侵入させてないと、切れる訳が無い。
日本刀の試し切りだって、刃渡りより小さいもの切ってるし。
また、エーテルさんか。また、ファンタジーか。
ファンタジーと科学の差に思い悩んでいると、満足げなニーニャがこちらを振り返って声を掛けてきた。
「どう?みた?」
「みた。よくわかんなかった」
「明日またみせる。これ使って、冷蔵庫完成させるぞ」
黙々とニーニャが枝を払ったり、適当な長さで切断したり。今度は材木になるような形に斧を使って整えていく。パンを包丁で切るみたいにスムーズ。あっという間に、大量の木材が積みあがる。
「一緒に運ぶの手伝ってくれ」
「「ハイ」」
これぐらいなら、ヒョイッと……。
魔力切れを起こしてたんだった。
すごい重い。
サボる訳にはいかないから一緒に少しだけでも運ぶ。
ニーニャに着いて、フウマと3人で木材を運ぶと、冷蔵庫用の穴は領主の館の脇にあった。
「シャベルで朝から一人で掘ったんだぞ!褒めていいぞ!」
「これなら30人以上の冷蔵庫に使えるね。ありがとう」
高さが2.5mぐらい。面積が20畳ぐらいある。
これ、十分な食料倉庫になるでしょ。
「ここに断熱材代わりの木を並べるからな。あとは氷の生成を頼むぞ」
「あ、今日は魔力きれてて……」
「姉さん、それくらい僕にもできるよ。やっておくから調理場の方見てあげて」
「フウマごめんね……。後は二人でよろしくお願いします……」
いつも読んでいただきありがとうございます。
頑張って続けたいとおもいます。




