2-01.訪問者
ユッカちゃんと相談をしていた。
さぁ、これから自立しようと考えていたところ、
扉をノックのする音が。
「おはよ~。ヒカリおねぇちゃん。朝だよ」
「ユッカちゃん、おはよう。毎朝元気だね。一緒にピュアしよっか!」
「うん」
「「せ~の~! エーテルさん! ピュア!!」」
ユッカちゃんとの相談事から数日が経過していた。久しぶりに森のおうちを拠点に狩りをしたり、食料や天然酵母を作り増ししたりして、森の中の狩人としての平常状態に戻って生活をしていた。
本当はユッカちゃんと冒険に出るために狩りの特訓の再開したり、留守中でもお肉の熟成と保存が出来る様に、氷の洞窟に冷蔵保存用の棚も作りに行きたいんだよね。木を切る道具とか無かったから、そういうのも手に入れたいし。
そんなことを考えながら、ユッカちゃんと朝食をとっているとノックの音が……。
『(コンコン)すみません。ヒカリ殿とユッカ嬢のお住まいはこちらでしょうか』
扉を叩く音ともに訪問者の声がする。男性の様だけれども声変わりがまだ始まったばかりな感じ。
すぐさまユッカちゃんが警戒態勢に入る。私はどうしたら良いか分からんからナビにサポートをお願いするよ。
<<ナビ、安全確認。扉の向こうの人の情報があれば頂戴>>
<<危険度赤○。黒装束の追跡者と同じ装い。同一人物の可能性が高いです>>
<<ありがと>>
「ユッカちゃん、どうしよう?」
「この前追い払った追跡者っぽい。同じ強さを感じる」
「分かった。私が返事するね」
「はい。そうですが、どなたですか?」
『リチャード王子の遣いで参りました』
「貴方はどなた様でしょうか」
『リチャード王子の従者です』
「貴方のお名前と身分証明をお願いします」
『スザクと申します。身分を証明する手段はありません』
「王子の従者が身分証明できないとは不思議ですね」
『表の仕事ではなく、裏の仕事をしています。そのため王子との関係を示す物を所有できません』
「とすると、従者を騙って、私たちを騙すこともできますね」
『反論できません。しかし、普段は名前を明かさないので、それで信用いただけませんか?』
「なんで私たち二人の住居が此処であると知っているのですか?」
『以前に王子の命令で尾行させていただきました』
「そのとき、王子は私たちを何故尾行させたのでしょうか」
『それは……。理由は王子に伺わないと分かりませんが、『気になるので調べろ』とだけ』
「私たち、2回ぐらい貴方を追い払ったきがするんですけど……」
『<突風>と、<身体強化による俊足>ですね。別のときに尾行に成功しました』
「そう……。この扉を開けたとき、私たち二人の命は保証されますか?」
『お二人の命を奪うことは考えておりません。王子の命令はどちらかという逆側です』
「ユッカちゃん、開けてもいい?」
「うん。おねえちゃんと一緒なら多分なんとかできるよ」
「わかった」
「扉を開けますので、武器類を構えずに、両手を上に挙げてお待ちください」
『分かりました。ご理解に感謝します』
ーーーー
スザクと名乗る者は、例の黒装束に覆面だった。背丈は私と同じ170cmくらい。声変わりが13歳で始まるとしたら、まだまだ身長は伸びて、いずれは私も追い越されるんだろうね。覆面を取ると、日に焼けてない白い肌と黒い瞳が見えた。髪の毛は灰色に近い茶色。裏の仕事をするなら、私みたいに真っ黒な髪の毛だと目立つから、人混みに紛れるには丁度いいのかもしれないね。
彼を家の中にいれて、3人でどんぐり茶を飲みながら会話を始めた。
「それで、リチャード王子からどういったご用件があるのでしょうか?」
「『ヒカリを男爵にするから、任命書渡してきて』と、こちらの羊皮紙をお持ちしました」
「?」
全然意味が分からず、黙って、こてっと首を傾げるだけ。隣のユッカちゃんも黙って、お茶を飲みつつ、スザクさんの顔を見つめる。
「こちらの文字は読めるでしょうか。
『エスティア王国の国王であるチャールズ・ウインザーの名において命じる。
ヒカリを男爵に任命する。ただし、爵位授与に伴う姓は本人に早急に決定させることとする』
との内容が、この羊皮紙に記載されています」
「読めます。読みました。内容も理解しました。それで?」
「拝領いただけますか?」
「いま決めるの?」
「国王からの命令ですので」
「断れない?」
「命令です」
「断ったら二人とも貴方に殺されちゃう?」
「殺しませんが、私は任務不履行の責で、自決する可能性があります」
「そんなに重要?」
「国王の命令を覆すのは国民でなくなる必要があります」
「例えば、国外に逃げたら?」
「私が追跡し続けます」
「ずっと?」
「王の命令が変わるか、3人のいずれかが亡くなるまでずっと」
「た、大変だね~~~。ユッカちゃん、どうする?」
「断るとこの人死んじゃうんでしょ。可哀想」
「よくわかんないけど、わかった。拝命します」
「ありがとうございます」
「それで、何から始めるの?」
「転居でしょうか」
そっか、そうだよね……。ここはレナードさんの領地なんだから、新しい領地に移住するのは当たり前だよね。そしたら、冷蔵庫とかトモコさんの毛皮とかどうするよ……。ユッカちゃんも両親のお墓のこともあるし……。
てか、男爵ってなに。ジャガイモなの?ひょっとして、ジャガ男爵と戦うの?そういう意味じゃ、私たちはどこへ引っ越すの?極寒の地とか、敵の最前線とか……。
逃げるか!
逃げた方が良かったのか!
いやいやいや……。
ま、前向きに生きよう!
2018/11/21
エスティア王国の国王が公爵になっていましたので、爵位を外しました。
皆様のご指摘に・アドバイスを受けて、適宜修正をさせて頂きます。
今後ともよろしくお願いいたします。




