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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?  作者: tinalight


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30.冒険者(よろずや)になろう(4)

宿屋のお母さんの病気は快方に向かうね。

さて、次なる問題を片付けないとね。

「ユッカちゃん、おはよう」

「おねえちゃん、おはよ」

「「せ~の~! ピュア!!」」


うん、いい朝だ。

夜中に起こされなかったところをみると、

宿屋のお母さんに無事に快方へ向かったんだろうね。

朝ごはんの相談をしに、食堂へ行って見る。

そこには、お父さんと男の子が既に起きて待っていた。


「お二人とも、ありがとうございました」と、ご主人。

「おねえちゃんの薬が効いたよ!」と、男の子。

「「おはようございます~」」


こちらは普通に挨拶を返しつつ、私は切り出す。


「こちらで朝ごはんを作ってよいか相談をしたいのですが……」


あ、そっか。

二人は<奥さんが元気になること>が判らんもんね。

私たちは治ることが判っていたから、感動に差があって当たり前か。

こちとら朝飯前よ!ってね。

いや、ちがう。

そうなんだけど、ちゃんと会話しないと……。


「朝ごはんのこと、うっかりしておりました」と、ご主人が申し訳なさそう。

「あ、いえいえ。食事抜きでの宿泊でしたので、こちらこそ勝手なことを言ってすみません。奥様がお元気になられたようで何よりです」


「すぐに朝ごはんの準備をしますね。そして朝ごはんを食べながらお礼の相談をさせていただきたいのですが……」と、ご主人。


ーーーー


ご主人が作ったシンプルな朝ごはんが出てきた。

奥さんはまだ、すやすやと寝ているとのこと。

そりゃ、肺炎自体は治っても、体力が回復するのは別の話だしね。

大事にしてあげて欲しいよ。


「それで、お礼の件ですが……」と、口を重たそうに切り出すご主人。

「はい」


「正直、すぐにお支払いできる状況ではなくて……」

「はい」


「少しずつの返済でよいか、相談できないかと。家内も元気になれば、少しずつ余分にお金を作れるようになると思いますしので……」

「はい」


「どうでしょうか?」

「少し二人で相談させてもらってから、ご返事しても良ろしいですか?」


「はい……」


私の素っ気ない態度に、お礼に対して一歩も譲る気が無いようにとられたかな?


そういう問題じゃないんだけどね。

ユッカちゃんは人助けできて嬉しいのだろうし、無料でいいと考えているんだろうけど、そうは問屋が卸さないのが今回の難しいところでさ。この先、降りかかる困難の目途めどが付かないのにこの件は手を出しちゃいけなかった。この部分をユッカちゃんと相談だよ。


ーーーーー


「ユッカちゃん、何か言いたいことある?」

「お母さんが助かってよかった!」


「そうだね。私もうれしいよ。

それで、お父さんがお礼を出すって言ってたけど?」

「私はいらない。おねえちゃんが欲しいならどうぞ」


「そうだね。私もユッカちゃんと暮らせれば余分なお金は要らないよ」

「そしたら、相談はおしまい?」


「ううん。ここから本番なの」

「何が?」


「私はここの宿の経営がうまくいくように、助けないといけない」

「<けいえい>って?」


「お客さんを集めて、お客さんからお金をもらって、生活することかな」

「なんで、おねえちゃんが助けるの?お礼をもらうなら逆だよ?」


「ここのお父さんの話を覚えているかな。

『経営が上手くいってなくて、お母さんが外に働きに出ていた』って言ってたよね?」

「言ってた」


「お母さんが元気になったら、どうするって言ってた?」

「『外で働いて、お金を返す』って言ってた」


「また、メイドの仕事をすると思う?」

「冒険者登録所では、私たちにメイドを紹介してたよ。空きがあるよ」


「そうだね。宿屋の奥さんが体調が悪くなったのと、メイドの空きができたときは一緒の時期だよね」

「うん。おねえちゃんがメイドに応募しなければ、代わりにお母さんがメイドに応募できるね」


「その後、どうなると思う?」

「貴族に無理させられて、また病気になっちゃうかも……」


「それでいい?」

「良くない!」


「うん。どうしよう?」

「悪い貴族をやっつける!」


「それだけでいい?」

「何が?」


「貴族が居なくなると、メイドの仕事がなくなる。他の仕事で無理をしたら、また体調が悪くなるかも?」

「おねえちゃん、どうしたらいいの!」


「もし、宿屋の<けいえい>が上手くいって、お母さんが外で仕事をしなくて済むようになったらいいと思わない?」

「おねえちゃんが、ずっと宿屋で働くということ?」


「ううん。ちょっと違うの。経営が上手くいように手伝うってことなの」

「いつまで?」


「レナードさんとか、ベッセルさんの力が借りられれば早いと思う」

「どれくらい?」


「1-2週間ぐらい掛かるとおもう。お母さんの体力が回復するのもそれくらいかな」

「それが終わったら、冒険に行く特訓を再開できる?」


「うん。特訓が終わったら、悪い貴族をやっつけないとね!」

「悪い貴族をやっつけたら、冒険にいける?」


「うん。一緒に行こうね!」

「うん!」


「じゃ、最初に戻るね。私はここの宿を手伝うの。住み込みになると思う」

「森のおうちからは、ちょっと遠いね」


「ここでパンを作るつもりだから、森のおうちから通う時間はとれないかも」

「そだね」


「ユッカちゃんは、どうする?」

「おねえちゃんと一緒にここに居る」


「お父さん、お母さんのお墓に毎日挨拶できなくなるよ」

「いいよ。我慢する」


「分かった。そしたら、

『お礼として、住み込みで二人でここで働かせてもらう』

ことを頼もうと思うんだけど、どうかな?」

「いいよ!」


「もう一つ、クッキーも我慢できる?」

「やだ!」


「ここに砂糖は持ち込めないもん。ハチミツぐらいならいいかな」

「が、が、我慢する……。パンは?」


「砂糖は入ってないけど、美味しいパンを作るよ」

「いいよ。ここで二人で働く」


ユッカちゃん、いろいろありがとね。

私も精一杯も頑張るからね。

誤字などの修正のみです。本ストーリーへの影響はありません

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