3-63.帰還と報告会(2)
とりあえず、残りの報告を聞いてから、
ドワーフさん達と橋を掛けに行こうかな・・・。
「じゃぁ、また暫く留守にするけど、誰か一緒に来る?」
「おねえちゃん、面白いの?」
「う~う~。多分ツマラナイ。美味しくない。寝るところは大変だと思う。でも、ユッカちゃんがいると、私が楽しくなるかも?」
「飛竜さん達はクジラを獲れるから、私ついて行ってもいいよ?」
「ほんとに?」
「おねえちゃん、嬉しいの?」
「もうね。肩が凝ったよ。ユッカちゃんと一緒だと気楽で楽しいよ。」
「<カタガタガタ>なの?」
「あ~、ここは<肩こり>って概念が無いのかな?モリス、<肩こり>って知ってる?」
「その言葉は知りませんが、緊張やストレスの連続で首筋から頭にかけて、強張って、頭痛がするときがありますね。」
「それそれ。その状態を<肩こり>って言うの」
「なるほど。ロメリアの視察はそんなに疲れましたか。」
「だって、ロメリア王宮では男装したり、サラシ巻いたり、リカっぽく大人しくしてたし。今日の関所でのロメオ王子とのやりとりは普段使わないような大上段からの発言は慣れて無くて疲れたし。もう、いろいろあったけど、全然自由が無いんだもん」
「ヒカリさん、今日のはカッコよかったです。」
「ステラ、そんなこという?」
「惚れ惚れしました。威厳ある態度も、武術で圧倒的な力量さで打ち負かしたのも。」
「あ、あれってさ。弓矢で私を狙ってくれるように布石を打ったんだけど、どうだろう?」
「有視界外から矢をあてるなんで、エスト達でもギリギリですわ」
「ステラ様、飛竜の血の力を借りてるので、多分できます。」
「え?じゃぁ、普通には当てられないってことね?」
「ヒカリ様、弓の名手がお入り用でしょうか?」
「あ、エスト。実はさ、リカを殺そうと思っててね。橋の上で対峙して、弓矢で狙われて、リカがその犠牲になっちゃおうかなって。」
「見張り台の上とか、位置取りが良ければ、ギリギリ届くと思います。けれど、当てるのは人族にはきびしいかもしれません。」
「う。誰かリカか私を遠距離で狙って殺させる良い案をください。」
「宣戦布告の際に、橋の上で宣言した後、振り返って戻るときに撃たれればいいわ。」
「マリア様、戦争って、そうやって始めるもの?」
「はい(ALL)」
「じゃ、普通にそれで大将を倒せばいいじゃん?」
「普通は、大将の使いが宣言を取り交わすので、そのような意味の無いことをしないわ。」
「そういうもの?」
「はい(ALL)」
「それじゃ、私の身代わりを鎧に詰めて、私がリカ役で宣誓しに行こう。
で、鎧着てない私が殺されると。身代わりの人は、死んだ振りした私を持って帰ってね。あとで、私が矢文を打つよ。『お前らの卑怯な行いでリカが死んだ。天罰を待て』って。それでいいよね」
「はい(ALL)」
「ヒカリさん、私がその身代わりを務めても良いかしら?」
「ステラ、やってくれる?そしたら、鎧を整えないと。」
「ヒカリ、娼館の子の大き目のサイズならステラに合うぞ。持っていけばいいぞ。」
「そっか。じゃ、準備万端だ。出発するよ。」
「ヒカリ、イワノフを中心に2-3人連れて行くといいぞ。」
「あ、移動ってどうするんだ?」
「イワノフ達には<飛竜の血>を飲ませてないぞ」
「おねえちゃん、<針>が入ってない飛竜は背中に人を2-3人載せても楽々飛べるよ。私の飛竜に乗って貰ってもいいよ。」
「ヒカリさん、私の飛竜でも良いですわ」
「わ、私の飛竜は?」
「<タカ>さんが待ってるよ。」
「いや、だって、<タカ>さんは、ロメオ王子が乗って戻っちゃったよ。」
「入れ替わったよ」
「そっか。いろいろありがとう。本当にいつでも出発できるね。」
「「ハイ」」
「ヒカリ、出かける前に確認したいことがあるわ。」
「ラナちゃん、なに?」
「地下の菜園だけど、もう、農場の作物が実り始めてるから、あそこは研究用の菜園にすればいいと思うの。どんな気候でも再現できるわ。何に使いたい?」
「大豆、米、胡椒、サトウキビ、カカオ この辺りを栽培したい。」
「ドリアードを連れてらっしゃい。私には無理よ。
次の質問ね。レナードがアリアの炉の大型化をしたいらしいの。
どう考えるのかしら?」
「あ、ええと。栽培の話は考えます。
炉の話は、この戦争が終わるまでお預けとさせてください。
アリアの活動を阻害しない範囲ででしたら、自由に使って頂いて結構です。」
「レナード、ヒカリの決定が絶対よ。却下ね。」
「承知しました。戦争を勝利に漕ぎつけて、改めて話し合いの場を設けさせて頂きます。」
「私からは以上よ。いってらしゃい。」
「そっか、他に調整とかしておくことある人いる?」
「私からも宜しいでしょうか?」
「モリス、何?」
「納税の件で2つ。開拓団の件で1つ。学校建設の件で1つございます。
納税の件の1つ目は、関所の通行料の値下げを何処までするかと、メルマへのキャッシュバック停止時期になります。
納税の2つ目は領地の作物からの売り上げが出始めています。また、食堂での買い上げをしていますが、やはり食事の売り上げが収入になっています。開拓地を統括する会計士やゴードンから税率が本当に30%で良いか、問い合わせが来ています。
まず、こちらの指示を頂けますか?」
「1つ目はエスティア王国への税収が減るのは不味いから、金貨10枚が毎日確保できるように。これまで、1日金貨50枚の通行料だったから、今後は金貨20枚で良いね。関所の通行料は半額に値下げする。開始時期は今日のロメオ王子の宣誓書を元にランドルさんと連絡して決めて。メルマの商人の流通が混乱なく移行できるタイミングが重要だと思うよ。
2つ目は、前に30%って決めたと思うけど、文句がでてるってこと?変えないといけない理由が判らないんだけど。あと、食堂の売り上げはゴードンと働いているメイドさんで『何に資金を回すべきか』これを考えて貰って。当然、食堂専用で雇用してる場合には皆と同じ給料を支払ってあげてね。」
「開拓地の会計士は『この関所は運営が赤字なのでは?』と、心配されています。領主の金の回し方がオカシイそうです。」
「私は蓄財しようとしてないからね。全て未来へ投資してる。私の為にお金を残す必要は無いと思ってるんだよ。結婚したらリチャード王子に養ってもらう。
で、他の件は?」
「人の自然流入が始まりました。開拓団として受け入れて良いか確認させてください。」
「いいよ。ベイスリーさんと、会計士さんとモリスの判断で決めていいよ。ダメだったら、そのときだ。先ずはお試しでやってみたら?食堂や娼館、どこで受け入れてもいいよ。」
「承知しました。
最後は、学校の先生の雇用に関してです。人材確保に動いても構わないでしょうか?」
「どんなレベルの人が候補としているのかな?」
「先ずは、<読み、書き、計算が行えるようになること>ここを教えられる先生を複数募集しようと考えています。」
「そんなに人数が必要かな?生徒が集まらないと思うんだけど。」
「いえ、それが、かなりの人気でして。」
「誰から?」
「老若男女問わずです」
「ああ、そっか。子供だけじゃないね。OKOK.進めていいよ。先生の雇用費には、給料の他に教材費、必要なら住み込み費用や食費も出してあげて。」
「承知しました。私からは以上になります」
「私が考えてなかったことがいっぱいあるね。
他には何か困りごととか調整することあるかな?」
「ヒカリ様、<火薬>の研究に着手しても宜しいでしょうか?」
「アリア、それは学術的な興味本位の研究かな?それとも実用レベルにして、何か技術レベルの発展を考えてるのかな?」
「火の魔術を使えない者で、似たような威力をだすことが可能になる材料と聞いてます。その材料を再現してみたいのです。」
「火の魔術が使えない人がいて、火薬を手にして何をするんだろう?」
「魔物を倒したり、岩石の採掘が容易になると思います。」
「それって、魔石を利用した魔道具とでは、意味合いが異なるのかな?」
「魔道具は高価なものです。
また、宮廷魔術師のような魔術が使える一部の限られた人が商売としているため、一般的な用途には使いずらい問題があります。
例えば、日々の消えた竈に再度火をつけるときにも魔道具が必要になるか、火起こしをしないといけません。」
「そっか。マッチとか無いのか。赤燐とかじゃ駄目かな?」
「それは、広義の意味での火薬に該当しませんか?」
「該当するね。その通りだね・・・。」
「火薬は素晴らしい研究だと思うのですが、如何でしょうか?」
「う~ん、う~ん・・・。」
「何か問題でもありますか?」
「非常に戦争の役に立つ技術でさ。どうしたものかと。」
「確かに、人を倒すような火薬を爆発させたら、魔術師と同等の兵士が大量に作れますね。」
「ああ、なるほどね。それぐらいの使われ方ならいいんだけどさ。
モリスやレナードさんなら分かるかな。
<火を出す粉>が作れたとしたら、戦争がどうなるか」
「ヒカリ殿、私なら大きな矢や投石機にその火薬を詰め込んだ玉を敵陣に投下しますな。」
「いいね。モリスは?」
「う~ん。これは、あくまでドワーフ族のような高度な金属加工技術がある前提になりますが、筒の中に玉を仕込んで、その玉を火薬の力で吹き飛ばす仕組みを作ります。」
「そうだね。二人の言う通りなんだよ。」
「マリア様、リチャード王子、そのような敵にどうやって戦う?
例えばエスト達のような特別な弓部隊でなくても、金属の棒から弾がでてくる兵士が大量に出現したら。
例えば、飛竜が上から火が爆発する玉を投下できるようになったら。」
「戦争の概念が変わるわね。
今以上に人の命が軽くなり、アリアのような科学者やニーニャのような職人を抱える国が強大な権力を持つわ。」
「岩石を砕くような火薬の玉が降って来るなら、今までの防御とは全く違う考え方をしないと不味いぞ」
「アリア。科学者は常に発明の有為性や公益性と、それが引き起こす時代の変化も視野に入れておく必要があると思うんだよ。
さっき、レナードさんに炉の大型化の件を止めてもらったのも、<火薬の威力に耐えうる金属の棒>が必要になってさ、それを大量に簡単に作れるようになるからなんだよ。
逆に言うと、さっきの王子の<防御に対する考え方>が変わるんだね。火薬の玉から身を守れるような城を作ったり、馬車を作ったりするのさ。」
「ヒカリ様、私が浅はかでした・・・。お許しください・・・。」
「ううん。いいの。
逆に私がアリアのやる気を削いじゃっていることの方が問題なの。
ただ、そこを意識しているかどうかで、<この世界>の未来が変わってしまうことを意識のどこかに持っていて欲しいかな。」
「はい・・・。」
「うん。ガラスが出来たら、<レンズ>が作れるね。
レンズがあれば顕微鏡が作れる。
金属加工やガラスの研磨とかはドワーフさん達に手伝って貰うことになるかな。
<顕微鏡>が手に入ると、アリアの世界が全く違ったものになるし、そこで得られれる知識は、今度は度量衡の精度アップにつながるんだよ。1メートルの1000分の1とか1万分の一を確認できるからね。
ニーニャ、そんな世界がきたら、アリアに感謝するよね?」
「ヒカリ、ずるいぞ。」
「何が。」
「お前の知識が面白いぞ」
「うん。本当はさ、戦争とかしてないで、こういうのをみんなと積み上げていきたいんだよね。モリスが動いてくれている<学校>もさ、こういう知識を積み上げるための基礎として必要なの。アリアやニーニャだけが判っててもダメなんだよ。」
「わかったぞ。レンズの仕組みだけ教えてから出かけるんだぞ」
「ヒカリ様、理屈だけでも簡単に説明していってくださいませんか?」
「うん。基本が判れば、モリスがその先は計算してくれるよ。モリスも同席してね。」
「承知しました。」
「じゃ、ご飯のあとで講習会をしてから、出かけようかな。他に何かある人いるかな?」
「ヒカリ殿、私はヒカリ殿に同行しようと思う。」
「え?クロ先生どういうこと?私が武術の稽古をしてないから?」
「守らないといけない。」
「ああ、リチャード王子との勝負で私が一本取ったって話のこと?あれは、勝負になって無いからいいよ。」
「そういうことでは無い。が、万が一にも事故が起きては困る。」
「うん。判った。ありがとね。出発するときに必ず声をかけるよ。」
「今晩中にレンズの基本を教えていくね。他の人はデザート食べたら解散で。
あ、シュークリームどうなった?まだ食べて無いんだけど!」
「ヒカリさん、皆に召し上がってもらいましたが。」
「え?」
「ロメオ王子のお土産ですよね?」
「うん。20個ぐらい作ってたはずだよ。」
「エスティア王国から3名、長老の仲間が4名
エルフの方達が4名、ニーニャさん、ユッカちゃん
ロメオ王子、アリア、私で合計16個になりますね。」
「4個余るでしょ。」
「<リカさん>の分はユッカちゃんが食べました。17個ですね。
通常は毒見をしますし、王子が事前に召し上がった可能性もございます」
「そこは、<領主のヒカリ>に『お茶の準備が出来ました』って、声を掛けるよね?」
「ロメリアまで飛竜で使いをやってですか?」
「あ。どうやって、その場を誤魔化したの?」
「『日々の執務が忙しいので、残念ながらまたの機会とさせてください』と伝言したところ、『打ち合いで多くの時間をとってもらい、こちらも申し訳ない』と、あっさり引き下がってくれました。それか、負けて気まずかったのかもしれません。」
「おねえちゃん、白鳥の形してるんだよ!見た目がすっごいの!
それだけじゃなくてね?味も美味しいの。中がとろ~っとしてて、口の中でもわ~って広がるの。」
「うんうん。1日経っちゃってるから、
白鳥にかけて、白くしていた粉砂糖も溶けて、茶色になってただろうし、
生クリームが溶けかかったり、
カスタードクリームも固まりかかったりしてただろうし、
シューも水分吸ってちょっとしんなりしてたかもね。
あ、今日は作んないよ!」
「イジワル。治水工事しながら作ってね!」
「うん。」
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。
年末年始は10日間ぐらい休むかもしれません。




