3-59.ロメリア王宮(2)
ロメオ王子がいて、見事に面倒な状態だった。
いや、確かに私のせいかもしれないけど、
今回に関していえば私は悪くないよ。
「よし、二人とも作戦会議だよ。その前にフウマは盗聴の確認と防音の結界を張ってくれるかな?」
「すぐやる。ちょっと待って。」
与えたられた寝室は、そこらの街中の宿屋では考えられないぐらい豪華だった。当然、私の関所の寝室なんかよりも、ずっと贅沢な作り。初めて出会った羽毛布団だよ!なんだか、フワフワし過ぎて、布団を掛けてる感触が無いぐらいだ。この体験だけでも素晴らしいね。
扉にはメイドが配置されているから、勝手に王宮を歩き回ることは出来ない。けど、飲み物とかお菓子なら言えばいくらでも準備してくれるし、<花摘み>も、当然メイドが付き添ってくれる。
逆に言うと、常にこっちの行動を聞き耳立てられてる訳でさ、さっきのフウマへのお願いが必要になって来るんだよね。
「姉さん、終わったよ。会議を始める前に飲み物とか要らない?」
「トイレが近くなるから要らない。」
「姉さん、ここにはスライムは居ないし、近づいて来ないよ。」
「<花摘み>に行く頻度が増えて、その間隔が短くなることを<近くなる>って表現するの!覚えておいて損は無いよ!」
「わ、わかったよ。」
「アルさん、今日は本当にお疲れさまでした。朝から大変だったでしょ?
フウマもいろいろとお疲れ様。いつも助かってるよ。」
「いえいえ。お二人に比べれば、口先三寸の出まかせみたいなもんです。」
「姉さん、僕はいつものことだよ。それよりアルさんの心理的負担が大きいと思う。」
「そうだね。レストランのそつない対応も良いし、王宮へ来る前の馬車の応戦も素晴らしいし、治水事業の見解も引き出せたのなんか、上手いと思った。」
「私はフウマ様のように武力や魔術でヒカリ様を守ることが出来ませんので、自分の出来る範囲のことをしたまでです。」
「うんうん。個性を尊重して、お互いを助け合えると良いね。これからもお願いね。」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。」
「で、明日からどうしよっか。私が思うには、
(1)シュークリームのレシピを売るの?
(2)王宮の倉庫とかも見学できるのかな?食料の備蓄とか取水口とか。
(3)この王宮の武力、騎士団、武器庫とかも教えてもらえる?
その辺の事情が分かれば、籠城されるとどうなるかとか予測が出来そうだけど。」
「姉さん、僕が思うことを言うよ。
(1)エスティア王国の王女が側室として来ている件
(2)トンネル開口部の位置決めと領地マーカーの設置
(3)飛竜騎士団の制圧方法
この順番に重要だと思うし、明日までにある程度の方向性を決めておくべきだよ。」
「それでは、皆に倣って私の考えも述べさせて頂きます。
(1)ロメオ王子の恋煩いの解消と戦勝後のロメリア王国統治方法
(2)治水事業の許可権
(3)人足を雇う前提としての<炊き出しによる人集め>の許可
この辺りは、ヒカリ様が統治を進める上で重要なアイテムとなります。」
「君ら頭良いね。素晴らしいよ。
でもさ?普通に考えて相手に此方の要求をのませるためには、それ相応のお土産が必要だよね。
<何と何を交換するか>
そこを詰めていこうか。あとは、時系列と優先順位の両面から並び変えないとね。」
「「ハイ」」
「先ずさ、明日、王宮の中で出来ることは、
(1)<王宮見学>と<トンネル出口の設定>だよね。
これって、ご褒美として貰えるから交換条件はいらないよね。適当に関心の高いフリを見せて、他国からの防衛のすばらしさとか、災害時の備えとか聞くと話してくれそう。
(2)<エスティア王国の側室の確保>
これってさ、人質扱いな訳?本人は殺されちゃうの?後で教えて。
(3)<飛竜騎士団>
これは制圧できるよ。リーダーの<タカ>に念話でお願いするだけ。今は何も言ってないけど、戦争始まる時はお願いするから大丈夫。
(4)<人集め、治水事業>
これは、何らかの交換条件が必要だね。<炊き出しは自前><優勝したレシピ>で事業の許可権だけもらっておきたいね。あの感じからすると、領地マーカーで囲っておけば後から<他国>は主張出来ないよね。忘れずにお願いすれば、許可は出そう。
(5)ロメオ王子の扱い
武力戦争で負けた王族は根絶やしって聞いたけど、今回ロメリア王国が<降伏>した場合ってさ、<降伏条件を押し付ける形>で、根絶やしにしないで済む方法ってないのかな?この辺りのみんなの意見を頂戴。」
「姉さんの問題は、<側室の件>と<相手を負かしたあとの条件>の2つだけで良いってこと?」
「うん。他は解決済み。」
「ヒカリ様、<ロメオ王子の恋煩い>は重要な問題な気がするのですが。」
「どういうこと?」
「戦争になります」
「王室の跡取り争奪戦ってこと?」
「いいえ。関所をロメリア王国の領地とすべく、ロメオ王子が軍隊を進軍させます。」
「私は何も悪いことしてないよ。」
「ヒカリ様は何もしてなくても、リカさんがロメオ王子を夢中にさせました。」
「フウマ、説明して。」
「姉さんというか、<メイドのリカ>を手に入れるには、侯爵クラスの成果をあげる必要があるんだろ?武力を見せつけて、領地を広げて、そこに<リカ>が居たら、勝った側のモノになるんだから、自然と<リカ>もロメオ王子のモノになる。」
「無し無し!そんなの無しだよ!」
「ヒカリ様、ですから、恋煩いを解消しておかないと後々揉めます。また戦争に勝ったとしても、王子が独断で攻め入る可能性がございます。」
「いやいやいや・・・。負けたんだから条件は飲んでもらわないと。」
「そもそも、金貨200万枚の借金を飲まないから戦争になる訳です。相手からしてみて、理不尽と思われる条件はのみません。ロメオ王子は人気がありますので、兵を起こしたら多くの騎士団員がロメリア王国を離れて、王子についていくでしょう。」
「じゃ、王子を殺すの?」
「今度はロメリア国民の大反発に遭い、戦争が長引き、国土は壊滅的な状態にまで荒れ果てるでしょう。」
「なんでこうなった?」
「姉さんだから」
「ヒカリ様ですから」
「パーティーの末席でご飯食べてただけだって。別に王子を誘惑した訳でもないし。一応、飛竜に会わせてくれたお礼にクッキーをお土産にするようにしたけどさ。どっちかというと、<リカがクッキーを普段は食べてない>みたいな雰囲気で終了だったわけでさ。」
「姉さんの言い訳はいいよ。今、この問題は相当大きいってことがアルさんのおかげで認識できて良かったじゃないか。」
「リカに似た身代わりを出すとか。」
「姉さん、パーティーのときに何か魔術とか使ってない?本当にクッキーだけ?」
「あ!」
「ほら、やっぱり姉さんのせいだろ。」
「身代わりは無理だ。<思考ガード>が使えるのは<念話>できる魔術レベルが必要で、それって、ステラ、ユッカちゃん、アリアぐらいだもん。エルフの子らが習得できても身代わりにはならないし・・・。」
「じゃ、姉さんがリチャード王子を諦めるか、このままリカに旅立って貰うか、姉さんが自由に考えていいよ。
ロメオ王子がこの国に残る前提があれば、残りの問題は側室の件だけだね」
「ハイ。ロメオ王子さえこの国に居れば、エスティア王国からの側室の件だけになります。」
「ちょっと考えるから、側室の件ってのを話してくれる?」
「「ハイ」」
なになに、なんなわけ?
なんで戦争になって、勝った側が負けた側の言うこと聞く必要があるわけ?
全然納得がいかないよ。
ある意味で、半分ぐらいはリチャード王子のためにエスティア王国を良い状態にしようとしてる訳なんだからさ。
ロメオ王子と結婚するなら、苦労して戦争する必要もないし、このまま身バレして、ロメリア王国のお妃として嫁げば万事うまく収まるわけじゃん?
う~う~う~。
<リカに旅立って貰う>ってフウマの案は悪くないけど、いずれ関所の領主である私がリカってことがバレて、また面倒なことになるよね。
いっそのこと、リカに死んでもらう。
あ!
双子の妹を紹介して、その妹であるリカが死んじゃう。
これで行こう、そうしよう。
「姉さん、ということなんだけど、話は聞いてた?」
「え?なにが?」
「ロメリア王国としても、切り札をいきなり切る訳では無いから、王宮への軍団突入に巻き込まれて殺害されるとかが無ければ大丈夫。ロメリア制定後なら、現国王に隠居して貰えば、そこの付き人として残るのもいいし、エスティア王国に戻って貰うのも良い。このような選択を本人にしてもらうことができるよ。」
「じゃ、<降伏の条件>にその項目を追加でしてあればいいね。」
「うん。ところで、姉さんの覚悟は決まった?」
「うん。私の双子の妹のリカが、戦争に巻き込まれて死ぬことにしよう。」
「随分無茶だけどさ、ちゃんと考えて発言してる?」
「うん。治水事業して、川の両岸で対峙するじゃん?そのとき、ベイスリーさんを団長として立てて、メイドの私がリカとして旗持ちをするの。で、私が飛来してきた矢に撃たれて死んじゃう。どう?」
「それって、宣戦布告か何かをするってことだよね?」
「うん。」
「姉さんがするの?」
「ベイスリーさんだよ。」
「いや、そうじゃなくてさ。敵国に攻め込むんだよね?」
「ううん。相手が攻め込んでくるのを、<正当な領地の支配者>として受けて立つんだよ。」
「そういうことする?」
「だって、川のこっち側は私の領地だもん。防衛するでしょ。」
「道が無いから、船とかだろ?そう簡単に矢を放ってこないだろうし。」
「橋でもかけて、ゆっくり進んで、狙われやすくしよう。」
「アルさん、姉さんはいつもこうなんだけど、我慢して付き合ってくれるかな?」
「どのように実現するかは判りませんが、実現できるのでしょう。問題は、<関所の領主>と<メイドのリカ>が別々に存在していることを証明できないと、ロメオ王子はその作戦を信じないでしょう。替え玉か何かを疑ってくるでしょうね。」
「同時に、別の場所に存在が確認されれば良いよね?」
「それが可能であれば・・・。」
「今のところ、飛竜はロメリアの飛竜騎士団しか所有してなくて、それ以上速い移動手段は無いってことでいいよね?」
「そうですが、何か良い方法があるのでしょうか?」
「関所にヒカリが居て、ロメリア王宮にリカが居れば、本当の意味での同時性は無くても、飛竜の移動速度より速く移動が終わってれば、同時性は成り立つよね?」
「そんな魔法が使えれば、それは<そのような魔法があること>を考えるよりも、自分で見た事実を真実と見做すでしょう。私はヒカリ様がいるので何も信じませんが。」
「フウマ、それで良い?」
「流れ矢に姉さんを晒す危険だけが納得いかないけど、まぁ、いいんじゃないかな」
「じゃ。明日以降で、ロメオ王子がリカに会いに行ったら、私は飛ぶから宜しくね。」
「飛竜より速く飛べるので?」
「姉さんが、飛竜の速度を遅くするのさ。」
「ヒカリ様はお独りで飛ぶのですか?」
「それしか無いでしょ?」
「私はヒカリ様の発言は信じられませんが、ヒカリ様を信じます。」
「フウマ、どうなのよ?」
「念のため、<タカ>さんに、事前に<念話>通して、ロメオ王子の動きを遅くするように言っておいたら?」
「そうだね。流石フウマだ。抜けが無いね!」
「姉さんが居ない間は、こっちで上手く対応しておくから。
移動して入れ替わる時に、服装とか言葉遣いとか、変なミスして、訳の分からないことにならないように注意してね。」
「わかった!」
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。
なお、書き溜めが間に合いません。
年末年始は10日間ぐらい休むかもしれません。




