3-57.お菓子コンテスト(3)
作戦に変更は無い!
ってことは、コンテストで優勝して王宮に招待されればいいね!
「よし、お菓子コンテストの結果発表に行こう!」
「姉さん、あの感じなら入賞できるよ。
今日の貴族の店で出てきたデザートも、甘さやフワフワ感は無いだろ?木の実とかたっぷり入ってて、豪華さは在ったけど食事の後には重たいだろ?
大丈夫さ。」
「ヒカリ様、私もそう思います。関所で出てくるゴードンさんの料理は素晴らしいですね。あのレシピを参考にされてるのでしたら、そこいらの貴族では敵いませんよ。」
まぁね。
ちなみに、あのレシピはゴードンのレシピじゃなくて、私のレシピだ。
更に言うと、<ナビ経由の日本で情報をアップしてくれてる誰か>のだけどね。
こっちの料理器具に合わせてアレンジしてるの私だけどさ。
お。そろそろ結果発表が始まるね。
「今回の第一回コンテストに多数の応募ありがとうございました。
次回からは予選会を開くなどして、審査員の負担を軽くする方向で考えてまいります。
しかしながら、100以上の作品を漏れなく審査するため、味見をメインとして完食はしておりませんが、ちゃんと、見栄え、味、香り、斬新さなどを総合的に判断しておりますことは改めて申し上げます。
先ずは4位~10位までを申し上げます!番号を呼ばれたチームは後で代表者の方が受付まで賞金を取りにきてください。
では、第四位から順番に番号を読み上げます。
3番、15番、23番、35番、68番、92番、97番
以上になります!」
『わーわー』『やった!やった!』
あちこちで歓声が上がる。でも私たちはここで呼ばれちゃダメだから、ドキドキしながらもホッと安心してる。
「続きまして、第三位~第一位まで順番に番号を申し上げます。尚、番号を呼ばれた方達は受付で賞金を受理するとともに、副賞である王宮見学の日程の調整を行います。
では、第三位:2番のチーム おめでとうございます!(パチパチ ワーワー)
続いて、第二位:7番のチーム おめでとうございます!(ウォー!ヤーヤー)
そして、栄えある第一位は! 11番のチームです!!」
周りで拍手と歓声がごったがえしてる。
私達3人は茫然としてる・・・。
え~。なんなんだ・・・?
出来レース?
砂糖と塩を間違えるようなミスはしてない。
だって、宿で作って、味見もしたものを持ち込んだだけだし。
温度管理もちゃんとフウマと一緒に氷作って保存したから問題ないし。
多少、クリームが冷えすぎてて食感が悪かったとしても、他と比べて頭一つ飛び出てるはず。
「姉さん、なんか失敗した?」
「フウマまでそんなこと言う?今回はミスしてないよ。多分。てか、フウマだって味見したじゃん?」
「いや、そうなんだけどさ。たまに、なんかとんでもないことするだろ?」
「いや、そうだけどさ。確かにエントリー忘れそうとかいろいろあるけどさ。調理自体のミスも保存もちゃんと気をつけて、盛り付けとかもしっかりやったし・・・。」
「ヒカリ様、私から見ても、オカシナお菓子には見えませんでした。」
「アルさん、それ、和ませようとして言ってる?」
「いえいえ、とんでもないです。本当のことを言ったまでです」
周りが盛り上がってるだけに、なんかすっごい落差が激しいね。
悔しいとか以前の状態。
こっちからすれば逆に出来レースだと思っていたのにさ・・・。
地味な偵察活動をしないといけないのかね?
「え~、これで入賞者の発表は終わりますが・・・。
尚、不正疑惑のある102番のチームは再審査を行いますので、至急受付までお越しください。
繰り返します。不正疑惑のある102番は会場にいましたら、至急受付まで!
それでは、皆様、また次回のコンテストをお楽しみに~~!」
(パチパチパチ・・・・)
(ワイワイ、ガヤガヤ・・・。)
(『あそこのデザート食べに行こうぜ!』 『いやよ。第三位のお店なら知ってるわ』)
「フウマ、嵌められた?」
「いや、わかんないけど、行くしかないだろ?濡れ衣を晴らせば再審査してくれるんだし」
「アルさん、なんかトラブルに巻き込まれてる。いざとなったら、逃げて帰っていいから」
「ヒカリ様、そうは言われましても、私が代表者として登録してありますので、私も受付まではご一緒させて頂くより仕方ありません。」
「あ、そっか。私が因縁付けられてる訳じゃないよね。じゃぁ、なんでだ?」
「姉さん、行こう。新しく偵察ルート探すにしても、これがダメの理由が分かった方が、反省もしやすいだろ?あるいは、僕たちが身バレしてるかも判るし。」
「そだね。すぐ行こうか」
アルさんを先頭にチーム3人で受付へ向かう。
「あの、102番のチーム代表のアルバートと申しますが、不正疑惑があるとのことで参りました。」
「ああ、お待ちしておりました。ちょっと微妙な内容ですので、どうぞこちらへ」
って、馬車かい?
<<フウマ!馬車に乗せられる!危険は?>>
<<アルさんには言えないけど、最大警戒モードに移行して。いざとなったら、姉さんは姿消して逃げて。その時間だけは必ず僕が稼ぐから!>>
<<分かった。状態が手詰まりになる前に逃げるかもしれない。でも、みんなを連れてくるから待っててね。>>
<<うん。ここで全員捕まるのは不味いからね。それで行こう>>
<<ナビ!馬車の危険性確認!この人物の身元確認、馬車周囲の要注意人物の確認をお願い!>>
<<馬車本体は問題無し。
馬車周囲に騎士団が配備されており、総勢20名以上。飛竜騎士団不在。
透明化して、上空へ逃げれば脱出は可能。
暗殺、魔術師などの<隠密行動>による暗殺集団の配備無し。
先導する人物は<メトロポリタン侯爵>本人の可能性が90%以上適合。
以上です>>
<<ありがと。なんか、お迎えが来ちゃったやつだね>>
<<そう受け止めてよろしいかと。>>
万が一ってこともあるから、フウマにもアルさんにも何も言わない。
ただ、だまって、アルさんとフウマと私の順番で馬車に乗り込む。
そして最後に先導していた人が馬車に乗り込んで、御者に指令をだすと馬車が発進した。
「皆様、そんなに緊張しないでください。」
「「「・・・。」」」
「あ、申し遅れました、私は今回のイベントの主催者であるコンチネンタル・メトロポリタン侯爵と申します。以後、お見知りおきを。」
「「「は、ハイ」」」
「それで、これから少々お付き合い頂きたいのですが、本日のご予定はどの様な次第でしょうか?」
「コンテストが終わり次第、ミラニアの宿に戻る予定になっております。チャーターの馬車も城門で待たせてあり、宿屋の女将もコンテストに出席していると承知しておりますので、無言で不在となると少々問題が起こるかもしれません」
「それは失礼しました。チャーター馬車の御者の名前をお伺いできれば、こちらから言づけさせて頂きます。もし、ご心配であれば、一度この馬車で城門へ向かっても構いませんが、どちらが良いでしょうか?」
「それは、今晩帰れない用事ができるという意味でしょうか?」
アルさん上手いね。
私が交わすであろう言葉をすらすらと話してるよ。
単に政治学だけでなく、貴族との失礼のない会話の進め方を知ってるんだろうね。
事実を端的に述べて、『こちらは貴方を警戒してますよ』の意を伝えてる。
「これは、これは大変失礼しました。<不正疑惑>との呼び出しで警戒されていますね。あの場では、城下町やロメリアに店を構えていないチームが優勝すると大混乱になるため、こういった形でのお近づきの機会を設けさせて頂きました。
そもそも、あの会場で優勝を勝ち取ったチームを簡単にあの会場から連れ出すことは困難になるため、主催の当初から<場外ルール>を設定させて頂いた次第です」
「つまり?」
「真の優勝者を、王族自ら招待したい次第です。」
「チームで少々、相談させてください」
「フウマ、リカ、これから王宮に向かうが構わないか?」
「チャーター便と宿屋の女将には連絡して頂いた方が良いです。心配されてるので。」
「女将さんには、城下町の見学で今晩は帰らないと伝えて貰うのがよいです。」
「メトロポリタン侯爵様、我々は喜んで招かれたいと思います。ただし、御者に<今日は3人で城下町に宿泊する>と伝えてください。宿屋の女将にも彼が言づけてくれます。」
「承知した。それでは王宮へ向かおう」
ーーーー
「大変申し訳ないですが、先ず、皆様には20人前程度のデザートの製作に掛かって頂きます。それが終わり次第、晩餐会の末席になりますが出席して頂いた上で、王族の方より言葉を賜れる次第となります。」
「レシピの秘匿性についての配慮はあるのでしょうか?」
「材料、調理器具を使用して頂いて結構です。その際に極めて特殊な調理段階が必要であれば、人払いをして頂いても結構です。特に問題が無く、人手が必要な場合にはお申しつけいただければ支援させます。」
「分かりました。材料と竈をお借りできれば、あとはこちらのチーム3名で作成を終えます。そのような進め方で宜しいでしょうか?」
「問題ありません。ただ、もし王族の方達から、改めて要請があった場合には、今回とのコンテストとは別の形での契約などが発生するかもしれませんが、それにつきましてはチームの皆さまで別途ご判断いただいて構いません。」
「では、このメモにある材料を使わせて頂きます。コンテストのために予め用意した分は消費して構わないと考えますが、不足分はこちらの食材を使わせて頂きます。」
「承知しました。終わりましたら扉の外に控えている執事にご連絡ください。」
アルさんが貴族と丁寧に交渉してくれて助かるね。
私は名前以外は、今のところ性別もばれてないはず。
馬車の会話も声の音程を落として、小さくしゃべったしね。
この変装もあるから、ロメオ王子がでてきても、すぐにはバレない筈!
「よし。じゃ、3人でちゃちゃっと済まそうか。作り方は昨日の通りだよ。
砂糖の粉末化と氷関係の準備はフウマにお願いする。
ホイップクリームの泡立てはアルさんにお願いしたい。
他のカスタードメインの生地やクリームは私がやるよ。」
「「ハイ」」
体感で30分ぐらいで仕込みは完了。
後は、それぞれのクリームを冷やして適当に固めてから、
白鳥型に盛り付けて、粉砂糖を振りかけてお終い。
たた、数が多いからね。
なんだかんだで2時間近く掛かっちゃったよ。
鉄板は持って帰るとして、後片付けはここの料理人にしてもらおう。
廊下に立ってる執事に連絡をしよう。
「準備終わりました。氷の上の台の上に20人分セットしてあります。温かいところに置くと融けてしまいます。また過度な湿気では外側が柔らかくなるので保管にはご注意ください」
「承知しました。料理人に言づけますので、貴方達は私についてきてください。」
なんか、王宮の勝手口みたいなところから入って、廊下をぐるぐる通らされたから、ここが王宮のどの辺りに位置するか良く判らない。
そして、ここが何階に相当するかも判らない。
こりゃ、広くて攻略するのは大変だね。
暫く歩くと、跳ね橋を抜けて城門の正面みたいな入り口に出た。
階段を登ってきた感じからすると、調理場が一階で、ここが2階なのかな。
この2階の受付となる広間を抜けて、さらにどんどん進むと大きな大きな食堂の入り口へ出た。ざっと、50人ぐらいは座れそうなテーブルとイスの量。日本だと結婚式場の会場入り口とかがこんな感じ。
うちの関所の館とは大違いだね。
「ここでお待ちください。」
「承知しました」
なんか、晩餐会の前の控室みたいなところで待たされた。
さっき、ちらっと見えたんだけど、もう料理は個別に並んでたんだよね。
ああ、でも10人分も無かったから、まだまだ準備が整って無いんだろうね。
何せ、20人分も作ったんだしさ。
「お待たせしました。どうぞ、こちらになります。」
あれ?5人分ぐらいしか食事ないじゃん。
私達3人は立って見てろってこと?
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




