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異世界で気ままな研究生活を夢見れるか?〜魔法と理系の知識でゼロから生活を立ち上げる〜  作者: tinalight


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3-51.視察(1)

さて、サイナスでフウマと合流だ。

<<フウマ、今、大丈夫?>>

<<大丈夫だよ。姉さんどうしたの?>>


<<街の門が閉まってたから、空から侵入したけど、どうしよう?>>

<<俺がランドルさんにどう説明したらいいか、考えて行動してる?>>


<<宿屋を教えてくれればいいかなって>>

<<そういうことか。じゃ、ちょっと外に出るよ。街の真ん中辺りに広場があるの判るかな。そこで合流しよう>>

<<おっけ~>>


ーーーー


馬車による流通と倉庫群のために作られたような街だね。

街の規模は大きいけど、真暗なんだよね。

華やかな賑わいというより、倉庫街みたいな感じ。

穀物とネズミ防止のためか、煉瓦づくりの建物が多いね。

でも、きっと単純な日干し煉瓦だろうから、水害に弱そう。


馬車同士のすれ違いのし易さや、方向転換を考えると、道路同士の平面交差は不自由だから、ロータリー方式で進路を変えられる交通網が整備されてるね。交差点となる場所の面積が結構広くなるけど、あらかじめ整備されていれば問題ないんだよね。

きっと、フウマの言う中心の広場ってのは、

街の中心部でいろいろな方向へ延びる道が集まっているから、

ここでいいんだと思う。


<<姉さん、どこ?>>

<<広場のロータリーの中心>>

<<そこから南側に伸びる道の右側にいるから来て>>

<<おっけ~>>


ーーーー


「フウマ、久しぶり!」

「(姉さん、姿!)」

「(あ、ごめん。ここで解除していい?)」

「(夜で人通りも少ないけど、ちょっと裏の小道に入ろう)」

「(うん。いろいろ迷惑かけるね。)」


念のため、周囲を確認してから<光学迷彩>を解除する。


「姉さん、いろいろ言って悪いけど、

ここは敵国だし、姉さんの行動は普通じゃないから気を付けてもらえるかな。」

「あ、うん。不味いときは直ぐに<念話>で注意してね。」


「王子の誕生会に呼ばれて一緒に城下町へ行ったときと同じやり方で、俺が先導するけどいいかな?」

「それが安心できていいです。お願いします。」


「気になる点もいろいろあるかもしれないけど、その場でいろいろ言うのを控えてくれると助かる。あとで一つずづ説明するから。」

「わかった。で、お腹空いた。寒いから寝る場所も欲しい。」


「夕飯食べてこなかったの?」

「フウマに会いたくて急いで来た。」


「そ、それは嬉しいけどさ。こっちの食事は姉さんの口に合うものは殆どないよ。いいかい?」

「我慢する。薬は長老とステラからいろいろ貰ってきてある。」


「分かった。先に宿屋を探す。次に食事が出してもらえるか確認してから、外で食べるか、宿屋で食べるか決めよう。」

「うん。」


繁華街っぽい通りもあるんだね。お酒を出す店が何軒か並んでる。その先はきっと色町なんだろうね。手前を逆方向に向かうと宿屋街みたいのが見えてきた。

でも、どうみても、こう、民泊みたいなさ、宿屋っていうより、立地が良いから客を泊めて小銭を稼いでる風な感じ。

大丈夫かね?


「姉さん、何か<どうしても譲れない物・こと>ってある?お風呂とか、臭いとか、虫とか、ベッドの硬さとか。」

「いつもの関所の部屋ぐらいでいいよ。レイさんの所とか、ああいうのは望んでないよ。」


「姉さん、ごめん。

あそこは貴族の屋敷の一室だよ。メイドの大部屋だって貴族の従業員用なんだ。

姉さんが関所に行く前に立ち寄ったキリギスの宿屋があっただろ?あれでもキリギスの治安が良くて、婦女子が一人でも泊まれる贅沢な場所だったんだよ。

ここは農業従事者、運搬等の使役労働者、隊商の護衛となる傭兵とか、そういった人が殆どで、たまたまここに泊るしかない商人や貴族は知り合いの家に泊るのさ。」


「じゃ、外で寝るのと変わらない?」

「外は寒い。獣がくるかもしれない。」

「でも、宿は臭くて、治安が悪いんだよね?」


「じゃ、第一に臭(にお)い。次に治安でいいね?寒さと食事は優先順位の外ってことで。」

「わ、わかった。一応、治安って、手籠めにされるとかあるの?」

「姉さんは女性だったね。変装しないと犯されるよ。

当然、結界張って罠に嵌めて奴隷にしてもいいよ。

その辺、獣と一緒だから自衛してくれるよね?」


これは考えてなかった。

普通の異世界転移とかは、ここから始まるんだよ。

ユッカちゃんと合流とかありえない話だったんだ。

それに、キリギスも城下町も国の有力者のおひざ元だから治安も良かったんだね。

そういえば、エスト達が奴隷として売られそうになったメルマの宿屋も結構いい値段とってたもんね。あそこの食事も酷かったなぁ・・・。


「いい。自衛する。あと、変装道具頂戴!」

「用意してきてないの?」

「ごめん。準備不足。この貴重品が入ってる革袋も危険かな?」

「狙って罠に嵌める気がないなら、盗られるか強盗に遭う前提だね。僕らとピクニック気分で出かけてきた?」


「フウマ、ごめん・・・。なんでも言う通りにするから面倒見てください。」

「姉さん、『なんでも言うこと聞く』なんか、この世界で簡単に言っちゃダメだ。奴隷にされて人生そこでお終いだよ。相手を殺してでも助かるか、死ぬ気で逃げ続けないと。とにかく、今日は今から泊まれる宿を探すよ。二人で泊ろう。」


「ごめんね、ごめんね、ごめんね・・・。」

「姉さん、僕はそのために王子から遣わされてきてるんだ。そこだけは信じてていいよ。」


フウマが裏仕事用の装束を貸してくれることになった。

明日以降の私の変装は雑貨屋が開いてからでないと、何も対処ができないってことで、先ずは保留になった。。

宿屋もこんな時間だと『準備が出来ないから』って、何軒か体(てい)よく断られ続けて、最後に『納屋ならいいよ』って、『一人銀貨5枚の食事なし。先払いで。』って所が見つかって、そこで宿泊することになった。

こんなの宿じゃないよ。

二人で小金貨1枚ってさ・・・。

なんなんだよぅ・・・。


「姉さん、後は食事だね。どうしたい?」

「どうって?ここでは食べられないんでしょ?」

「食べないか、嫌な思いしてまで外に食べに行くかだよ。」

「フウマはどうするの?」

「ランドルさんの召使に伝言もしなきゃいけないし、一人ならどんな所でも食事をして帰ってこれる。」

「私もついて行ってもいいかな?」

「2つだけ守ってくれるならいいよ。(1)姉さんは喋らない。声を出さない。(2)何かあったら、どんな魔術を使ってでもいいから全てを投げ捨てて、命優先で逃げ切ること。いいかな?あと、この先、しばらく僕の弟扱いね。」

「ハイ。オネガイシマス。」


こんな時間といっても、体感で夜九時ぐらいかな?

怪しげな繁華街以外は路上の客引きか娼婦が立っているぐらい。

それでも結構寂れてて、賑やかではないね。

何か事件があっても誰も証人がいなさそう。


「この店に入る。ついてきて」


黙ってコクっと頷いて、フウマの後をコソコソとついていくだけ。ターバンのような覆面から目しか出してないから喋りさえしなければ女性ってばれないとは思うんだけどさ。

割とこざっぱりした店で、明らかに荒くれ者って雰囲気のグループは居なかった。けれど、田舎で数軒しか営業していない深夜の飲食店で、よそ者は浮いた存在だったよ。

店の主人なのか料理長なのかはカウンター越しに忙しく働いていながら、私達が入るとチラッと横目で確認していた。

フウマは知った風を装っているのか、奥まった台所に近い、薄暗い場所に空いている席を見つけると、そこへ腰かけた。私にも手振りで、サッサと座るように指示する。

何か合図があったのか、上品そうな感じのウエイターが私達のテーブルに注文を取りに来た。


「飲み物と軽い食事をください。俺にはビール。弟のコイツはホットワイン。もつ煮とかの味の濃い物と何か温まるスープが欲しい。」

「お兄さん達、ここいらで見ない顔だね。先払いでいいかな?」


「ある物を出すだけだろ。都度精算で構わないから、物を確認させて欲しい。」

「では、<金があること>を先に見せて貰ってからでもいいかな?小金貨1枚だ。」


え~。なんなの?よそ者価格?

フウマが私に『動くな』って、手で合図を送る。

何もせずにフウマに任せるしかないね。


「ここにある。注文を頼む。」


フウマが懐の革袋から小金貨1枚をそっと机の上に出す。

そして、その出した小金貨の上に乗せた人差し指を動かさない。


「兄さん判ったよ。美味かったら追加で注文してくれるよな。」

「ああ、そのときはサービスしてくれよ。」


私の感覚ではついていけないやり取りがされてるんだろうね。

黙って従うしか無いさ。

なんか、すっごい疲れる。


しばらく待たされてから、先ずは飲み物が来た。

フウマは黒っぽい、茶色っぽいビール。金色じゃないんだね。

私はホットワインってのが来た。こんなの漫画やドラマの世界しか知らないよ。

初めて飲んでみるさ。


え、なにこれ、美味しい。

というか、フウマが気遣ってくれた通り、とても体が温まる。

体に染みる味っていうのかな。なんか優しさに包まれる気がするよ。


「味はどう?」


私は目で笑顔を作って、コクリと頷く。


「そう、良かった。美味しかったら、飲み物も食べ物も追加で注文する。

明日中にはミラニアか城下町まで抜けていろいろ準備するから、良く栄養を摂って、体力だけはつけておいて。」


再びコクリと頷く。

この後出てきた食べ物はとても濃い味付けで、

お酒を飲むための辛みを重視してるかんじなのかな?

あと、海が近いから塩が潤沢なのかもしれないけど。

羊のソーセージとかモツが結構でてきてたから、

この辺りは毛織物が特産物として得られるかもしれないね。

追加でチップを支払って、小金貨1枚と銀貨1枚。

大きな揉め事もなく店を出た。


「姉さん、ありがとう。」

「何が?」

「いろいろ我慢してくれて。」

「ううん。フウマに助けて貰ったよ。感謝するのはこっちだよ。」

「僕は全力を尽くして姉さんを守る。でも、姉さんの協力が無いと守りようがない場合が多く出てくる。だから協力してもらえることは絶対なんだよ。」

「この先、何日かあると思うけど、よろしくお願いします。」

「うん、宿に戻って寝よう。」


フウマが途中から<僕>って言うんだよね。

関所で私と接してるときは<俺>だったのに。

子供っぽいのではなくて、逆に大人っぽい静かな対応だった。

私と同列で扱ってもらいたいがための<俺>が、

自分のスタイルを確立していて、

一人の女の子をお客さんとして扱うために

<僕>という言葉に自然に変化してきたのかな?


なんであれ、久しぶり自分のちっぽけさを思い知ったよ。

あの関所は何かが違ったよ・・・。


いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。

今後とも頑張って続けたいとおもいます。


また、誤字・脱字の報告ありがとうございます。

作者自身も気が付いたときはなるべく直すよう、心がけます。

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