3-30.飛竜見学会(4)
あとは、飛竜隊と合コンが終われば、
飛竜見学会としての目的は達成。
ステラは無事に飛竜を救出できたかな・・・?
「よし!先ずは、砂糖を買いに行こう。それが済んだら今回の出会いを記念して皆さんへのプレゼントを差し上げたいとおもう。」
もうさ、砂糖ってお金があると結構買えるんだね。20kgぐらいありそうな袋を金貨20枚で購入。物価を単純比較できないけどさ、砂糖200万円分とか買わないよ。日本で20㎏買っても数千円で済むけどね。なんか感覚が付いていけない。
次はショッピング。ランちゃんは服を買って貰ってた。中古品でそのまま持ち帰ることができる普段着。それでも金貨数枚になった。エルフの子らは弓が欲しいって。ガイアさん、マッシュさん、オルテガさんが買ってくれてた。とても腰のしっかりした弓で、『剛力の弓兵ですら苦労する強さの弓だぞ?』とか、驚いていた。
「リカさんは何が欲しいの?」
「そんな。飛竜を見せて頂いただけで十分です。」
「美味しいお菓子を紹介してもらったお礼だと思って受け取って欲しいな。」
「それでしたら・・・。<しょうゆ>とかあると良いですね。」
「それは、どういった物か、教えてくれるかい?」
「故郷の国で使われていた調味料の一つです。魚料理に合うのです。」
「スレイ隊長!<しょうゆ>という調味料に心当たりはあるでしょうか?」
「いやぁ、聞かないな。<こしょう>とかの香辛料の一種か?」
「リカさん、どうなの?」
「バルサミコ酢のような黒っぽい、ドロッとしたものです。ただ、ブドウの果実ではなくて豆と塩を原料とするため、すこし香ばしい香りのする液体調味料です。」
「なるほど。ロメオ、さっき砂糖を購入した商店街なら輸入の食料を扱っている店が多くある。そこに行って見るのはどうだ?」
「承知しました!」
で、二人で商店街をぶらぶらしたんだけど、醤油は無かった。胡椒とか各種スパイス、あと紅茶とかコーヒー、カカオの実まであったんだけどね。シルフが言ってた海を越えた先にある大陸との交易が無いんだろうね。
「リカさん、無かったね・・・。」
「いいえ。こんなに長い時間一緒に探して頂いてありがとうございます。異国のいろいろな食材を見れたのもとても楽しかったです。」
「他には何か代わりに欲しいものはないかな?」
「あ、いえ・・・。それにもう・・・。そろそろ出発しないと関所が閉まってしまいます。」
「何か記念に残る物でもあげられればいいんだけどね。」
「本当に大丈夫です。お気持ちだけで結構です。」
「うん。皆を待たせてるし、そろそろ戻ろう。」
「はい。」
ステラチームがどういう動きだったか判らないけど、モリスには早馬が飛んでるし、一方、この<しょうゆ>作戦で結構時間を稼げたんじゃないかなと思ってる。行きと同様に、こっちは馬車。飛竜隊の人たちは馬なので分かれて移動だ。
一応、モリスに話は通しておこうかな。
<<モリス、今話しかけて大丈夫?>>
<<大丈夫です>>
<<既に早馬で連絡が届いているかもしれないけど、今から全員で関所に移動する。で、クッキーを作ることになったよ。宿泊は娼館の空いた部屋になる。夕飯は未設定だけど、昨日と似た感じでいいと思う。砂糖を20㎏くらい買って貰っちゃったから金銭面は気にしないで。>>
<<承知しました。<クッキーを作る>点に関して、詳細を伺っても宜しいでしょうか。>>
<<今日の飛竜見学会の後でご飯を食べたんだけど、クッキーがとても気に入られちゃってね。お土産に持って帰るんじゃなくて、作り方を教わっていきたいらしい。私は『良く判らないけど、砂糖を使ったお菓子』とだけ言ってある。
ゴードンの所に押し掛けることになるけど、<領主および王国からの許可が出ないので、作り方は教えられない>ってことで話を進めて欲しいの。モリスの権限で<個人的なお付き合い>として、たっぷりとお土産を差し上げる方向で納得してもらいたいの。>>
<<承知しました。各種準備を進めます。>>
<<ありがと。あ、ステラ達は出発したかな?鉢合わせは不味いから。>>
<<もう無事に帰還されております。ステラ様が珍しく疲労困憊しております。『救出自体は上手く行ったけど、飛竜の族長の所へヒカリさんに行ってもらう必要がある』とのことです。>>
<<流石だね。ステラが食べたいものとかあったら、それをゴードンに作って貰って。美味しいもの食べて寝るのが疲労回復にいいから。>>
<<ああ!少々意地汚くて申し訳ないのですが、ステラさん達が飛竜のお土産に持って行ったクッキーが大量に余っております。今回の件で上手くお土産に代えたりしても宜しいでしょうか?>>
<<ユッカちゃんとお妃様で食べきれないくらいなら使いまわして良いよ。あのお菓子は湿気に弱くて、フニャフニャになっちゃうんだよね。まぁ、軽くフライパンで焼きなおせばいいんだけどさ。作り置きには不向きなお菓子なんだよ。>>
<<承知しました。その辺りもスレイ様達一行のお土産として差し上げる場合に注意をさせて頂きます。>>
<<うん。いろいろ大変だけどお願いね>>
そっかー。
私が飛竜の族長に会いに行くことになった経緯はおいといて、そもそも念話を通せるほど飛竜を回復させることができたし、族長に会うように言われるぐらい信用されたってのは凄いよ。
その族長が住む場所が判らないのと、飛行術で近づけるか判らないね。作戦練ってチーム作って再出発だね。フウマ達も帰って来るし、地政学者が何か知ってるならその情報も役に立つだろうしね。
よし! 後は合コンの後片付けだけだね。
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「スレイ様、本日は早馬での連絡まで頂き、再度のご訪問ありがとうございます。
娼館への宿泊とささやかながら夕飯の準備をさせて頂いております。」
「モリス殿、いろいろな世話に関しての迅速な対応に感謝する。それで<クッキー>なるお菓子についても伝言をしたはずだが、何か準備出来ておるか?」
「はい。まず、<クッキー>なるレシピに関しまして、領主が特別に製造権のみをエスティア王国より許可頂いておるものでして、今回は<私用に供する>ことで特別にゴードンに作らせたものでございます。リカの無知により飛竜隊の皆さまへご迷惑をおかけしましたことお詫び申し上げます。」
「そうか・・・。皆で作らせてもらおうと思ったのだがな・・・。」
「その様な品物ではございますが、<個人的なお土産>として、飛竜隊の皆様にお持ち帰り頂くことは可能でございます。領主代行権限を使用しまして、厨房にある材料の全てをクッキーの製作に投入させて頂きました。」
「む。というと?」
「はい。こちらの木箱に乾燥させたハーブと共にお土産の準備をさせて頂きました。5つの箱に分けてありますが、先ずはスレイ様にお預かり頂ければと思います。
また、<クッキー>は湿気に弱いので、もしお手数で無ければ軽くフライパン等で温めて水分を飛ばした後、そこから一度冷やして頂ければ、カリッとした食感が戻るとのことです。」
「なるほど。ロメオ、リカさんの勘違いもあり、皆で一緒には作れないそうだが、構わないか?」
「はい。モリス殿、私が無理を通そうとしました故、今回の再訪問となりました。この件に関してはリカさんに非はございませんので、領主様へもよろしくお伝えください。また、本日頂きましたお土産についてですが、高価な材料である砂糖を多く使われているとのことですので、本日市場で購入した砂糖を代わりにお納めください。」
「ロメオ様、今回の件はうちのメイドの不手際ですので、こちらの<クッキー>はあくまで謝意として受け取って頂ければとおもいます。」
「いや、モリス殿が受けとれなければ、リカさんに全て渡すことにしよう。それでも良いでしょうか。」
「いえ。この者では個人の荷物置き場も無く、勝手に調理場を使用することも許されておりませんので、領主代行としてお預かりさせて頂き、必ず領主へ報告させて頂きたいと思います。ありがとうございます。」
「モリス殿、配慮いただきありがとうございます。
そうだ、リカさんにプレゼントをあげられなかったから、この指輪を記念にあげようとおもう。以前、ロメリアの首都で開催されていた骨董市で買ったもので、古びているけど、この龍のデザインが気に入ったんだ。貰ってくれるかな?」
「え?私にですか?」
「うん。砂糖や<しょうゆ>より価値が無いかもしれないけど、飛竜をとても気に入ってたみたいだから、これも龍繋がりでどうかなって。」
「ロメオ様、とても貴重な物ありがとうございます!
モリス様、私が頂いても宜しいのでしょうか?」
「リカの誠意が通じたと思って良いのでしょう。おまえが無くさぬよう大事にするといい。」
「はい!」
これで合コン自体は円満に終了だ。お互いカップルを作ることが今回の合コンの目的じゃないのだから、カップルが出来た数とかそんなのどうでもいいよね。てか、飛竜隊としたら、カップルなんかできちゃ不味いんだろうしさ。
飛竜隊との合コンで貴重な時間を使ったけど、多くの情報が得られたから良しとしよう。明日の朝におわかれしたら、領主としての仕事の再開だ!
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




