3-13.妖精との対話(2)
ウンディーネとの対話。
なんなんだろうね?
「ヒカリさんや、2-3個お尋ねしたいことがあるのじゃ。答え次第では詳しく聞くことになるかもしれんが、よろしいかのぅ?」
「うん。<ミルクテロン>が美味しいから大丈夫。足りなかったらクッキー出してもらう。」
「ありがとうなのじゃ。
先ず、我々妖精の長が特定の人物を支援したり、あるいは特定の人物に支配されて利用されることは無い。これまでも無かったし、これからも無い。それはお主も感じてる通り、この世界に住む人間達にとって、過大な力をもたらすからじゃ。そこで一つ目の質問なのじゃが、<ヒカリは我々に何をして欲しいのじゃ?>」
「難しい質問だね。助けて貰っていることには感謝してる。けど、無理を言って、ここに居て貰っているつもりは無いし、居心地よく暮らしてもらえるように配慮しているつもり。<共生>っていうのかな。そういう感覚なんだけど、公平じゃないかな?」
「ワシらが居なくても大丈夫ということじゃろうか?」
「ここを去る事情が出てきたのならば、それはとても残念だけど仕方ないと思う。大丈夫かどうかでいうと、残ったメンバーで何らかの方法で解決して前に進むよ。」
「とすると、<これまで通りの平和な生活を共にしたい>ということじゃろうか?」
「あー。ごめん。これまでの支援には感謝してるし、似たような支援をしてもらえると助かる。けれど、この先2-3年は戦争になるだろうね。双方の被害を最小に留めるようにいろいろな策を講じていくつもりだけど。そして、そのとき、何らかの支援をお願いするかもしれない。これは私の楽観的な観測でも貴方達を巻き込んでしまうことになる。」
「我々妖精を戦争の道具に利用したいということかのぅ?」
「ううん。直接的な道具とは考えてないし、制限を課すつもりもないの。
でもね?
例えば、自給率の向上のために、農地の潅水とかを支援してもらうってことは、国の暮らしを良くするとともに、国力が増強されて、戦争で有利に働くんだよね。
例えば、冷蔵庫という技術が確立されれば、皆の暮らしが豊かになるし、疫病も流行りにくくなる。その一方で、戦地でも食料の確保と保存が容易になって、有利な戦略を立てることができるようになる。
平和なうちに国力を増強するってことは、戦争の準備期間にすぎないと思ってる。」
「そのような回答を貰うと、お主は戦争のために我々妖精の力を最大限に活用したいと思っていると聞こえてしまうのじゃが・・・。」
「私は嘘を言ってまで、貴方達に協力して欲しいとは思わない。ただ、そこに至る結果として得られる状態を予測せずに判断したり、行動したりしない。当然予想できない事態に巻き込まれることはあるけれど、予測できる範囲を伏せて、自分だけが得をするような行動は公平では無いと思う。」
「先ほどから、しきりに公平という言葉を使っておる様じゃが、何か信念があるのじゃろうか?」
「私は自由の中でこそ、いろいろな楽しみを見いだせるし、前向きな物の考え方ができると思っている。その対極にあるのが不公平な状態だとおもう。奴隷制度とか戦争による支配は人を強制的に従わせる手段と思っている。それらに打ち勝つために、いろいろな事と戦っていくべきだと思っている。」
「まとめると、公平な今の状態を維持したいし、そのためには不公平な状況にならないように立ち向かうことも必要で、妖精に支援を求める場合もあるということかのぅ?」
「大体あってる。」
「分かったのじゃ。」
「他の質問は?」
「無くなったのじゃ。」
「本当にいいの?」
「少なくとも、ワシはお主がやりたいことを理解出来たのじゃ。」
「僕も無いよ。人間に比べて十分に長い時を過ごせるし、いろいろな物ごとを見てきたからね。今の話を聞いてこれからが楽しみだよ。」
「シルフがここに居るなら、私もここに居るわ。」
「私は、可能であればナイトメアの消息が掴めるまではここに滞在させて頂きたい。」
「妖精の長の方々には、今後もお世話になると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。」
「で、モリス、4人の妖精の長たちの部屋割りとか住居はどうなってるの?」
「ウンディーネ殿とシルフ殿はご自身で野宿されております。クロ殿とライト殿はこの領主の館に一室設けております。」
「部屋割りとか、住居とかどうしたい?シルフとライトは結婚とかするの?よくわかんないんだけど。」
「ワシは野宿でも構わんのじゃが、今後森に出入りする人間が増えて、ワシの事が漏れるおそれがあるのじゃったら、皆と同じ家に住んだ方が良いと思うのじゃ。」
「そっか。妖精さん達には悪いけど、この館の客人より、指南役とか雇用者、その家族扱いになって貰おうか。見知らぬ人が領主の館の周りや領地の森をウロチョロしてるのは良くないもんね。
長老はハーブの名人として、エルフの子ら3人の指南役。クロさんはフウマと私の剣術の指南役。ライトはユッカちゃんの姉妹。シルフはクロさんの息子。そんなんでどう?それなら一緒に暮らしてても問題ないし、今までとほとんど変わらないでしょ?」
「「「「承知しました。」」」」
「いや、そんな畏まらなくていいから。とすると、部屋割は、クロ、フウマ、シルフが一緒の部屋で、私、ユッカ、ライトが同じ部屋でいいかな。あと、ニーニャとステラは今まで通り二人の部屋でいいのかな。モリスどう?」
「そのように準備を進めます。」
「じゃ、最初はそれでいこうか。シルフとライトで同じ部屋が必要だったら、何か考えるから言ってね。」
「ヒカリ、僕ら妖精は人間ほど短命じゃないから、ここで暮らして過ごす時間は大きな問題にならない。肉体的な接触はあまり意味をなさないんだ。お心遣いには感謝するよ。ありがとう。」
「よしよし。これで秘密もある程度隠蔽しやすくなったかな。
あとは、先生や家族としての呼び名を統一しておかないとね。」
「ヒカリ殿、我々は昨日のウンディーネとヒカリ殿の議論を聞いております故、ヒカリ殿とその仲間達との<共生>を前提に考えておりますので敬称は不要です。
ウンディーネのことは<長老>という呼び名で問題ないと思います。
逆に、シルフやライトに殿や様の敬称を付けるのは、人間社会で不審に思われないかが心配ですな。私に関しては、剣術の教官として<クロ先生>と呼ぶのが自然であれば、私はそれで構いません。」
「そっか。ユッカちゃんだけ、<ちゃん>付で、シルフを呼び捨てで、ライトは<さん>はいろいろ不味いか。呼び捨てか<ちゃん>で統一がいいね。でも、大丈夫?」
「僕はどっちでもいいよ。」
「私はちょっと、かなり、結構、全面的に、嫌ですわ。」
「ライトさん、嫌だとしたら、その器から入れ替わらないと、いろいろ秘密がばれて、面倒なことに巻き込まれる。例えば、第二のナイトメアが現れて封印を試みるとか。」
「ば、だ、が・・・。誰が封印なんか!何年経ったと思ってるのよ!」
「え?」
「ヒカリ、ライトが閉じ込められて100年以上経ってるよ。」
「クロさんが封印されてからは?」
「それも100年くらいは経ったんじゃないかな。」
「シルフがライトを探して100年近く経ったってこと?」
「そうなるね。僕たち精霊にとっても、長い時間だったよ。ヒカリ達にはとても感謝してる。」
「クロさんも封印されてからってことは、エスティア王国の風土病もそのころから活性化してるってことかな。」
「そこは僕には判らない。当然ナイトメアがどこまで仕掛けたのかも判らない。ライトの封印の時期とナイトメアの噂の時期はズレがあるしね。」
「ナイトメアが長寿の種族だったら、まだ生きてる可能性があって、ライトさんやクロさんを利用してるだけの魔術師だったら、もう死んでるか、代替わりしてる可能性もあるのか・・・。」
「あまり大きな問題ではないけど、そうなるね。」
「あ。そうだね。話を戻そう。<ライトさんはどうしたい?>人族にばれて、余計な戦争とか、妖精と人間の対決とかになるのはダメね。それ以外だったらなんでもいいや。」
「う~ん・・。この器は割と素敵な形なの。だからユッカちゃんと姉妹でいいわ。でも<ちゃん>で呼ばれるなら、もっと人間らしい可愛い名前がいいわ。」
「え?ライト兄弟、Dr.ライト、tinalightとかあるよ。」
「ヒカリさん、前の人たちは苗字、最後のはサーガの作者の名前ね。思考が漏れてるわ。」
「あ・・・。思考ガード甘いのかな・・・。」
「姉さん、先に進もう。サーガの中から可愛い名前を挙げればいいじゃないか。」
「イライザ、サリー、ルンルン、モクレン、エンジュ、ランゼ」
「もう少し無いかしら。短めがいいわ。」
「シータ、パズー、ラナ、コナン、クラリス、ルパン」
「同じ監督作品とか思考が漏れてるわ。サーガを作った人のことかしら。でも可愛いわ名前ね。ラナとかルパンが特にいいわ。」
「ごめん。ルパンは止めて。ラナでお願い。」
「シルフはどう思う?」
「どちらも素敵だと思うけど、ヒカリなりの理由があるならラナでいいんじゃないかな。」
「わかったわ。ラナ<ちゃん>でいいわ。」
「じゃ、これから、ライトさんのことを<ラナちゃん>と呼ばせてもらうので、皆さんお願いします。シルフは男の子の設定で<シルフ>のままで大丈夫かな?あと、風の妖精のシルフって思われたりする?」
「ヒカリさん、うちのエルフの子達でも、長老やシルフさんのことを<妖精の長>とは認識していませんわ。逆に、妖精のシルフをイメージするからシルフという名前がよく似合ってるって思われるかもしれません。」
「じゃ、長老は<長老>、クロさんは<クロ先生>、ライトさんは<ラナちゃん>。シルフはこれまで通り<シルフ>でいこう。」
「「「「「「「ハイ」」」」」」」
「ニーニャと妖精さん達で、冷蔵庫、高温炉、空飛ぶ箱の実現に向けて、この後このまま話を進めたいけどいいかな?」
「私は構わんぞ」
「我々もいいのじゃ」
「ありがとうね。」
いつも読んでいただいている皆様には感謝しています。
今後とも頑張って続けたいとおもいます。




