3-02.冒険の準備
関所の運営とか、いろいろ準備はある。
あるんだけど、まぁ、メルマが落ちてるからゆっくりでもいいんだよね。
無理ない範囲で進めてもらって、冒険に出かけよう。
「みんな、ただいま~。今度こそ本当にただいま。」
「お疲れさまでした。パーティーの後片付けに1日かかってしまいましたので、領地の開発はあまり進んでいませんが、皆さん、大変喜んでおりました。『また、こういうのをやりたい!』と。」
「そっか。良かった。関所や領地の運営で困ってることある?とくに資金面で。」
「軌道に乗り始めると、大きなお金は必要ございません。また、既に娼館からの利益が上がり始めております。食料や農地用の機材、種などは日々の運営資金の範囲で賄えています。」
「そっか。レイ達もすごいね。無理しないように言っておいて。他に困りごととかは?」
「困りごととというか、要望としまして、
1.開墾用の牛が不足するので、追加で群れが欲しい
2.イノシシの養殖という話があるなら面白い。2か月後ぐらいには芋の収穫ができるので、実現して欲しい。
3.風車か水車で粉挽できる仕組みを作って欲しい
4.<高温炉>の話を進めよう
5.咳がでる。ここに来てから肺が弱くなったきがする。
6.人口が増えたので、し尿処理のルールが無いのは不味い。ルールを作って守らせて欲しい。
そんなところでしょうか。」
「問題だらけだね。
1.は牛を4群れ連れてくる。囲いの拡張とか区画割はみんなで調整してもらって。ベイスリーさんに指揮とってもらって。
2.は後回し。芋とかは余剰分を倉庫作って蓄えておいて。
3.4.はこの後、ニーニャ、トーマスと打ち合わせを始める。
5.明日からの冒険で解決する予定。いつまでかかるか判らないけど、この関所の奥の森に問題があると思ってる。
6.はモリスに任せた。私の国では指定する管理場を作って、溜めてたかな。溜めたものは定期的に回収して、発酵させてから薄めると良い肥料になるんだよ。これは今飼ってる牛なんかもそうだし、今後始めるイノシシなんかもそう。直接水に流さずに回収できる仕組みがあるといいね。食料のゴミなんかも同じだからよろしくね。臭いは住居が無い側へ風で流すとか。
あ、一度に喋ったけど、速かった?」
「大丈夫です。早速始めます。」
「ステラ、ユッカちゃん、フウマ、牛を集めてくることになった。よろしく。一人一群れで4群れ分ね。」
「冒険にすぐ行きたいから、姉さんは行かなくていいよ。ニーニャとトーマスとの打ち合わせを早く済ませて。」
「お姉ちゃんの代わりに牛引っ張ってくるね!」
「エスト達に、虫よけ、獣除けなど種々秘薬を準備させます。牛はなんとかしますので、早く<地下迷宮>に行きましょう!」
「わ、分かった。がんばろう!」
なんか、みんな冒険に夢中だね。
夢の中だから夢中か・・。
でもね?
人の夢は儚いって読むんだよ・・・。
ーーーー
「ニーニャ、トーマス、例の<高温炉>の話なんだけど、進め方についての相談があるの。」
「「ハイ」」
「炉自体の構造とか組み上げはトーマスさんの担当になると思う。煉瓦の数も相当必要になるから、場所も考えないといけないし、そこに行くまでの道も切り拓かないとね。多分、岩山辺りが鉱物とか鉱石もとれるし、石灰岩もあるから粘土の類も見つかると思うんだ。それか、レナードさんの粘土の洞窟を拠点に煉瓦造りだけ優先するかもしれない。いま、王宮でいろいろあってね。戦争も近いから、どこの拠点にすればいいか確定できてなくてごめん。」
「わかりました。でしたら、先ずはこの関所の竃や水路などの支援をさせて頂きます。弟子には粘土の洞窟で、煉瓦を焼き始めるように伝えておきます。」
「ニーニャには熱源の設計をしてらもわないといけない。ニーニャも知ってる通り、炉を高温状態で持続させるためには燃料がたくさん必要でさ。さらに薪じゃなくて、木炭を使う。木炭を使うには木を薪に変えないといけない。この木炭の消費量がはんぱじゃないことになるんで、アッという間に森がなくなっちゃうんだよ。10年掛からないかな。これって、2つ問題があって、10年ごとに高温炉の施設を作り直して、森を求めて拠点を移す必要があるってこと。もう一つは森から木を無くすと水源や土を肥沃にする微生物がいなくなり、今開拓中の農地に行き渡る水や栄養素が不足して農地が壊滅してしまうのね。」
「それは大問題だぞ。」
「だから、例えば魔石とかを利用して、熱源を共有できる仕組みが欲しいの。火山みたいのをイメージしてもらえればいいんだけど、火山だと人間が死んじゃうでしょ?」
「参考までに、ヒカリの居た国では何を使っていたんだ?」
「石油、石炭、電気かな。前の2つは燃える油とか燃える石と言われていて、植物が一切育たない上に、燃え上がる気体まであるものだから、人は容易に近づけないね。最後の電気ってのは、雷の力をゆっくり、長く、一定にして使えるようにした感じ。これは電気を溜める方法も考えないといけないから、直ぐには燃料として使えないかな。」
「わかった。考えておくぞ。魔石や属性石は誰からもらえるんだ?買うのか?」
「水なら長老、風ならシルフ、魔石は私に言ってくれれば、カバンとかから出すよ。」
「明らかに火が欲しいんだぞ。土や光かもしれんが、その辺りはやってみないと分らないぞ。」
「火の属性石ないね・・・。ユッカちゃんなら出せるかもしれないけど・・・。後で考えておく。」
「そっちを始める前に、関所から岩山への道を作ったり、他のことを進めるぞ。他に何かあるか?」
「あ、開拓者の人たちが、水車か風車で粉ひき所を作って欲しいって。」
「わかった。そっちを先に進めるぞ。」
「ありがとう。」
ーーーー
<<ユッカちゃん、今どこ?>>
<<だめ。話できない>>
<<フウマ~?返事できる?>>
<<ステラは?>>
<<シルフ、みんだどこに居るか知ってる?>>
<<牛に引っ張られてる。僕は牛の行く方向に風を吹かせてる。>>
<<ありがとう>>
なんか雰囲気からすると、えらいことになってるね。すぐに見に行こう。
って、あーあーあー。
100頭ぐらいの群れが暴走してるじゃん!
遠くからでも土埃がみえるよ。あれ、このまま来たら農地も壊滅だし、柵も壊されちゃうよ。どうしてこうなった?
<<シルフ、この暴走は止められる?>>
<<無理に止めると、散り散りになるよ?>>
<<眠らせたりとか、鎮静化は?>>
<<そういうのは、ステラだよ。>>
<<ステラ、牛は良いから、鎮静化の魔法を全体に使って!無理なら、妖精さんに頼んで進行方向に牛の気持ちが落ち着く雰囲気を作ってもらって。>>
<<わ、分かりました。直ぐそうします>>
<<長老、いまどこ?>>
<<畑じゃ。えらいじゃろ?>>
<<東の方から土煙があがってるの判る?>>
<<動物の集団か?あれが来ると、畑が台無しじゃな。>>
<<なにか方法はない?>>
<<シルフとワシで雨を降らせれば止まると思うんじゃ。ちょっと無茶するんじゃが。>>
<<シルフ、長老と一緒に雨降らせられる?>>
<<ウンディーネの力を借りれるならできるね。やろう。>>
うひゃ~~。スコール?なんていうのかね。いきなり土砂降り。
土埃も収まっていい感じ。
そんな訳ないから!もう、でろんでろんのドロドロ。
どこかで作戦ミスがあったとおもうんだよね。
牛は止まったよ。中途半端なところでだけどね。
<<姉さん、何かやった?>>
<<農地を守った>>
<<牛、どうしよう?>>
<<引っ張るさぁ・・・。>>
空飛んで合流。
群れの先頭の何頭かを紐付けて引っ張る。
まぁ、一応動いてくれるんだ。
シルフの温かい風が後ろから吹いてるのもあるんだろうね。
ステラが配置してくれた妖精さんの効果もあるんだと思う。
時間かかるけど、引きずっていこう、そうしよう。
「フウマ、なんでこうなった?」
「急いでたんだ。」
「この量は多いよね?」
「急いでたんだ。」
「他に言いたい事ある?」
「姉さんがなんで失敗しないのか良く判らないよ。」
「いっぱい失敗してるよ。失敗すると悔しいから、次失敗しないように考える。それだけ。」
「分かった。次失敗しないように、考えてみるよ。」
「うん。みんなで引っ張ろう。群れで、ついてきたのだけ回収しよう。」
なんだかんだで100頭ぐらい?10、20、100ぐらいな感覚。
柵の中がどろどろの牛だらけだもんで、ベイスリーさん達も苦笑い。
宅配ピザを頼んだら、ドロドロのパッケージに入って軽トラック一杯分感じ。
『中身はちゃんとしてるんです。気にしないで食べて』って言われてもね。
文句はいわないけど、いろいろ問題あるよね。
悪気は無かったって、モリスに謝っておこう。
「さ、姉さん、出発だよ!」
「お姉ちゃん、試練だよ!」
「私も荷物の準備、終わりましたわ。」
「もう、夜だよ?」
「「「え?」」」
「え?変な事言った?」
「姉さん、洞窟の中は暗いから、夜とか関係ないよ。」
「あ・・・。そうくる?」
「ヒカリさん、何かおかしかったでしょうか?」
「いや、私が悪かった。モリスに謝ってから出かけよう。」
牛のことをモリスに謝った。
そして、ある程度の食料を抱えて洞窟に向かうことにした。
この4人で洞窟探検して、どうなるんだろうね?
そもそも、私は死んじゃうんじゃないかな。
大丈夫なのかね?
皆様、100話を超えて、読んでいただきありがとうございます。
また、30人以上からのブックマーク登録ありがとうございます。
とても励みになっております。
感想、評価、レビューなんていただけると最高かもですが、贅沢は望みません。
第三章も着々と進んでいるのですが、ストーリーとキャラが暴れだしてまして、
道づくりに苦労している昨今です。
分量や更新タイミングが揃わないかもしれませんが、どうぞご容赦ください。




