第二話 参謀たち
koeiの「未完成艦隊」を見ていると、1950年代にはもう、短期決戦もできないくらい戦力差が開いてしまうと書いてありました。
なのですいません、日本の国力を水増しした上、アメリカを国際的孤立に追い込んでしまいました。それでも良くて互角なのだから恐ろしい。
連合艦隊旗艦「播磨」の個室に入った三島はウイスキーをグラスに注いだ。イギリス時代に知り合った友人、白洲次郎が送ってくれたスコッチだ。
軍人嫌いで、陸軍参謀と「殺してやる!」と掴み合いになったこともあったという白洲と友人になるとは、三島は軍の中では相当な異端だな、と言われる。白洲は夫人が樺山家の出であるから比較的薩摩閥に近い立場にあった。三島自身は山陰の出だから血縁的には薩摩閥の要素はないが、外交官だった父が牧野顕伸外相の秘書官をしていたこともあって、やたらと薩摩系の人物に縁があったのである。
「あいつもどうしているかな、吉田総理の補佐官に就いたというが、相当苦労しとるだろうな」
ノックがした。
「俺だ、三島」
入ってきたのは村田重治大佐。連合艦隊航空参謀を務める雷撃屋だ。すでに第一線のパイロットではないが、定期的に操縦桿を握っている。海兵58期では三島の同期だった。
「貴様、同期の俺に挨拶もなく〈播磨〉に乗ってくるなよ。まったく」
「はは、すまんすまん。地上勤務ですっかりぼけてしもうた」
そう言ってもう一つグラスをだし、村田に渡した。スコッチを注ぐ。
「なあ、貴様どう思う」
突然話を切り出された村田は少し嫌そうな顔をした。というのもスコッチに口をまだつけていなかったからだ。
「なにがだ」
三島は村田がスコッチをちびちびやり始めるのを見ながら語りだした。いいか、俺たちの航空戦力は「葛城」級超大型装甲空母が7隻、5万t級の「大鳳」級が4隻、4万t級の「翔鶴」級が4隻。それ以下の空母は噴進式艦載機を運用するには小さすぎる。合計15隻の空母でアメさんにケンカを仕掛けなきゃあならん。
「それは俺とて把握しとる。忘れたか?俺はGF航空参謀だぞ」
「だから聞く。この15隻の艦載航空隊だけで27隻の〈ゲティスバーグ〉級を有する米艦隊をつぶせるか?」
「無理だな」
村田は即答した。「ゲティスバーグ」級だけでなく、「アラスカ」級改装の「カウペンス」級中型空母、「インディペンデンス」級軽空母までいやがるんだ。それらが一気に押し出して来たらこっちが物量でたたきつぶされちまう。貴様が言った15隻、一、二、三、四航戦なら全部噴進機だからまあ、ある程度はやれるだろうが、敵を半減させた代りにこっちは全滅するだろうな。
「ううむ」
三島は頭を抱えて黙り込んだ。圧倒的な米艦隊航空戦力、航空戦だけでは勝てない。やっぱり艦隊戦かな。
「漸減邀撃」
不意に顔を挙げた三島はつぶやいた。とうの昔に葬り去られたはずの戦法。彼らが若いときに習い覚えた、帝国海軍の対米戦必勝法策。
「漸減邀撃?古いだろ。第一その主力は戦艦…」
「そうだ」
三島はうなづいた。空母だけ出撃させて戦艦が内地でのんびりしているのが間違いだ。使える戦力は皆投入する。その大原則を俺たちは忘れてしまっていた。
「なにせ、相手はアメリカだからな」




