第1話 きっと、誰も気づかない
俺の名前は足鷹陽介。中学時代に酷い裏切りに合い心が折れて高校デビューも失敗した人間だ。
高校入学の自己紹介でも影の薄い特性が災いして誰も俺に話しかけてくる人間はいなかった。俺は人間と青春が嫌いだ。
いや、正確には苦手と言ったほうが正しいか。人は皆興味を持った対象の欠点ばかりを見ようとする。だから今、今週の課題である中学校の思い出を書きなさいと言う課題が出されて憂鬱な俺。
中学校にいい思い出がないからだ。俺はとりあえずバレなければいいと偽の思い出を作り上げて提出することにした。
友達はいないがいたことにして。体育祭でも特に目立った活躍をしたわけでもないのに頑張ってチームプレイに勤しんだとか。
「はあ、小学校まではこんなんじゃなかったのにな」
小学校までは良かったのだ。友達がたくさんいてそれなりに運動会や委員会にも貢献して、充実な毎日を送っていた。
しかし、中学にあがり俺の同じクラスにとんでもないオーラを纏ったザ・陽キャと表現すべき強キャラが現れた。
しかも俺と同じ剣道部に所属していて実力も折り紙付き。俺と仲が良かった友達は全員彼に持っていかれた。
彼の名前は天川ヒカル。イタリア人の母と日本人の父を持つハーフにして帰国子女だ。彼のそのネームプレートにつられたのだろう。
クラスの女子たちは皆彼の噂でもちきりになっていた。しかし誰も彼に妬みや陰口を叩くことはない。なぜなら彼はとても性格がいいからだ。
顔もよし、性格よし、成績よし。クラスの一部に彼のあら捜しをする人間もいたが女子に嫌われてすぐに退場した。
「だから正確には裏切りとも言えないんだよな」
そう、ただ彼ら彼女らはカーストが上の人間に集まるのだ。誰も俺が孤立したことには気づかない。なぜなら俺は彼に気に入られていたからだ。
なぜかはわからないが、天川は俺によく話しかけてきた。今日の調子はどうだとか、一緒に素振りをしようとか。
俺はイライラを通り越して呆れてしまった。彼と俺自身の脆くはかない人間関係に。きっと、俺のことを友達として見ている人間はほとんどいなかったのだろう。
時々話すからっと言って、親友になれるわけじゃない。
俺は何人かに話しかけたことがあるが、彼らの目はもう俺を映していなかった。すべて天川を始めとした上位グループに持っていかれた。そして最後の留めとして俺の好きだった幼馴染の綾乃春香が天川に告白した。
天川はその告白を断ったようだが何度か二人が一緒に下校している姿を見てしまった。追撃のように現れたのは俺に対する憐みの嘘告だ。
俺に対して興味がないくせに、俺のことをかわいそうと思った連中が学年一番の成績を持つ女子に俺への嘘告をするように動いたのだ。
そんなものは嬉しくとも何ともないから断ったら、俺が調子に乗っていると判断した連中からの陰口が始まった。俺はこうして中学時代の友人を失った。皮肉なことに天川は俺のことを友達と思っていたようだが。




