第二十六話
あれから神前は進路調査書もちゃんと出したようで、ドヤ顔で俺の元へやってきて「ねぇ、曲とコードついた?」と毎日のようにチャットが飛んでくる。
相変わらず保健室登校なのは変わらないけど、放課後の同好会には必ず来るようになっていた。そんなある日の放課後。
「ねぇ、しゅーちゃん。私もやりたいんだけど。」
と、葉月のひょんな一言。
「何を?」
「部活、っていうか同窓会。」
「同好会な。」
「どっちでもいいや。その会に入りたいんだけど。」
少し考えろ、俺。いいか、部室でエロゲやらギャルゲーをやるような集団に入ろうとしている。
えっと…なんて幼馴染だよ。
「お前さ、何やる同好会かわかってんのか?」
頭の両サイドに人差し指を当てる一休さんポーズを取って数秒考えている葉月。
正直な話、葉月は頭の回転が遅い。多分。いつもそうだ。
こういう時はお茶でも飲んで待つ。葉月のことなんて置いて、久しぶりに飲む緑茶は美味い。家ではウーロン茶か麦茶しかないので、こうして買って飲むしかな…
「JKとセックスするゲームでしょ?」
「ぶっ!!!」(緑茶ハリケーン炸裂)
「!?」
やばい、こいつのストレートさを忘れていた。
葉月の制服を俺が吹いた緑茶でびしょびしょにしてしまった。
恐る恐る葉月に聞いてみる。
「…大丈夫?」
「…じゃ…ない、かも…。」
やってしまったと思い、今日は体育の授業があった俺の体操服を貸そうかと思ったが流石に汗の臭いが臭いだろうなと思いやめた。
「葉月、ごめん。どうしたらいいか全くわからん。」
素直に、何故か堂々とした態度で謝ってみた。葉月は少しむっとし感じで頬を膨らましていた。
「…どうしたら許してくる?」
「送って。」
「え?」
「家まで送ってくれたら許す。」
「いつもやってんじゃん。そんなんでいいのかよ?」
「そんなんがいいの。最近、同好会ばっかりで帰りの時間はバラバラだったから一緒に帰れなかったじゃん。」
「じゃあ、もう帰るか。」
秒で神前には今日は同好会には行けないとチャットを入れた。
「よし、おk。じゃあ帰r…」
「あ、コンビニの肉まんとホットココア買ってね。」
「うっすw」
俺も舎弟じゃねぇか。
*
「ほら、肉まん。」
コンビニの前で嬉しそうに肉まんを受け取り、すぐに頬張る葉月。
「あっつ。」
「火傷すんなよ。」
「ねぇ、しゅーちゃん。」
「あ?」
「なんかさ、青春してる!って感じしない?」
「そうかー?普通じゃね?」
「もー、雰囲気ってもんが無いよね。せっかく女の子がいい感じのこと言ってるのに。」
ほっぺたを膨らます葉月。
しかし、よく見るともぐもぐしているので膨らましてんだか膨らんでんだかよく分からない。
ふと、一生懸命に肉まんを食べる葉月を見て、同好会に入りたいと言っていたことを思い出した。
「なぁ、葉月。お前、どうしてうちの同好会に入りたいなんて思ったんだ?」
「んー、なんとなく。」
「お前、部活とか、同好会とか、なんとなくで決めんのな。」
「うん。」
「そういうもんかねぇ。」
「そういうもんよ。」
少し考える。
「おっけ。んじゃ、早速葉月がアニメ同好会に入ってもいいか、神前に聞いてみるよ。」
スマホを開く。
「58件の未読メッセージがあります」との表示…。
いちいち開くのが面倒なので電話をかけてみる。
ワンコールで出た…。。。
「もしもし!!!!長谷川君!?朝比奈さんと何があったの!?kwsk教えなさいよ!!!」
「何で興奮してんだよ。」
「で、なんで朝比奈さんはそんなに興奮してるのよ!」
「興奮してんのはお前だ、馬鹿。」
「あんなメッセージ来たらそりゃあ興奮もするでしょうよ!!!!で!で!で!どうなの!?」
「何が?」
「二人は幼馴染を越えてどうなったの?」
…。落ち着け俺。状況整理からするんだ。
「なぁ、神k」
「何!?」
「くい気味で来るんじゃねぇよ。まずは落ち着け。お前は勘違いをしている。」
「え、どゆこと?二人はセクロスしたんじゃないn」
「落ち着け、仮面優等生。」
「だって、長谷川君が私に送ったんじゃない。『葉月を濡らしたから責任とって今日は家まで送る』って。あれってつまりはそういうことでしょう?」
全ては俺のミスだった。
「違う。俺が緑茶を吹いちまって、それで葉月が濡れたんだよ。で、一人で帰すのも申し訳ないと思って家まで送ったんだ。」
「えっと、それって…」
やっと理解してくれたか。
「緑茶プレイ?いきなりレベル高過ぎじゃない?」
「お前、どんな脳味噌してんだよ!」
その後、理解力に乏しく、想像力(というか妄想力)豊かな神前早苗に三十分かけての説明をしていた俺はなんだか情けない気持ちにさせられた。
その間、葉月はコンビニでファッション誌を立ち読みしていた。




