第二章:冬の守護(マリア/ロザリア)
オスカーの沈黙の決断は、マリアの人生を静かに変えた。
だが彼女は、その真意を知らない。
ただ、身体の奥に残った“ひび割れ”と、
二度と戻らない何かを抱えたまま、生きるしかなかった。
マリアは聖女だった。
けれど、その使命を“正しく全うできなかった”という事実が、
彼女の中で消えない絶望として残った。
そして同時に、理解してしまったのだ。
リーゼンバーグという家は、
光を掲げるために、誰かを壊す仕組みを内側に抱えている、と。
だから彼女は決めた。
次の世代だけは、同じ道を歩ませない。
“光を生む家”ではなく、“光を守り抜く家”へ変える。
そのためにマリアが選んだ方法は、
聖女を増やすことではない。
聖女そのものではなく、
聖女という強大な神威を宿し、なおかつ拒絶反応で自壊しない、
強靭でしなやかな母体を育てること。
——「守護者」の育成だった。
マリアが目をつけたのは、外の血脈。
聖女の器ではなく、支えるための土壌となる系譜。
その家系から迎え入れられた少女が、ロザリアである。
ロザリアは、生まれた瞬間から自由を許されなかった。
教育という名の調律。
優しさという名の制御。
愛という名の献身。
ロザリアは、自らの魔力を内側に溜め、純化させ続けることを強いられた。
未来に降りる光のための、生ける聖域。
それが、彼女に与えられた役割だった。
けれどマリアは、冷酷な支配者では終わらなかった。
ロザリアの苦痛を理解し、
誰にも見せない場所で、同じ痛みを分け合った。
二人は奇妙な協力関係になった。
犠牲の連鎖を、自分たちの代で終わらせるために。




