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模型(1/10)スケールのアポカリプス  作者: 暁の裏


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第17話 「失われた姉妹」

 古代遺跡で、ルーナは一度目の記憶を取り戻していた。


 そして今、この月の神殿で二度目の記憶を取り戻した。


「全部……思い出したのか?」


「いいえ……」


 ルーナは首を横に振った。


「まだ……まだ足りないわ。おそらく、記憶は五つに分かれている。今取り戻したのは、そのうちの二つ目」


「五つ……」


 悠斗は呟いた。


「じゃあ、あと三つの神殿を探さないといけないのか」


「ええ……おそらく」


 ルーナは頷いた。


「でも、今思い出した記憶は……とても重要なものだった」


 ルーナは祭壇から離れ、神殿の中央に歩いていった。


 月の光が差し込む場所。


 そこに立ち、ルーナは天を仰いだ。


「話すわ……私が思い出したことを……」


 悠斗とセレスティアは、静かにルーナの言葉を待った。


 ルーナは深く息を吸い、そして語り始めた。


「私には……双子の姉がいたの」


「双子の……姉?」


 悠斗は驚いた。


 ルーナに姉妹がいたとは、聞いたことがなかった。


「ええ。姉の名前は……エクリシア」


 ルーナの声が、優しく響いた。


「エクリシア……破壊の女神」


「破壊の女神……」


 セレスティアが呟いた。


「ルーナ様が創造の女神なら、エクリシア様は破壊の女神……」


「そう。私たち双子は、この世界を統べる二柱の女神だった」


 ルーナは目を閉じた。


「私は白い月を司り、生命と秩序をもたらす。姉は黒い月を司り、破壊と混沌をもたらす」


「黒い月……」


 悠斗は空を見上げた。


 今も空には、白い月と黒い月が並んで浮かんでいる。


「でも、私たちは対立していたわけじゃない」


 ルーナは微笑んだ。


「むしろ、とても仲が良かったの。いつも一緒にいた。姉は優しくて、強くて、私のことをいつも守ってくれた」


 ルーナの瞳に、懐かしさが宿る。


「姉は私より少しだけ背が高くて、髪は私と同じ銀色だったけど、瞳は深い紫色だった。その瞳で見つめられると、どんな悩みも消えてしまうような、そんな温

 かさがあった」


 ルーナは語り続けた。


「私たちは、この世界の住人たちを見守っていた。人々が幸せに暮らせるように、二つの月のバランスを保ちながら」


「バランス……」


「そう。白い月だけでは、世界は停滞してしまう。黒い月だけでは、世界は混沌に堕ちてしまう。だから、私たちは協力し合って、世界を調和させていたの」


 ルーナは祭壇の方を見た。


「そして……私たちには、とても仲の良い人間がいた」


 ルーナの声が、さらに優しくなった。


「その人の名前は……アリエル」


「アリエル……」


「ええ。小さな村に住む、普通の少女だった。でも、とても心が優しくて、純粋で、私たちのことを誰よりも慕ってくれた」


 ルーナは微笑んだ。


「アリエルは、私たちが人間の姿で村を訪れた時に出会ったの。最初は私たちのことを怖がっていたけど、すぐに打ち解けてくれた」


「人間の姿……神様も人間の姿になれるのか」


 悠斗が尋ねた。


「ええ。神といっても、この世界では私たちも小さな体になるから。人間と同じサイズの姿で、村を訪れることができたの」


 ルーナは続けた。


「アリエルは、私たちに色々なことを教えてくれた。人間の生活のこと、村のこと、家族のこと。私たちは神として世界を見守っていたけど、実際に人間と触れ

 合うことで、初めて理解できることがたくさんあった」


 ルーナの瞳が、輝いた。


「アリエルと過ごした日々は、本当に楽しかった。姉も、私も、アリエルのことが大好きだった。三人で野原を走り回ったり、川で遊んだり、夜には星空を見上げながら語り合ったり……」


 ルーナは少しの間、沈黙した。


 そして――


 その表情が、曇った。


「でも……ある日……」


 ルーナの声が震えた。


「アリエルの村が……盗賊に襲われたの」


「盗賊……」


「ええ。突然のことだった。私たちが神殿に戻っていた時、村に盗賊の一団が押し寄せた」


 ルーナは拳を握りしめた。


「村人たちは必死に抵抗したけど、盗賊たちは強かった。村は焼かれ、人々は殺され……」


 ルーナの声が、さらに震えた。


「そして……アリエルも……」


「まさか……」


 悠斗は息を呑んだ。


「ええ……アリエルは、盗賊に殺されてしまった」


 ルーナの瞳から、涙が溢れた。


「私たちが村に駆けつけた時には、もう遅かった。村は焼け落ち、アリエルは……血まみれで倒れていた」


 ルーナは両手で顔を覆った。


「姉は……エクリシアは……アリエルの遺体を抱きしめて、泣き叫んだわ……」


 ルーナの声が、悲痛に響く。


「『どうして……どうして私は、あの子を守れなかったの……』って……姉は、自分を責め続けた……」


「ルーナ……」


 悠斗は、ルーナの肩を優しく抱いた。


「無理に話さなくてもいい……」


「いいえ……」


 ルーナは顔を上げた。


 涙を流しながらも、その瞳には決意が宿っていた。


「話すわ……全部……」


 ルーナは深呼吸をして、続けた。


「姉は……アリエルの死に、深く絶望した。そして……怒りに支配された」


 ルーナの声が、低くなった。


「姉は立ち上がり、空を見上げて叫んだの。『許さない……絶対に許さない……』って」


 ルーナは震える声で語り続けた。


「そして……姉は……暴走した」


「暴走……?」


「ええ……姉の力が、制御を失った」


 ルーナは目を閉じた。


「黒い月が、異常に輝き始めた。そして、姉の周囲に、黒い炎が渦巻き始めた」


 ルーナの声が、恐怖に震えた。


「その炎は、どんどん大きくなっていった。村を包み込み、森を焼き尽くし、そして……周辺の国々をも飲み込んでいった」


「周辺の国々を……!?」


 悠斗は驚愕した。


「ええ……姉の怒りは、もはや止められなかった。黒い炎は、大陸の東部全域を焼き尽くした」


 ルーナは涙を流しながら語った。


「何千、いいえ、何万という人々が死んだ。国が消滅し、大地が焼け焦げた」


「そんな……」


 セレスティアも、顔色を失った。


「私は……姉を止めようとした」


 ルーナは拳を握りしめた。


「私は白い月の力を解放して、姉に立ち向かった。『姉さん、やめて! これ以上、人々を殺さないで!』って叫びながら」


 ルーナの瞳に、当時の光景が蘇る。


「でも……姉の力は、あまりにも強かった」


 ルーナの声が、無力感に満ちた。


「私の白い月の力では、暴走した姉の黒い月の力には敵わなかった。私は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた」


 ルーナは自分の体を抱きしめた。


「そして……姉の力が、私を貫いた」


「貫いた……!?」


「ええ……黒い炎が、私の体を貫通した。その時、私の力が……砕け散った」


 ルーナは涙を流した。


「私の力は、無数の欠片となって、この大陸中に散らばっていった。そして……私の記憶も、一緒に散らばった」


 ルーナは祭壇を見た。


「神殿や遺跡に、私の力と記憶の欠片が封じられた。おそらく、私の無意識が、力を封印したんだと思う」


「それで……記憶が五つに分かれたのか……」


 悠斗は理解した。


「ええ……そして、姉は……」


 ルーナの声が、さらに震えた。


「私を倒した後、自分が何をしたのか気づいたみたい。周りを見渡して、無数の死体を見て……姉は絶望した」


 ルーナは目を閉じた。


「姉は……自分の力を封印した。そして……姿を消した」


「消した……?」


「ええ。どこかに行ってしまった。それ以来、姉の姿を見ていない」


 ルーナは深くため息をついた。


「そして、私も……力を失い、記憶を失い……長い眠りについた」


 ルーナは悠斗を見た。


「目覚めた時には、もう百年以上が経っていた。そして、記憶のほとんどを失っていた」


「それで……ゲームの世界に逃げ込んだのか」


「ええ……自分が誰なのかもわからず、ただ……何かから逃げたくて……」


 ルーナは俯いた。


「でも……今、二つ目の記憶を取り戻して……姉のことを思い出した」


 ルーナは涙を拭いた。


「姉は……悪い人じゃなかった。ただ……大切な人を失って、悲しくて、怒りに支配されてしまっただけ」


「ルーナ……」


 悠斗は、ルーナを優しく抱きしめた。


「辛かったな……」


「ええ……」


 ルーナは悠斗の胸に顔をうずめた。


「でも……悠斗がいてくれるから……私、頑張れる」


「ああ……俺も、お前を支える」


 二人は、しばらく抱き合っていた。


 セレスティアは、静かにその様子を見守っていた。


 やがて、ルーナは顔を上げた。


「ありがとう、悠斗」


「いや……」


 悠斗は微笑んだ。


「お前が話してくれて、ありがとう」


 ルーナも微笑んだ。


 そして――


「でも……これで終わりじゃないわ」


 ルーナは決意に満ちた表情をした。


「私は、まだすべてを思い出していない。記憶は、あと三つ残っている」


「そうだな……」


 悠斗は頷いた。


「残りの記憶を取り戻せば、姉さんのことも……もっとわかるかもしれない」


「ええ……そして、もしかしたら……姉がどこにいるのかも……」


 ルーナは窓の外を見た。


 夜空には、二つの月が浮かんでいる。


「姉を……見つけたい。そして……もう一度話したい」


 ルーナの瞳に、強い決意が宿った。


「だから……残りの神殿を探しましょう」


「ああ」


 悠斗は力強く頷いた。


「一緒に探そう。必ず見つける」


「ええ」


 セレスティアも頷いた。


「私も、お手伝いします」


「ありがとう、セレスティア」


 ルーナは微笑んだ。


 三人は、神殿を後にした。


 外は、まだ夜だった。


 雪が降りしきる中、三人は山を下り始めた。


「でも……どうやって残りの神殿を探すんだ?」


 悠斗が尋ねた。


「そうね……」


 ルーナは考え込んだ。


「前に訪れた古代遺跡と、この神殿。二つの場所から、何かパターンが見えるかもしれない」


「パターン……?」


「ええ。神殿や遺跡の場所には、何か意味があるはず」


 ルーナは考えた。


「古代遺跡は……確か、大陸の中央部にあったわ。そして、この神殿は大陸の北部」


「じゃあ、残りは……3つ?」


「おそらくね」


「でも、どうやって探すんだ?」


 悠斗は頭を掻いた。


「そうね……」


 ルーナも困った表情をした。


「やっぱり、情報が必要だな」


 悠斗は提案した。


「エリシアに会いに行こう」


「エリシア……?」


「ああ。彼女は帝国の皇女だ。きっと、古代の遺跡や神殿について、何か情報を持っているはずだ」


「そうね……」


 ルーナは頷いた。


「エリシアなら、協力してくれるわ」


「じゃあ、決まりだ。帝国に向かおう」


 三人は、山を下り続けた。


 数日後。


 三人は、ノルディア帝国の首都に到着した。


 帝国の首都は、大陸北部の中心に位置する巨大な都市だった。


 石造りの建物が立ち並び、城壁に囲まれている。街の中央には、威厳ある帝国の宮殿がそびえ立っていた。


「すごい……」


 セレスティアは感嘆の声を上げた。


「こんなに大きな都市、初めて見ました」


「エルディア王国の王都よりも、さらに大きいな」


 悠斗も驚いていた。


 街には多くの人々が行き交い、市場では様々な商品が売られている。北部ならではの毛皮や鉱物、そして食料品。


「まずは、宮殿に行こう」


 悠斗が言った。


「エリシアに会えるように、取り次いでもらわないと」


 三人は宮殿に向かった。


 宮殿の門の前には、衛兵が立っていた。


「止まれ」


 衛兵が槍を構えた。


「何の用だ」


「俺は神崎悠斗。エリシア皇女に会いに来た」


 悠斗は名乗った。


「神崎悠斗……?」


 衛兵は驚いた表情をした。


「あの、黒月教を倒した英雄の……?」


「ああ、そうだ」


「本当か……?」


 衛兵は疑わしそうに悠斗を見た。


「証拠はあるのか」


「証拠……」


 悠斗は困った。


「いや、別に証拠は……」


 その時――


「悠斗様!」


 宮殿の奥から、声が聞こえた。


 振り返ると、一人の少女が走ってきていた。


 エリシアだった。


「エリシア!」


 悠斗は手を振った。


 エリシアは衛兵たちを押しのけて、悠斗のもとに駆け寄ってきた。


 そして――


 抱きついた。


「悠斗様! 会いたかったです!」


 エリシアは悠斗の胸に顔をうずめた。


「え、ちょ、ちょっと……」


 悠斗は戸惑った。


「エリシア、人前だぞ……」


「構いません!」


 エリシアは悠斗から離れず、さらに強く抱きしめた。


「ずっと……ずっと待っていたんです……悠斗様が帰ってくるのを……」


 エリシアの声が震えていた。


「黒月教を倒した後、悠斗様は北に旅立ってしまって……それから何ヶ月も……音沙汰がなくて……」


「ああ……すまない」


 悠斗は申し訳なさそうに頭を下げた。


「心配かけたな」


「もう……」


 エリシアは涙ぐんでいた。


「でも……無事で良かった……」


 エリシアは、ようやく悠斗から離れた。


 そして、ルーナとセレスティアに気づいた。


「あ……ルーナ様、セレスティア様も」


「久しぶり、エリシア」


 ルーナは微笑んだ。


「元気だった?」


「はい……でも、悠斗様のことが心配で……」


 エリシアは頬を赤らめた。


「ふふ……」


 ルーナは苦笑した。


「エリシアは、相変わらずね」


「え、えっと……」


 エリシアは恥ずかしそうにうつむいた。


「とにかく、中に入りましょう」


 エリシアは三人を宮殿の中に案内した。


 衛兵たちは、驚いた表情で三人を見送った。


 宮殿の中は、豪華絢爛だった。


 大理石の床、壁には美しい絵画、天井には豪華なシャンデリア。


「すごい……」


 セレスティアは目を輝かせた。


「こんなに綺麗な場所……」


「ようこそ、ノルディア帝国宮殿へ」


 エリシアは誇らしげに言った。


「私の部屋に案内します」


 エリシアの部屋は、宮殿の二階にあった。


 広い部屋には、大きなベッド、豪華な家具、そして窓からは街が一望できる。


「座ってください」


 エリシアはソファを勧めた。


 三人はソファに座った。


 エリシアは、メイドに紅茶を用意させた。


「それで……」


 エリシアは悠斗を見つめた。


「悠斗様、何の用で帝国に?」


「ああ、実は……」


 悠斗は事情を説明した。


 ルーナの記憶のこと。


 神殿を探していること。


 残りの神殿を見つけたいこと。


 エリシアは真剣な表情で聞いていた。


「なるほど……」


 エリシアは考え込んだ。


「神殿や遺跡の情報……ですか……」


「ああ。何か知らないか?」


「少し待ってください」


 エリシアは立ち上がり、部屋の隅にある本棚に向かった。


 そして、一冊の古い本を取り出した。


「これは……帝国に伝わる古文書です」


 エリシアは本を開いた。


「この中に、古代の遺跡や神殿についての記述があります」


 エリシアはページをめくった。


「えっと……ここに……」


 エリシアは指で文字を辿った。


「『大陸南東の孤島に、月の女神にかかわる何かがある』と書かれています」


「大陸南東の孤島……!」


 ルーナは身を乗り出した。


「それは……もしかして……」


「おそらく、月の神殿の一つでしょう」


 エリシアは頷いた。


「この古文書によれば、その島には古代の神殿があり、月の女神の力が封じられているとのことです」


「そこだ……」


 ルーナは確信した。


「きっと、そこに私の記憶の欠片がある」


「じゃあ、そこに行こう」


 悠斗は立ち上がった。


「大陸南東の孤島……どうやって行くんだ?」


「海を渡る必要があります」


 エリシアは地図を広げた。


「帝国の東側に、港町があります。そこから船に乗れば、孤島に到達できるでしょう」


「港町……」


 悠斗は地図を見た。


「ここか……」


「はい。その町の名前は……ポルト・マリーナ」


 エリシアは地図を指差した。


「海に面した美しい町です。海鮮料理が有名ですよ」


「海鮮料理!」


 悠斗の目が輝いた。


「それは楽しみだ!」


「悠斗……」


 ルーナは苦笑した。


「また食べ物のことばかり……」


「いいじゃないか。腹が減っては戦はできぬ、だ」


 悠斗は笑った。


「それに、海鮮なんて、この世界に来てから一度も食べてないぞ」


「確かに……」


 ルーナも頷いた。


「海の幸は、楽しみね」


「では、明日出発しましょう」


 エリシアが言った。


「今日は、ここで休んでください。私が、部屋を用意します」


「ありがとう、エリシア」


 悠斗は微笑んだ。


 その夜。


 三人は、宮殿の豪華な客室で休んだ。



 翌朝。



 エリシアは、三人を見送りに来た。


「気をつけて……」


 エリシアは悠斗の手を握った。


「必ず……無事に戻ってきてください」


「ああ、約束する」


 悠斗は頷いた。


「エリシアも、元気でな」


「はい……」


 エリシアは涙ぐんだ。


「また……会えますよね……」


「もちろんだ」


 悠斗は微笑んだ。


「絶対にまた会いに来る」


「……はい」


 エリシアは、悠斗の手を離した。


 そして、三人は帝国を後にした。


 東へ。


 海を目指して。


 数日間の旅。


 三人は、森や草原を抜け、山を越え、川を渡った。


 道中、何度か魔物に襲われたが、悠斗とルーナの連携で簡単に撃退した。


 セレスティアは、治癒魔法で悠斗たちをサポートした。


「もうすぐだな」


 悠斗は地図を確認した。


「ポルト・マリーナまで、あと少しだ」


「海……楽しみです」


 セレスティアは目を輝かせた。


「私、海を見るのは初めてなんです」


「そうなのか?」


「はい。エルディア王国は内陸にあるので……」


「じゃあ、きっと驚くぞ」


 悠斗は笑った。


「海は、すごく広いからな」


「どれくらい広いんですか?」


「うーん……」


 悠斗は考えた。


「地平線まで、ずっと水が続いている感じかな」


「想像できません……」


 セレスティアは首を傾げた。


「まあ、見ればわかるさ」


 やがて――


 三人の目の前に、海が現れた。


「わあ……!」


 セレスティアは感嘆の声を上げた。


「すごい……! こんなに広いんですね……!」


 目の前には、果てしなく広がる青い海。


 波が打ち寄せ、白い泡を作っている。


 空と海の境界線は曖昧で、まるで世界がここで終わっているかのようだった。


「綺麗……」


 ルーナも感動していた。


「海って……こんなに美しいのね……」


「ああ……」


 悠斗も、海を見つめた。


 元の世界では、何度も海を見たことがあった。


 しかし、この1/10スケールの世界で見る海は、また違った感動があった。


 波の一つ一つが、元の世界の10倍の高さに見える。


 海の広大さが、さらに強調されている。


「さあ、町に行こう」


 悠斗は前を向いた。


 海沿いに、町が見えた。


 ポルト・マリーナ。


 白い壁の建物が立ち並び、港には多くの船が停泊している。


 町全体が、海の香りに包まれていた。


 三人は町に入った。


「いらっしゃい! 新鮮な魚だよ!」


「海老も安いよ!」


「貝はどうだい? 今朝獲れたばかりだ!」


 市場では、漁師たちが大声で客を呼び込んでいた。


 魚、海老、貝、蟹、イカ、タコ……


 様々な海の幸が、所狭しと並べられている。


「すごい……」


 悠斗は目を輝かせた。


「こんなにたくさんの海鮮……!」


「悠斗……よだれ出てるわよ」


 ルーナが苦笑した。


「え、マジ?」


 悠斗は慌てて口を拭いた。


「いや、だって……こんなの見たら、腹減るだろ」


 グゥゥゥ……


 悠斗の腹が、盛大に鳴った。


「やっぱりね」


 ルーナは呆れた。


「じゃあ、まず食事にしましょう」


「賛成!」


 悠斗は即答した。


 三人は、市場を抜けて、海沿いのレストランに入った。


「いらっしゃいませ!」


 店主が笑顔で迎えてくれた。


「おお、旅の方ですか? ようこそ、ポルト・マリーナへ!」


「ああ、初めて来た」


 悠斗は答えた。


「何かオススメはあるか?」


「オススメですか? それなら……」


 店主は胸を張った。


「うちの『海の幸盛り合わせ』がオススメですよ! 今朝獲れたばかりの魚介類を、たっぷり使っています!」


「それだ!」


 悠斗は即決した。


「それを三人分!」


「かしこまりました!」


 店主は厨房に向かった。


 三人は、窓際の席に座った。


 窓からは、海が一望できる。


 波の音が、心地よく響いている。


「いい景色ね……」


 ルーナは窓の外を見つめた。


「ええ……」


 セレスティアも頷いた。


「こんなに綺麗な場所、初めてです」


 しばらくして――


「お待たせしました!」


 店主が、大きな皿を持ってきた。


「海の幸盛り合わせです!」


 皿の上には、色とりどりの海鮮が盛られていた。


 まず目に入ったのは、大きな焼き魚。


 表面は香ばしく焼かれ、皮がパリッとしている。身は白く、ふっくらとしていて、今にも崩れそうなほど柔らかそうだ。


 その隣には、海老の塩焼き。


 赤く色づいた殻が、食欲をそそる。


 さらに、貝の蒸し焼き。


 殻が開いて、中から湯気が立ち上っている。貝の身は、ぷりぷりとしていて、バターの香りが漂っている。


 そして、イカの炙り焼き。


 表面に焼き目がつき、醤油の香ばしい香りがする。


 他にも、蟹の足、タコの柔らか煮、小魚の唐揚げなど、様々な料理が並んでいた。


「うわあ……!」


 悠斗は感嘆の声を上げた。


「すごい……こんなに豪華な……!」


「どうぞ、召し上がってください」


 店主は微笑んだ。


「冷めないうちに」


「いただきます!」


 悠斗は、まず焼き魚に手を伸ばした。


 フォークで身をほぐすと、ふわっと湯気が立ち上った。


 口に運ぶ。


「……っ!」


 悠斗の目が、大きく見開かれた。


 魚の身は、信じられないほど柔らかかった。


 口の中で、ほろほろと崩れていく。


 そして――


 味が、口の中に広がった。


 魚本来の甘み。


 ほんのりとした塩気。


 そして、焼くことで引き出された香ばしさ。


 それらが絶妙に混ざり合い、舌の上で踊っている。


「うまい……!」


 悠斗は感動した。


「こんなに美味しい魚、初めて食べた……!」


「本当ですか?」


 店主は嬉しそうに笑った。


「それは良かった! この魚は、今朝私が釣ったんですよ!」


「マジか! すごいな!」


 悠斗は、さらに魚を口に運んだ。


 何度食べても、飽きない。


 むしろ、食べれば食べるほど、その美味しさに気づいていく。


 魚の脂が、ちょうどいい量で身に含まれている。


 それが、口の中でとろけて、さらに味を深めている。


「次は……海老だ!」


 悠斗は、海老の塩焼きに手を伸ばした。


 殻を剥くと、中から白い身が現れた。


 ぷりぷりとした食感が、見た目からも伝わってくる。


 一口かじる。


「おおっ!」


 悠斗は驚いた。


 海老の食感が、素晴らしかった。


 ぷりっ、という感触。


 そして、噛むと、ぷちっと弾ける。


 中から、海老の甘い汁が溢れ出た。


「甘い……!」


 悠斗は感動した。


「海老って、こんなに甘いのか……!」


 塩だけのシンプルな味付けが、海老本来の甘みを引き立てている。


 余計な味付けは必要ない。


 海老の美味しさが、そのまま味わえる。


「次は貝だ!」


 悠斗は、貝の蒸し焼きに手を伸ばした。


 殻を開けると、中から貝の身が見えた。


 バターと一緒に蒸されているため、表面がつやつやと光っている。


 フォークで身をすくい、口に運ぶ。


「んんっ!」


 悠斗は唸った。


 貝の身は、柔らかく、しかし歯ごたえもある。


 噛むと、じゅわっとバターの風味が広がった。


 そして、貝本来の磯の香りが、鼻を抜けていく。


「美味い……美味すぎる……!」


 悠斗は、次々と貝を口に運んだ。


 一つ、また一つ。


 貝殻が、皿の上に積み重なっていく。


「悠斗……」


 ルーナが呆れた声を出した。


「少しは落ち着いて食べなさいよ」


「だって、美味いんだもん!」


 悠斗は口いっぱいに貝を頬張りながら答えた。


「ルーナも食べてみろよ!」


「わかったわよ……」


 ルーナも、焼き魚に手を伸ばした。


 一口食べて――


「……美味しい」


 ルーナの表情が、ほころんだ。


「本当に……美味しいわ……」


 ルーナは、静かに魚を味わった。


 魚の柔らかさ、甘み、香ばしさ。


 それらが、口の中で調和している。


「こんなに美味しい魚、初めて……」


 ルーナは、もう一口食べた。


「ふふ……」


 ルーナは微笑んだ。


「幸せ……」


 セレスティアも、海老を食べていた。


「美味しいです……!」


 セレスティアの目が輝いていた。


「海老って、こんなに甘いんですね……!」


 セレスティアは、海老を一つ、また一つと食べていった。


「この食感……たまりません……!」


 セレスティアは、普段の穏やかな表情とは違う、幸せそうな笑顔を浮かべていた。


「貝も美味しいです……!」


 セレスティアは、貝の蒸し焼きも食べた。


「バターの風味と、貝の磯の香りが……絶妙です……!」


 三人は、黙々と食べ続けた。


 焼き魚、海老、貝、イカ、蟹、タコ……


 すべてが美味しかった。


 どれも、素材の味を活かしたシンプルな調理法。


 しかし、だからこそ、素材の美味しさが際立っている。


「イカも美味い……!」


 悠斗は、イカの炙り焼きを食べた。


 イカの身は柔らかく、しかし歯ごたえもある。


 噛むと、醤油の香ばしさと、イカの甘みが混ざり合った。


「蟹も……!」


 悠斗は、蟹の足の身を取り出した。


 蟹の身は、繊維がほぐれやすく、口の中でふわっと広がった。


 蟹特有の甘みと、ほんのりとした塩気。


 それが絶妙だった。


「タコも……!」


 悠斗は、タコの柔らか煮を食べた。


 タコは、長時間煮込まれているため、驚くほど柔らかかった。


 しかし、タコの食感は残っていて、噛むとぷりっとした感触がある。


 煮汁の味が染み込んでいて、噛むたびに旨味が溢れ出た。


「全部美味い……!」


 悠斗は感動しながら、次々と料理を平らげていった。


 ルーナとセレスティアも、静かに、しかし確実に食べ続けていた。


「ふふ……」


 ルーナは微笑みながら、海老を食べた。


「悠斗、嬉しそう」


「当たり前だろ! こんなに美味いんだから!」


 悠斗は笑った。


「お前たちも嬉しそうじゃないか」


「ええ……」


 ルーナは頷いた。


「とても……幸せだわ」


「私も……」


 セレスティアも微笑んだ。


「こんなに美味しいもの、食べたことありません……」


 三人は、食事を楽しんだ。


 海の幸の美味しさを、心から味わった。


 やがて――


「ごちそうさま……」


 悠斗は、皿を見つめた。


 皿は、綺麗に空になっていた。


 魚の骨、海老の殻、貝殻、蟹の殻……


 それらだけが、皿の上に残っていた。


「全部食べちゃった……」


 ルーナも満足そうに微笑んだ。


「美味しかったわ……」


「はい……」


 セレスティアも頷いた。


「幸せでした……」


「お口に合いましたか?」


 店主が尋ねてきた。


「ああ、最高だった!」


 悠斗は親指を立てた。


「こんなに美味い海鮮、初めて食べたよ!」


「それは良かった!」


 店主は笑顔になった。


「また来てくださいね!」


「ああ、絶対にまた来る!」


 悠斗は約束した。


 三人は、レストランを出た。


 外は、もう夕方だった。


 太陽が、海に沈もうとしている。


 オレンジ色の光が、海面を照らしていた。


「綺麗……」


 ルーナは、夕日を見つめた。


「ええ……」


 セレスティアも頷いた。


「美しいです……」


「さて……」


 悠斗は伸びをした。


「腹も満たされたし、宿を探そう」


「そうね」


 三人は、宿を探し始めた。


 港町には、いくつかの宿屋があった。


 三人は、その中でも評判の良さそうな宿屋を選んだ。


「いらっしゃいませ」


 宿屋の主人が出迎えた。


「部屋はありますか?」


 悠斗が尋ねた。


「はい、ございます。何名様ですか?」


「三人だ」


「かしこまりました。二階に空き部屋がございます」


「それでお願いします」


 悠斗は料金を支払った。


「こちらです」


 主人は、三人を二階の部屋に案内した。


 部屋は、清潔で広々としていた。


 三つのベッドがあり、窓からは海が見える。


「いい部屋ね」


 ルーナは窓を開けた。


 海風が、部屋の中に入ってくる。


 潮の香りと、波の音。


 それが、心を落ち着かせてくれる。


「ふう……」


 悠斗はベッドに倒れ込んだ。


「疲れた……」


「お疲れ様」


 ルーナは微笑んだ。


「今日は、よく歩いたわね」


「ああ……」


 悠斗は天井を見つめた。


「でも、いい一日だった」


「ええ」


 ルーナも頷いた。


「美味しいものも食べられたし」


「ああ、あの海鮮は最高だった」


 悠斗は目を閉じた。


「また明日も、何か美味いもの食べたいな」


「悠斗は、本当に食べることばっかりね」


 ルーナは苦笑した。


「いいじゃないか。食べることは、生きることだ」


「まあ、それはそうだけど……」


 ルーナもベッドに座った。


「でも……明日からは、海を渡らないといけないのよね」


「ああ……」


 悠斗は目を開けた。


「船に乗って、孤島に向かう」


「緊張するわ……」


 ルーナは窓の外を見た。


「そこに、私の記憶があるのかしら……」


「きっとあるさ」


 悠斗は起き上がり、ルーナの隣に座った。


「そして、お前の姉さんのことも、もっとわかるかもしれない」


「ええ……」


 ルーナは悠斗に寄り添った。


「姉さん……エクリシア……」


 ルーナは呟いた。


「どこにいるのかしら……」


「きっと見つかるさ」


 悠斗はルーナの肩を抱いた。


「俺が、お前を支えるから」


「ありがとう、悠斗……」


 ルーナは微笑んだ。


 二人は、しばらく黙って海を見つめていた。


 波の音が、静かに響いている。


「セレスティアは……?」


 ルーナが尋ねた。


 振り返ると、セレスティアはもう一つのベッドで、すやすやと眠っていた。


「寝ちゃったのね」


 ルーナは微笑んだ。


「今日は疲れたんでしょう」


「ああ……」


 悠斗も頷いた。


「俺たちも、そろそろ寝るか」


「そうね」


 ルーナは立ち上がった。


「明日は、早起きしないといけないから」


「ああ」


 悠斗もベッドに横になった。


 ルーナも自分のベッドに入った。


「おやすみ、悠斗」


「おやすみ、ルーナ」


 二人は目を閉じた。


 波の音が、子守唄のように響いている。


 やがて、二人も眠りについた。


 夜。


 月明かりが、部屋を照らしていた。


 白い月と黒い月。


 二つの月が、空に浮かんでいる。


 ルーナは、夢を見ていた。


 姉、エクリシアの夢を。


 幼い頃、二人で野原を駆け回った記憶。


 一緒に笑い合った記憶。


 そして――


 アリエルと三人で過ごした、幸せな日々の記憶。


 でも、その幸せは長くは続かなかった。


 アリエルの死。


 姉の暴走。


 そして――


 自分の敗北。


 ルーナは、夢の中で姉の顔を見た。


 悲しみと怒りに歪んだ、姉の顔。


「姉さん……」


 ルーナは、夢の中で呟いた。


「どこにいるの……?」


 姉の姿が、闇の中に消えていく。


「待って……!」


 ルーナは手を伸ばした。


 しかし、姉には届かなかった。


「姉さん……!」


 ルーナは、夢の中で叫んだ。


 そして――


 目が覚めた。


「はっ……!」


 ルーナは飛び起きた。


 体が、汗ばんでいる。


「夢……」


 ルーナは深呼吸をした。


「……姉さんの夢……」


 ルーナは窓の外を見た。


 夜空には、二つの月が浮かんでいる。


「姉さん……」


 ルーナは呟いた。


「必ず……会いに行くから……」


 ルーナは再びベッドに横になった。


 しかし、なかなか眠れなかった。


 姉のことが、頭から離れない。


「エクリシア……」


 ルーナは目を閉じた。


 そして、再び眠りについた。


 今度は、夢を見なかった。


 朝。


 太陽が昇り、部屋を照らした。


「ん……」


 悠斗は目を覚ました。


「朝か……」


 悠斗は起き上がり、窓を開けた。


 海が、朝日を反射して輝いている。


「綺麗だな……」


 悠斗は海を見つめた。


「おはよう、悠斗」


 ルーナの声がした。


 振り返ると、ルーナももう起きていた。


「おはよう。よく眠れたか?」


「ええ……」


 ルーナは微笑んだ。


 しかし、その笑顔には少しだけ疲れが見えた。


「ルーナ……大丈夫か?」


「ええ、大丈夫よ」


 ルーナは頷いた。


「ただ……少し、姉さんのことを考えていただけ」


「そうか……」


 悠斗は、ルーナの肩を優しく抱いた。


「無理するなよ」


「ありがとう」


 ルーナは悠斗に寄り添った。


「おはようございます」


 セレスティアも目を覚ました。


「おはよう、セレスティア」


「よく眠れたか?」


「はい」


 セレスティアは微笑んだ。


「とてもよく眠れました」


「それは良かった」


 三人は、身支度を整えた。


 そして、宿屋を出た。


 外は、もう明るかった。


 港町は、朝から活気に満ちている。


 漁師たちが、朝獲れた魚を市場に運んでいる。


「さて……」


 悠斗は港の方を見た。


「船を探さないとな」


「ええ」


 三人は、港に向かった。


 港には、多くの船が停泊していた。


 漁船、貨物船、そして旅客船。


「あの……」


 悠斗は、一人の船員に声をかけた。


「孤島に行く船はありますか?」


「孤島?」


 船員は首を傾げた。


「ああ、大陸南東の孤島のことか?」


「そうです」


「あそこに行く船は……」


 船員は考え込んだ。


「あまりないな。あの島は、危険だからな」


「危険……?」


「ああ。島の周りには、強い海流がある。船が近づくと、流されてしまうんだ」


「そうなのか……」


 悠斗は困った。


「でも、どうしても行きたいんだ」


「そうか……」


 船員は考えた。


「なら、あの船長に聞いてみるといい」


 船員は、一隻の船を指差した。


「あの船の船長は、腕利きだ。もしかしたら、孤島まで連れて行ってくれるかもしれない」


「ありがとうございます」


 悠斗は船員に礼を言い、その船に向かった。


 船は、中型の帆船だった。


 甲板には、一人の男が立っていた。


 髭を生やした、いかにも船乗りらしい風貌の男。


「すみません」


 悠斗は声をかけた。


「あなたが、この船の船長ですか?」


「ああ、そうだ」


 男は振り返った。


「俺はガレス。この船の船長だ」


「俺は神崎悠斗。こっちはルーナとセレスティア」


「よろしく」


 ガレスは頷いた。


「それで、何の用だ?」


「孤島に行きたいんです」


「孤島……?」


 ガレスは眉をひそめた。


「あの、大陸南東の孤島か?」


「はい」


「あそこは危険だぞ。何でそんなところに行きたいんだ?」


「事情があるんです」


 悠斗は真剣な表情をした。


「どうしても、行かないといけないんです」


 ガレスは、悠斗をじっと見つめた。


「……わかった」


 ガレスは頷いた。


「俺が連れて行ってやる」


「本当ですか!」


「ああ。ただし、条件がある」


「条件……?」


「報酬だ。あの島まで行くのは危険だからな。それなりの報酬が必要だ」


「わかりました」


 悠斗は頷いた。


「いくらですか?」


 ガレスは金額を提示した。


「……高いな」


 悠斗は苦笑した。


「でも、仕方ない。払います」


 悠斗は、所持金を確認した。


 ゼノンを倒した後、各国から報酬を受け取っていたため、かなりの金額を持っていた。


「はい」


 悠斗は、ガレスに金貨を渡した。


「確かに」


 ガレスは金貨を受け取った。


「じゃあ、明日の朝、出発だ」


「明日……?」


「ああ。今日は準備がある。明日の朝、ここに来てくれ」


「わかりました」


 悠斗は頷いた。


「じゃあ、明日またここに来ます」


「ああ」


 三人は、港を後にした。


「明日か……」


 悠斗は呟いた。


「じゃあ、今日はゆっくり休めるな」


「ええ」


 ルーナも頷いた。


「今日は、町を見て回りましょう」


「賛成」


 セレスティアも微笑んだ。


 三人は、町を散策した。


 市場で買い物をしたり、海を眺めたり、町の人々と話したり。


 そして――


 夕方になると、再びレストランに行き、海鮮料理を楽しんだ。


「やっぱり美味い……!」


 悠斗は、焼き魚を頬張った。


「何度食べても飽きないな……!」


「ふふ……」


 ルーナは微笑んだ。


「悠斗は、本当に食べることが好きね」


「当たり前だろ。美味いものを食べるのは、人生の楽しみの一つだ」


「それはそうだけど……」


 ルーナも、海老を食べた。


「でも……確かに美味しいわね……」


「だろう?」


 悠斗は笑った。


 三人は、食事を楽しんだ。


 そして、宿に戻った。


「明日は、いよいよ出発ね……」


 ルーナは窓の外を見た。


「ああ……」


 悠斗も頷いた。


「孤島に……お前の記憶がある」


「ええ……」


 ルーナは不安そうな表情をした。


「大丈夫か?」


「ええ……大丈夫よ」


 ルーナは微笑んだ。


「悠斗がいてくれるから」


「ああ」


 悠斗はルーナの手を握った。


「一緒に行こう」


「ええ」


 二人は、手を繋いだまま、しばらく海を見つめていた。


 そして――


 夜になり、三人はベッドに入った。


「おやすみ、悠斗」


「おやすみ、ルーナ」


「おやすみなさい」


 三人は眠りについた。


 明日は、新たな旅が始まる。


 孤島へ。


 ルーナの記憶を求めて。


 そして――


 姉、エクリシアの真実を知るために。


 三人の冒険は、まだまだ続く――


二つ目の記憶を取り戻したわ。


姉さん、エクリシア。私には双子の姉がいた。


幼い頃、いつも一緒だった姉さん。優しくて、強くて、誰よりも私を守ってくれた姉さん。


でも、大切な人の死が、姉さんを変えてしまった。


悲しみと怒りに支配された姉さんは暴走し、私は止められなかった。


そして……私の力と記憶は、散り散りになってしまった。


あれから百年以上。


姉さんは、今どこにいるのかしら。


もう一度会いたい。話したい。


残りの記憶を取り戻せば、きっと姉さんのことがもっとわかるはず。


悠斗が一緒にいてくれるから、私は前に進める。


次は孤島。そこに、私の三つ目の記憶が眠っている。


姉さん、待っていて――


私、必ずあなたを見つけるから。


――ルーナ

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