104.コーヘイの実力
■スタートス聖教会 食堂
~第10次派遣1日目~
スタートスに転移で戻ったタケルは、ゲイルの町で大量に買い込んできた食材と酒を食堂のミレーヌに渡してきた。
昼前にはゲイルから戻ってきたから時間は予定通りだったのだが、マリンダは戻って来たときもご機嫌ナナメのようすだった。
それでも、今日の夜は皆で食事することに同意してくれた。
タケルは空き地で自主練をしていた3名を食堂に呼んで、コーヘイを紹介するために昼食をとることにした。
「今日から、一緒に動くことになるコーヘイさんです。ひょっとするこれからも増えるかもしれないけど、今のところ一人です」
「コーヘイです、よろしくお願いします」
「マユミも今日からだから詳しい自己紹介は夜の歓迎会にやってもらうとして、とりあえず今日、明日の予定をまず整理したいんだけど。コーヘイにはダイスケとペアになって剣を教えてもらいたいけど良いかな?」
「俺はダイスケ君さえ良ければ構わないです」
「俺もコーヘイさんに教えてもらえるならありがたいです」
「それなら、明日まではそれでヨロシク。マユミは俺が明日まで魔法の特訓をするから、覚悟しておいてね」
「わかったわ」
「いや、タケルさん、マユミは凄いみたいですよ、午前中マリンダが少し教えてましたけど、すぐに炎を出してましたから」
ダイスケが食いつき気味に教えてくれたと言うことは、かなりのものなのだろう。
「マジで!?それは楽しみだな。それと明後日には聖教石の洞窟に行こうと思う。少し物足りないかもしれないけど、マユミに場慣れをする機会を持ってもらおうと思ってね。加工する聖教石の材料も減ってきたからさ」
マユミの覚悟を確認するために、荒療治だが早めの実戦を経験させたかった。
それに、タケルの予想で行けば、聖教石の洞窟もパワーアップしているはずだから、コーヘイとの連携を確かめることも出来るだろう。
「アキラさんは、いつもどおり自主練でいいかな?なにか、希望はある?」
無言で首を横に振った。
初対面の人が多いから、一段と口数が少ないようだ。
「それから、コーヘイの刀、いや剣だけど、それで良いのかな?」
コーヘイが持っている両手剣は両刃で細身のものだった、ダイスケが最初に使っていたものに似ている。
「良いっていうか、これが一番マシってとこですかね。ダイスケ君が持ってるのは刀に近いよね、俺もそんなのがあればよかったけど、ゲイルの教会には無かったですから」
「タケルさん、なんだったら、俺の刀をコーヘイさんに渡しましょうか?その方が刀の威力が生かせるんじゃないですかね?」
「ダイスケの気配りはありがたいけど、その必要は無いよ。今からパパスのところに行って、コーヘイ用の刀を作ってもらうつもりだから。でも、その前にコーヘイの腕前を見せてもらおうよ、本人曰く、教会武術士には負けないらしいからさ」
「マジっすか!?」
「タケルさん、ハードル上げ過ぎですよ・・・」
コーヘイは苦笑いを浮かべているが、自信があるように見える。
■スタートス聖教会 裏の空き地
食事を終えて5人揃って裏の空き地へ出て来た。
コーヘイは照れながらも、腕前を披露したい雰囲気を出している。
「えーと、じゃあ、あの木を切りますね」
コーヘイが指差したのは、タケル達が魔法で炎をぶつけまくってボロボロになっているが、幹の太さが50cmぐらいある木だった。
「コーヘイは魔法剣を使わずに、普通にその剣で切れるの?」
「ええ、踏み込みと抜きの練習はこっちで死ぬほどやりましたからね、8倍効果でこのぐらいの木なら行けるはずですよ」
そう言って、木の5メートルほど手前で腰から剣を抜いて正眼に構えた。
両手剣が光を受けて鈍く光っている。
「ハァッ!」
-迅い!
コーヘイは気合と共に4メートルほど前方に飛び込んで、軽く振り上げた剣で斜めから木を断ち切った!
木は切り口から斜めにずれて行き、隣の木に当たりながら横倒しになった。
「「スゲェ」」
タケルとダイスケは同じセリフで驚きながら顔を見合わせた。
「普通の剣だよね?」
「ええ、同じ様な剣を何本か壊しましたけど、一日中剣を振っていると切れる気がしてきて、木はいけるようになりました。石もやってみたんですけど、そっちは全然無理でしたね」
-石って・・・
「ダイスケ、死ぬ気で頑張ってね」
「ええ、頑張りますけど、俺に出来るかな・・・」
「俺が出来たんだから、ダイスケ君もひたすら振ればすぐに出来るようになるよ」
ダイスケに鬼教官が新たに登場した。
■パパスの小屋
転移でパパスのところに来ると、今日も大きい方の小屋から煙が昇っている、作業小屋のほうで作業をしているようだ。
「タケルさん、ここは教会じゃないですよね?」
連れてきたコーヘイは転移の間から森の中の小屋に周りの景色が一瞬で変わったことで衝撃を受けていた。
「うん、ここはよく来る場所だから飛んで来られるように転移ポイントを作ってある。詳しい話は夜にするよ」
コーヘイは首を捻っていたが、一旦納得してくれたようだ。
ノックして小屋のドアを開けると、炉の前で何かを叩いていたパパスが顔を上げた。
「おお、勇者様達じゃねぇか。どうしたんだい?刀を研ぎにきたのか?」
「いえ、お願いごとがあってきました。これはお土産です。良かったら食べてください」
タケルは包みいっぱいのパンと加工肉、それに果実酒を作業台の上に置いた。
「こ、こいつは、良いのかい?こんなに沢山もらっちまって」
「ええ、本当は刀のお金をお支払いしたいところですが、受け取ってくれそうに無いので」
タケルは前回の刀とロッドを作ってもらった時に、代金を払おうとしたが、パパスに断られていた。
「そうかい、じゃあ、ありがたくいただくよ。それで、今回は何を作ればいいんだい?」
パパスはタケルの意図をすぐに理解してくれた。
「ええ、新しい仲間ができたので、炎の魔法石でもう一本、別の刀を作って欲しいんですよ」
「ほおぉ、前と同じで良いのかい?」
「できれば、ダイスケが持っているのより長くて太い物が良いです」
コーヘイは自分が欲しい刀を熱心にパパスへ説明し始めた。
パパスも頷いて聞いている。
コーヘイが魔法剣を使いこなせるのが楽しみだ、魔法剣なら石ぐらい楽勝で切れるだろう。




